第25話
???「わたし今から黄泉比良坂にある保育園行ってくるね!」
???「えっ!今からですか?せっかくやっと貰えた休日なのに……」
ここは、橙の家。昨日は「紫雲雨花」と「不山橙」は遅くまで二人で晩酌をしていて、そのまま眠ってしまったようだった。
雨花「うん!わたし子供好きだし!時々保育士として手伝いに行ってるんだ!だから行ってきます!」
こうして雨花は去っていった。
橙「雨花さん昨日19缶も飲み干してるのに全く二日酔いになっていない……私は頭が痛くてたまらないのに……凄いですね」
そういうと倒れ込むように橙は眠りに落ちた。
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「では、今日も雨花先生が来てくれたのでみんなで一緒に過ごしましょうね」
「雨花!この前の続きやろうぜ!」「ダメよ!私が先だもん!」「雨花……これ壊れちゃった……」「雨花これみてダンゴムシ!」
雨花は、この保育園がとても好きだった。何だか一番安られげる場所だと想った。子供たちは全員とは言わずともそのまんまみた情報で人をみるから雨花も子供たちが慕ってくれることが本当に嬉しかった。それだけ少なくとも"今"の自分は良い人と想われてると想ったから。
雨花「はいはーい。順番だから公平にじゃんけんで決めよっか!それから壊れたんだよね……はいどうぞ!元に戻ったよ!おー!立派なダンゴムシだね!かっこいい!!」
雨花はどんどん子供たちと親しくなっていく。
他の保育士の人たちも目を見張る仕事ぶりだった。
「雨花さん。凄いですね!あんなに沢山子供たちが来たら普通少しはテンパりますよ。」
「何かこういった仕事していたんですか?」
雨花「…………子供が昔から好きだっただけですよ」
雨花は、過去、保育士を目指していたとは言わなかった。いや、言えなかった。自分の過去を生半可に伝えなくなかった。
「嫌だ!!私悪役なんてやりたくない!!」
「じゃんけんで負けたんだから仕方ないだろ!!」「でもやりたくない!!」
何やら子供たちが口論しているようだった。
「どうしたの?何かあった?」
他の保育士が声をかける。
「こいつじゃんけんで負けたのにやりたがらないです!!」
「だって悪役なんて悪い役じゃん!!やりたくない!!」
「何でだよ!そもそもお前がじゃんけんで決めようって言ったんじゃねぇか!」
また口論が始まってしまい、保育士が困っていると……
雨花「でも悪役って物語を彩る上でとても必要な存在なんだよ?」
雨花が子供たちに伝える。
雨花「主役は悪役がいないと存在できない、悪役は本当に必要不可欠な存在なの。それに悪役は自分たちの正義を持ってそれを周りに示して負けてしまった正義の持ち主。自分たちの正義を貫こうとした立派な存在なんだよ。悪役はとてもかっこいい生き様の持ち主なんだ。だから悪役やってみない?」
すると、悪役になった子供はこう言った。
「なんか悪役も悪くないって想えてきた!雨花ちゃんありがとう!!」
「なぁさっきはごめんな。きつい言い方して……」
「ううん!私こそごめんね!続きやろっか!」
「気にしなくて良いよ!やろ!」
口論をしていた二人は楽しく遊びを続け始めた。
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???「……という話を他の保育士の方から聴いたんですが……悪役が立派な存在。ですか……雨花さんらしいですね」
ここは、冥府。事務仕事をしながら雨花に話しかけているのは橙である。
雨花「わたし悪役好きなんだよね。実は繊細だったり、その正義を持つまでに背景があったり、背景がなくても人を傷つけてしまったり、綺麗事じゃないところとか、本当に人間らしい存在だなって想うんだ。」
「それに、」と雨花が話を続けた。
雨花「だから本来なら良いとか悪いとかそんなものにこだわらず、自分たちが良いと想った正義を持って生きていくべき。自分たちが良いと想って正しいと信じた自分だけの幸せを手に入れるべき。……その結果誰かが傷ついても、絶対幸せは誰かの不幸で成り立っているんだから。それがどんな不幸かは分からないけど。それからはどうしたって逃れられない。だから人間はちょっと悪いくらいで生きていった方がほんの少しだけ心が楽になれるかもしれないね。」
すると、橙は「(その考え方を自分には向けないのが雨花さんですね……)」と心の中で呟いた。
それを察したのか、雨花は小声で……
「まぁわたしは楽になんてなっちゃダメだし、なりたくないんだけど」
そう言うと、雨花は書類を提出しに行った。
その後ろ姿はとても空虚にみえた。
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