第6話

???「………………」


「雨花さん!」

雨花「ん?どったの?紅緒ちゃん?」

紅緒「その……橙さんが……」


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時は少し遡り、そこには閻魔大王補佐官の橙と……死神組第一部隊長の瑠璃人がいた。


橙「あなた、私の仕事の邪魔するなら帰って貰えますか?大体あなた仕事はどうしたんです?」

瑠璃人「いや。それがサボっちゃった!」

橙「…………は?それが仕事をサボった人の態度ですか?」

瑠璃人「まぁそんなカリカリすんなよ。あんまり怒ると血圧が上がってその炎みたいな髪がますます赤くなるぞ?」

橙「今すぐ出て行って、仕事をして下さい。何でいつも私の邪魔をするんです?本当にいい加減にして下さい。」

瑠璃人「いや、でも……」


すると橙は我慢の限界を超えたのか、机にばん!と手を乗せ、違う席に移動して仕事をすることにした。


瑠璃人「ちょっと待てよ〜……!」

そう橙の手を握ると、橙は泣きそうな顔で怒っていた。

橙「何でいつも邪魔ばっかり……私にもう二度と話しかけないで下さい!」

瑠璃人「ちょっと待ってくれ!橙!」


橙は、どんどん離れていき、瑠璃人は呆然としてしまい……


橙「またやってしまった……」


こう呟いてもその呟きを聴いてくれる人はもういなかった。


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紅緒「……ということがあって、今橙さんはとてもイライラしながら仕事をなさってて……」

雨花「…………そっか。分かった。ちょっと橙ちゃんと話してみるよ。」


雨花「橙ちゃん。ちょっと良い?」

橙「……………………」

雨花「橙ちゃん」

橙「……!もう何ですか!?…………って雨花さんでしたか……失礼しました。今少し苛立っていまして……」

雨花「大丈夫!わたしのことは気にしないで!それよりその瑠璃くんのことなんだけど」

橙「……あの人、いつも私の仕事の邪魔ばかりして迷惑してるんです。もう関わるつもりは……」

雨花「ちょっと待って。それは本当にちょっと待って!これ話そうか迷ったんだけど……実は……」

橙「……?」


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???「うぅ……」

???「やっと戻ってきたか。瑠璃h……って何で泣いてるんだ?何かあったのか?」

瑠璃人「兎白さん……!実は……」


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兎白「なるほど。お前が悪いな。」

瑠璃人「そんなばっさり!!……ってその通り何ですけど……」

兎白「謝って来れば良いじゃないか。ちゃんと訳を話して……」

瑠璃人「その「訳」を話せないからこんなことになってるんですよ……!ってすみません。」

兎白「いや俺は別に大丈夫だが……」

瑠璃人「オレもできることなら謝りたいんですけど……ただ謝るだけじゃやっぱりダメじゃないですか……何で謝るのか。そして何で謝るようなことをしたか。…………それをちゃんと話さないと。……そしてそれに……今、橙に「二度と関わりたくない」って言わせちゃってますし……」

兎白「もうやっぱり正直に言うしかないんじゃないか?」





「お前が橙のことが好きだって。」





瑠璃人「………………////」


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橙「…………えっ?彼が私のことが好き?」

雨花「うん。そうだよ。(ごめんねぇ!瑠璃くん……!でもこれを話さないと橙ちゃんずっと誤解して瑠璃くんと本当に関わりたくないって想っちゃうかもだから……!)」

橙「………………」

雨花「ん?橙ちゃん!?大丈夫!?何か凄く顔が赤くなってるけど!?」

橙「別に何でもないです……」

雨花「(……これはもしかして……)」


橙は顔を赤くしながら雨花に背中を向け、少したじろいでいた。


雨花「橙ちゃん。瑠璃くんはね。一番伝えたいことほど素直に気持ちを伝えられないんだ。本人もその事で本当に悩んでる。よくわたしに「またからかって橙を怒られた!!嫌われたらどうしよう!!」って言ってるし。もちろん。悪いのは瑠璃くんだから橙ちゃんが怒るのは当然のことだと想う。…………でも、「関わりたくない」って言われると……もう何をしても取り返せないと自覚すると……その人にとって死んでも消えない後悔をその人がずっと背負うことになるかもしれない。それが自分が悪いなら尚更。」


雨花は、密かに「(……わたしみたいに。)」と感じながら話を続けた。


雨花「橙ちゃん。もう本当に関わりたくないなら止めないよ。これは橙ちゃんが決めることだから。許すのも許さないのも橙ちゃんが決めて良い。わたしもそれを尊重するよ。さっきは瑠璃くんを正当化するようなこと言ったけど、もちろんあれもわたしが想ってることだけど、これは二人の問題であって、瑠璃くんと関わるのも関わらないのも橙ちゃんが決めて欲しい。わたしが言いたいのはこれだけ。」

橙「…………」


そう言い残すと、雨花は去っていった。


橙「…………私は……」


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???「うぅ緊張する……」

???「まぁ行くしかない。頑張れ。」


死神組本部では、死神組組長。兎白と、死神組第一部隊隊長。瑠璃人が話し合っていた。


兎白「行くしかない!ここが頑張り時だ!お前の気持ちをぶつけろ!!そうしないことには何も始まらない。」

瑠璃人「…………はい!」


そう言うと瑠璃人は橙のいる冥府へ駆け出した。


瑠璃人「(橙はどこだ……?)」


冥府中を探し回ったが、どこにも橙の姿が見つからなかった。


瑠璃人「……あと見てないのは……でも……あそこにいるのか……?」


橙「……はぁ……私は何をしてるんでしょう。自分から「関わりたくない」と言っておきながら……」

???「あっ!いた!橙!」

橙「!瑠璃人さん……」


ぜぇぜぇと息を切らしながら瑠璃人は、とうとう橙を見つけた。


橙「……あの……その…………」

瑠璃人「ごめんなさい!」

橙「!瑠璃人さん……」

瑠璃人「いつも自分の仕事サボって仕事の邪魔したり橙が嫌がってたのにずっとやり続けて……本当にごめん!」

橙「…………どうしてやり続けてたんですか?」

瑠璃人「そ、それは……その……」

橙「…………」

瑠璃人「す、スキ……ダカラ」

橙「……もう1度ちゃんと言ってください。」

瑠璃人「……好きだからです!!……////」


しばらく沈黙が続くと……


橙「……それをもっと早く言ってくれれば良かったのに……笑」

瑠璃人「…………!それは……その……」

橙「実は雨花さんから聴きました。どうして私をからかうのかも。」

瑠璃人「えっ!?!?」

橙「あっ違いますよ!雨花さんは私のあなたへの誤解を解くために言ったんです!私はずっと面白半分で人に迷惑をかける最低なクズだと想っていたので……」

瑠璃人「そ……そこまで……」

橙「まぁでもあなたはちゃんと謝ってくれましたし、何が悪くて。何で悪いことをしたのかも。」

瑠璃人「……////」


すると、橙が瑠璃人に近づき、

橙「そういう不真面目そうで、でも本当は他人想いで正直になりたいと想ってるところが私も……」

瑠璃人「…………!」


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橙「あっでもあなたの人間性……いや、神様性が!って話でそういう意味じゃないですよ!」

瑠璃人「えっ!?そうなのかよ……じゃあ……」


瑠璃人はそっと橙の手を握りながらこう言った。


瑠璃人「オレが好きにさせてみせる!!」

橙「!?!?」


瑠璃人はもう既に顔が林檎のように真っ赤になっているが、


《自分の気持ちをぶつけろ!!そうしないと何も始まらない。》


瑠璃人「…………オレが必ず好きにさせてみせる!!だから……それまで待ってて下さい!!」


そう言うと、橙が口を開いた。


橙「…………ふふっ。それってどんな告白宣言ですか笑。まぁでも……それまで期待しないで待ってますよ。」

瑠璃人「そこは期待してくれよ……笑」


そして、しばらくした後、瑠璃人の髪の一部が橙色に変わったのは別のお話。


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???「はぁ……良かった……本当に…………良かった。わたしみたいにならずに済んで。」

???「すぐそうやって自分を比較対象にするのやめろとずっと言ってるだろ。雨花。」

雨花「そういう兎白くんは、何故ここにいるのかな?……瑠璃くんのこと心配だったんでしょ?」

兎白「…………俺はたまたま通りかかっただけだ。」

雨花「じゃあ何で私と同じように柱から隠れてみてたのかな?」

兎白「……!知ってたのか!!」

雨花「笑笑ごめんごめん!」


その様子を桃時はみていて、「保護者か!」と1人突っ込んでいたとか。

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