第27話

???「うーんやっぱり天国は空気が美味しいね!」

???「そうですね。風も暖かくて優しいですし」

???「特にこの天月桃の木は天国でも一番有名な観光スポットだものね。」


ここは、天国。「紫雲雨花」と「不山橙」。そして「桃時」は天国でピクニックしていた。


雨花「橙ちゃんが作ったお弁当美味しい〜!おにぎりもわたしの好きな唐揚げマヨの具が入ってるし!橙ちゃんありがとう!!」

桃時「確かにあんたの料理の腕は大したもんね。アタシはいつも料理せず外食してるから誰かの手作りを食べるのは久しいわね。」

橙「そんなだから桃時さんガリガリなんですよ……もっとちゃんと食べないと!」

雨花「桃時ちゃん一人暮らしだもんねぇ。でも倒れたりする前にちゃんとご飯食べた方が良いよ?」

桃時「……あんたに言われても説得力ないわね。」

雨花「えっ?」

橙「しかも無自覚ですね……はぁ……」

雨花「まぁわたしは大丈夫だよ!!心配してくれてありがとう!」

橙・桃時「…………」


「「(露骨に話を逸らしましたね・たわね)」」


桃時「まぁとりあえずこの話はいいわ。橙。今度料理教えてくれない?アタシも料理できるようになりたいし。」

雨花「そしたら兎白くんにも作ってあげられるもんね!」

橙「そういえば兎白さん料理できるんでしたっけ?」

桃時「えぇ。できるわよ。家庭料理なら何でも。」

雨花「わたしがまだ修行中の時もよくおにぎり作ってくれてたよ!美味しかった!」

桃時「瑠璃人は……」

橙「…………」

雨花「…………ダークマター……だね……」

桃時「しかもあいつ、それを自信満々に出してくるからこっちも食べざるおえないのよね……」

橙「卵焼きだって言っていたものを食べたら絶対鳴らないであろうシャリッという咀嚼音が鳴りましたからね……」

桃時「どこぞの眼鏡ツッコミ男子のお姉さんみたいだったわね……」

雨花「まぁ本人なりに練習してるみたいだから手伝いたいな!瑠璃くん一度決めたら最後までやろうとする努力家さんだから!無理しないで欲しいけど」

桃時「ふふ、そうね。」

橙「上手になったら瑠璃人さんのご飯食べたくなって来ました笑」


こうして三人が談笑していると……


???「あら、あなた雨花ちゃんかしら?」

雨花・橙・桃時「?」


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橙「あなたは……?」


三人の目の前にいるのは、優しく微笑んでいる老女だった。


???「私のこと覚える?雨花ちゃん。」

雨花「…………!あっ!もしかして藍ちゃん?」


雨花は、とても驚き、「藍」と言われた老女に歩み寄る。


雨花「藍ちゃん!天寿を全うできたんだね!病気の方は大丈夫なの?」

藍「あれから治療を頑張って何とか生きることが出来たよ。昨日裁判を終えてあの世に来たんだ。」

雨花「そっか。ちゃんと寿命分生きれたんだね。良かった。」

藍「見た目は私の方が遥かに年上なのに相変わらず私のことを子供扱いするのね。まぁ無理もないわね。ふふ」

桃時「二人はどういう関係なの?」

橙「私も気になります」


橙と桃時はとても気になる様子。


雨花「話しても大丈夫?」

藍「えぇ。もちろん良いわよ。」


「じゃあ……」と、雨花は話し出した。

時間は遥かに遡り、まだ雨花が「閻魔大王」ではなく、まだ下の「閻魔」だった時のお話。


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???「うわぁぁん。この世になんて戻りたくないよ!!」


冥府の中で子供の泣き声が響き渡る。


「どうしましょうか、でも仮死状態の者はこの世に帰せないといけないし」「でもこんな幼女相手に……」「この子の名前何だっけ?」「えぇっと確か……」


「「藍ちゃんだったわね」」


藍「うぅぅ帰りたくないよ!!もう痛い想いしたくない!!」

「で、でもね、帰らないといけない決まりなんだ……ごめんね」

藍「嫌!!」


藍は頑なにこの世に戻りたがらない。幼女のため、手荒な真似もできず、閻魔たちが手を焼いている中、一人藍の方へ近づいて行った者がいた。


???「戻りたくないなら戻らなくて良いよ。」

藍「ぐずっ……あなたはだあれ?」

???「わたしは雨花。藍ちゃん。藍ちゃんはどうしてあの世にいたいの?」

藍「だ、だって私。病気持ってて毎日痛い検査したり、苦い薬を飲んだりして、もうあんな想いしたくないもん。」


藍はそういうと、俯いてしまった。


雨花「そっか……沢山頑張ったんだね。沢山沢山苦しくても耐えてきたんだね。そして目の前にそれらをしなくて済む方法があるなら、掴みたいよね。わたしは自分の命なんだから自分の好きなようにして良いと想う。」

藍「本当?」

雨花「うん。でも、藍ちゃん。藍ちゃんはこの世でやりたいこととかしたいことない?例えば病気を治したらやってみたいこととか。」

藍「…………ある。」

雨花「何がしたいの?」

藍「海外旅行……」

雨花「そっか。素敵な夢だね。」


雨花は、話を続ける、


雨花「藍ちゃん。少しでもそうやってやりたいことやしたいこと。この世でしかできないやりたいことがあるなら。この世に戻ってみても良いんじゃないかな。」

藍「……嫌だ。痛いのはもう嫌!」

雨花「…………正直に言うとね。人から傷つけられて苦しい人も傷つけてしまって苦しい人にも幸せになって欲しい。人を傷つけてしまってもそれを丸ごと抱きしめれば良いと想う。だってそれだって自分を構成する一部分なんだから。だから大切にして生きてくれればそれで充分だと想う。この世で、無理して生きようとしなくて良いから過ごしていて欲しい。傷つけても、間違っても、遠回りしても、痛いって叫んでも良いから、この世で幸せを掴み取って欲しい。まぁわたしのエゴなんだけど、はは。藍ちゃんはこんなに頑張ってるんだから。藍ちゃんには充分幸せになれる資格があるよ。……わたしなんかより無量大数ね。」


「だからね……」と、雨花は話を続ける。


雨花「藍ちゃんには幸せになって欲しいから。苦しいと想う。絶望の連続だと想う。でもやっぱり、例え病気で亡くなっても、藍ちゃんなら頑張ったねって言われる一生を送れるよ。こんなに頑張ってるんだもの。絶対藍ちゃんの抱えてるその苦しさは絶対努力の証だよ。だからあともう少し頑張ってみない?……まぁこんな言い方したけど、もちろん藍ちゃんの命は藍ちゃん自身のもの。藍ちゃんが決めるべきだよ。」

藍「…………」


しばらく藍は黙っていたが、口を開いた。


藍「…………仕方ない。分かったよ。じゃああと少し頑張ってあげる。でも次はないからね?」

雨花「うん。それで良いよ。」


こうして、藍はこの世に戻ることになった。


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雨花「…………ってこんな感じかな?」

橙「…………そうですか。雨花さんは、色んな意味で相変わらずですね……」

桃時「そうね。あんたってあの世の法律より亡者のことばかりに必死になって……まぁあんたらしいわね。」

藍「雨花ちゃんのあの言葉のおかけで私は自分のやりたいことのために必死に頑張ることが出来たわ。世界一周旅行もできたのよ。ありがとう。雨花ちゃん。」

雨花「……わたしなんかの力じゃないよ!藍ちゃんの意思や心が頑張ったんだよ。藍ちゃん自身がやっぱり頑張ったんだよ。」

藍「雨花ちゃんも頑張ってるでしょ?「わたしなんかより無量大数ね。」ってあの時言っていたけど、雨花ちゃんは私に頑張ってるからって言ってくれたでしょ?そういう言葉を言える雨花ちゃんも頑張ってるんじゃない?」


すると、一気に雨花の目が何も映っていない目になった。


雨花「そんなことないよ。絶対に。私は自分に本来なら罰を与えられて楽になることすらも許されない。それでも私は自分に罰を下し続けないといけない。罰を下してくれる人がいないなら自分で罰を与えるしかない。わたしには自分へ罰を与え続けるのとひたすら謝り続けることなんて言うちっぽけすぎることぐらいしかできない。自戒なんて自分が後々楽になるだけの自分がほんの少しマシなやつになれてるって馬鹿すぎる勘違いするだけの自己満足の行為。だから自戒なんて本来ならしちゃダメ。でもやっぱり私にはそれしかできない。それぐらいしかわたしは……」

橙「あ、雨花さn……」

桃時「ちょっとあんt……」


すると、藍の手が雨花の頭に乗った。


雨花「…………?」

藍「よしよし。もう充分だよ。ありがとう。雨花ちゃん。」


藍は雨花の頭に乗せた手で優しく雨花の頭を撫でる。


藍「あなたがどれだけ人を傷つけたとしても私はあなたのおかげで生きれた。雨花ちゃんが人を傷つけた事実があるなら、自分を責めぬくんじゃなくて、自分のことを許して、傷つけた事実を丸ごと抱きしめて大切にすれば良いのよ。……ってこれ昔あなたが言ってたことよ?うふふ」


雨花は、相変わらず何も映っていない目で、俯いていた。


藍はそういうと、橙と桃時の方にお辞儀をすると藍は去っていった。


桃時「優しい人だったわね。」

橙「そうですね。」

雨花「…………」


こうして、三人はピクニックを終え。帰路に着いた。


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???「…………」


そこら中に、「私はクズすぎるクズ」という紙が貼ってある部屋。ここは雨花の部屋である。その暗い部屋の中にいるのは雨花だった。


雨花「……あはは……はは……はぁ……」


自身の左腕を刻み込む。


雨花「わたしはもっともっと懲罰を受けないと。ちゃんと罰を与えて。わたしにはこんなことぐらいしかできない。自戒なんて自分が後々楽になるだけの自分がほんの少しマシなやつになれてるって馬鹿すぎる勘違いするだけの自己満足の行為。それでも誰も罰してくれないなら自分でやるしかない。こんなことしたってあの人たちの傷は消えないし、癒えないけど、それでも何かしら自分を罰さないと、本来なら自分を罰して楽になることも許されないけど。傷をつけてしまったらその人たちの性格を変えてしまうんだから。犯した罪はこんなことしても何もほんの少しも変わらないし、消えないけどそれでもこんなこととひたすら謝り続けることぐらいしか出来ない。何もしなくても罪が変わらないならほんの少しでも自分に罰を与えて自分に罰を下し続けて、痛みを与え続けた方がまだ良い……はず……」




「優しい言葉なんてわたしには適してないんだから。これからも……ずっと。」




雨花の独り言は刻み込まれた傷口の血液と共に、流れ出て暗い部屋の闇に溶け込んだ。

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