第7話 冥界の代償

 蟇田は冥界の使者の警告を無視し、黒魔術の力をさらに深く求めた。彼の心には、もはや後悔の欠片もなかった。目の前に広がるのは無限の可能性と力の源、そのどちらも手に入れることができるという確信に満ちていた。だが、その裏に潜む危険を彼はまだ十分に理解していなかった。


 冥界の力を駆使することで、蟇田は戦国時代の歴史を改変し、数々の戦を勝利に導くことができた。毛利元就のカードを手にしてから、彼の力は急速に増していき、次第に周囲の者たちから恐れられる存在となった。だが、強大な力を手にしたことで、彼の内面に深刻な変化が起きていた。


魂の腐敗


ある晩、蟇田は鏡の前に立って、自分の顔をじっと見つめていた。冥界の力を得たことで、彼の外見にも微細な変化が現れていた。瞳の色は異様に深く、まるで冥界の闇そのものを映し出しているかのようだった。肌も次第に青白くなり、どこか死者のような雰囲気を漂わせていた。


それでも、彼は気にすることなく、鏡の中の自分に向かって笑みを浮かべた。


「これこそが、力の証だ」


だが、その笑みの裏には、次第に冷酷な感情が芽生えていた。以前は感じていたはずの同情や躊躇が薄れ、今では他者の命を奪うことにさえ何の躊躇もなくなっていた。彼の心には、もはや人間らしい感情はほとんど残っていなかった。冥界の力と黒魔術がもたらした代償は、確実に彼の魂に影響を及ぼしていた。


新たな脅威


蟇田の力が増す一方で、戦国時代は不安定な情勢となり、数多くの勢力が混乱を深めていった。その中でも、蟇田にとって最も恐ろしい存在は、冥界から再び現れた使者だった。使者は、蟇田の力の暴走を警告するために現れたが、蟇田はその警告を無視し続けた。


「お前が望む力は、この世界の枠を超えるものだ。だが、無限の力を持つ者には、無限の対価が必要となる」


使者の言葉は冷徹で、蟇田の心に鋭い痛みを与えた。しかし、蟇田は依然としてその言葉を無視し、さらに深い魔術に手を伸ばすことを決意した。彼は一度手にした力を、もう二度と手放すことはないと誓っていた。


暗黒の計画


次第に、蟇田の名は戦国時代に轟き、その恐怖の影響は広がりを見せた。だが、彼が目指すのは、単なる時代の支配者ではなかった。彼の欲望は、世界そのものを支配すること、そして冥界の力を完全に自分のものにすることに変わっていた。彼の頭の中には、冥界の王座に座り、時空を越えて無限の力を振るう姿が描かれていた。


そのためには、さらに深い闇の力を得る必要があった。蟇田は、冥界の中心に存在する「虚無の門」と呼ばれる場所にたどり着くための計画を立て始めた。虚無の門を開くことができれば、彼は冥界の王と対等な力を手に入れ、さらには現世をも支配する力を得られると言われていた。しかし、その力には恐ろしいリスクが伴うことも、彼はわかっていた。


虚無の門を開くためには、極めて危険な儀式を行わなければならない。儀式には大量の魂を必要とし、その犠牲を払わなければ門は開かない。蟇田はすでにその準備を進めており、彼の魔術はさらに強力になっていた。


裏切りと覚悟


蟇田の力が増すにつれて、周囲の者たちは次第に彼の変化に気づき始めた。元々の盟友たちは、彼の冷徹な行動に恐れを抱き、裏切りの計画を練る者も出てきた。しかし、蟇田はその裏切りをも予見していた。


「裏切り者たちよ、貴様らの魂もまた、虚無の門のために捧げさせてもらう」


蟇田は一切の躊躇なく、裏切り者たちを処刑し、彼らの魂を冥界の力に変えるべく儀式を開始した。その儀式が進行する中、彼の体に異変が現れ始めた。魂の代償を払うことで、蟇田の肉体は徐々に冥界のものに変わりつつあった。彼はもはや人間ではなく、冥界と現世の間に存在する異形の存在となりつつあった。


だが、それでも彼は進み続けた。すべての力を手に入れ、世界を支配するその瞬間まで――。


最後の選択


儀式が終わり、虚無の門が開かれたその瞬間、蟇田の前に現れたのは再び冥界の使者だった。


「お前が得た力は、もはや人の力ではない。だが、その代償は果たしてどうだろう。魂を捧げることは、果たしてお前の望んだものをもたらすのか?」


使者の言葉に、蟇田は一瞬だけ沈黙した。だが、その瞳に宿る冷徹な光は、もはや何ものにも揺るがなかった。


「望むものは、すでに手に入れた。今さら後悔などしない」


そう言い放つと、蟇田は虚無の門を完全に開き、冥界の力をその身に宿した。その先に待つのは、支配する力、破壊の力、そして永遠に続く闇――。


だが、その力が最終的に何をもたらすのか、蟇田はまだ知る由もなかった。


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