第6話 黒魔術の契約

 蟇田は冥界で手に入れた毛利元就のカードを握りしめ、時空を越えた先の戦国時代で運命を変えようとしていた。しかし、彼の心の奥底では、力への渇望がさらに深まっていた。過去を変え、歴史を操る力だけでは物足りない。もっと強大な力が欲しい、そしてその力を自分の手中に収めることで、名を轟かせ、誰にも屈しない存在になりたい――その欲望が膨れ上がっていた。


 ある晩、蟇田は山間の村で奇怪な噂を耳にした。村の周辺で妖怪が現れ、夜な夜な人々をさらっていくという。村の者たちは恐れ、避けることしかできなかったが、蟇田はその噂に興味を惹かれた。妖怪を倒すことで、その力を得られるかもしれない。そう考えた彼は、夜の闇に紛れ込み、妖怪退治に出向いた。


 👻妖怪との対決


 村の近くの森には、異様な気配が漂っていた。蟇田は慎重に歩を進め、目を凝らして周囲を見回す。月明かりの中、森の奥から奇怪な声が聞こえてきた。それは、普通の人間の声ではなく、どこか歪んだ、別の存在の声だった。


「ここにいるのか?」


 蟇田が声を上げると、闇の中からゆっくりと現れたのは、顔が人間のものとは全く異なる、奇怪な妖怪だった。目がぎょろぎょろと動き、長い爪を伸ばして蟇田に向かってきた。


「お前が来るのを待っていた」


 妖怪はにやりと笑い、続けた。


「だが、お前の力では我に敵うまい。私はこの森を支配し、魂を集めている」


 蟇田は妖怪を見据え、冷静に一歩踏み出した。その目の奥には、ただ恐れや躊躇はない。むしろ、妖怪との戦いに燃えるような野心があった。彼は手のひらをかざし、呪文を口にした。


「冥界の力よ、我に力を与えよ」


 すると、蟇田の体を包み込むように、黒い霧が渦を巻き始めた。冥界の力が、彼の体内に流れ込んでいく。その力を使うことで、彼は次第に妖怪に対抗する力を得ていった。妖怪が手を伸ばしてくるその瞬間、蟇田は黒魔術を駆使して妖怪の動きを封じ込めた。


 妖怪は驚き、歪んだ顔を歪ませながら叫んだ。「貴様、何者だ!?」


「我は蟇田。冥界の力を得し者」


 蟇田は妖怪に向けて呪文を唱え、黒い炎を放った。その炎は妖怪の体を包み込み、焼き尽くすように広がった。妖怪は激しくもがきながら、最後にはその体を崩し、消えていった。


 黒魔術の覚醒


 妖怪を倒した蟇田は、戦いの余韻に浸りながら森の中に立っていた。だが、彼の体の中で何かが変わったことに気づいた。冥界の力を使ったことで、ただの戦士から、より強力な存在へと変貌を遂げたのだ。


 その時、黒魔術の呪文が自然に蟇田の口から発せられるのを感じた。彼の手のひらに現れた黒い光は、まるで命を持つかのように躍動していた。それは、もはやただの呪文ではない。彼は無意識のうちに、黒魔術の使い手としての資質を覚醒させていた。


「これが…黒魔術か」


 蟇田はその力を感じながら、手を握りしめた。妖怪との戦いが、彼にとって一つの試練となり、冥界の力と黒魔術を手に入れるための鍵となったのだ。


 彼の目には、もはや普通の人間の姿はない。冥界の魔力と黒魔術を得たことで、彼は新たな力を手に入れ、戦国時代を席巻する存在になることを決意した。その力を持つことで、彼は元就を超えるどころか、時代そのものを支配する者になれると確信していた。


 だが、黒魔術には代償が伴うことを、蟇田はまだ知らなかった。冥界の力を使い続けることが、彼の魂にどれほどの影響を与えるのか、今はまだ想像もつかなかった。


---


 予兆


 蟇田が黒魔術の力を覚醒させたその夜、冥界から一通の使者が現れた。その姿は、先日冥界で出会った使者と似ていたが、何かが違っていた。


「お前が力を得たことは予期していた。しかし、その力は簡単には制御できぬ」


 使者は冷徹な目で蟇田を見据え、続けた。


「お前が黒魔術を使い続ける限り、魂に変化が訪れる。その代償を支払う準備はできているか?」


 蟇田は無言で使者を見返した。彼はもう、後戻りできないことを理解していた。冥界の力を得たことで、彼は過去を変えるだけではなく、自分自身もまた、変わり始めていた。


「代償など、恐れるものではない」


 蟇田はそう言い切り、黒魔術の力をさらに深く学ぶことを決意した。次に待ち受けるのは、単なる妖怪ではなく、もっと強力な敵――そして、自らの魂をも蝕んでいくであろう、恐ろしい力との戦いだった。



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