十二話 何はともあれ報告に戻る

 「仕事やってきたよ」

 「確認をお願いします」

 「はい、少々お待ちください」

 

 冒険者ギルドに戻ってきたカラスマとミッカは、仕事を受けた時に受注証として渡されていた小さなネックレス――地味だが頑丈そうな紐に小さくてくすんだメダルが取り付けられている――をそれぞれ取り外して受付へと返した。

 報告はどうすればいいのかと聞いたときに、これをつけていけばわかるから問題ないと言って持たされていたものだ。

 

 そんな小さな装飾品が監視カメラのようなものであるとも思えず、いったいこれでどうやって仕事の完了を報告すればいいのかと揃って首を傾げていた二人だったが、少々待てといわれたわりにはすぐに戻ってきた職員によって結果を告げられた。

 

 「ミッカさんがウィスプを三十体、レッサーゾンビを六体……カラスマさんはウィスプだけで二十体ですね。お疲れさまでした。というか、短時間ですごいですね」

 「あれはスライムではなくウィスプというのですねぇ……」

 「ゾンビ……って、妙にのろのろ動いてたあのネズミ…………まじか、うける」

 

 名前を知って頷いているカラスマと、何度か蹴り飛ばしていた物の正体を知って思わず足をさすっているミッカを見て職員は一瞬だけ不思議そうにしたが、変わったふるまいの冒険者などは珍しくもないのかすぐに自分の仕事に集中する。

 

 「共同討伐した魔物はなかったようですので、一旦別々にお渡ししますね。ミッカさんが二千百ソノン、カラスマさんが千ソノンですので、ご確認を」

 

 ミッカは銀貨二枚と銅貨一枚、カラスマは銀貨一枚を渡される。精緻な意匠の硬貨を手に取って眺めながら、カラスマは職員へと声をかける。

 

 「ソノンというのがこの国の通貨で、この銀貨が千ソノンなのですか? ほかにはどんな種類のものがあるのでしょう? あぁ、あと先ほどの討伐数のカウントはどのように――」

 

 矢継ぎ早の質問に職員はとっさに嫌そうな表情を浮かべた。だが面倒そうにその職員が話し始めるよりも、さらにその背後から現れた女が遮る方が先だった。

 

 「私が説明してあげよう。さあ、こっちに来るといい!」

 

 よく言えばハキハキとした喋り方の――悪く言えば一々うるさい――彼女は、短めの金髪をきれいにまとめており、ぴんと伸びた背筋もあって非常に快活な印象だった。歳は二十代の半ばから後半くらいに見えるが、何よりも目立つのは力強いその目。総じて押しが強そうとカラスマは内心で勝手に苦手意識を抱いていた。

 

 だが、その内心を表明するような機会が訪れることもなく。カラスマはミッカと二人でギルドの奥へと連れていかれることとなった。とっさに断ろうかと口を開きかけたものの、カラスマの社会人経験が悪さをして、こういう状況で流れを断ち切るような行動をとることなどできなかったという事情は、彼の名誉のために伏せておいた方が良いだろう。

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