第5話 冥界の契約
蟇田は、暗い霧に包まれた冥界に足を踏み入れていた。彼の目の前には、無数の魂が漂い、遠くで不明な呻き声が聞こえる。冷たい風が彼の頬を撫で、彼は思わず肩をすくめた。この地に来た理由は一つ、かつて自らが持つ力では到達できなかった目的のためだった。
「お前が来るのを待っていた」
突然、低く響く声が冥界の空間に響き渡った。蟇田は一瞬、身を固くしたが、すぐにその声の主が見えた。そこに立っていたのは、冥界の使者のような存在、無数の顔を持つ「精霊」であった。
「毛利元就のカードを手に入れたいのだろう?」
蟇田は黙って頷いた。冥界の使者は続ける。
「そのカードは、過去に戻る力を持っている。だが、力を使うには代償が必要だ。お前がその代償を払う覚悟があるのか?」
蟇田は深く息を吸い込むと、ゆっくりと答えた。「覚悟はできている」
使者は冷笑を浮かべ、指を鳴らした。すると、冥界の霧が渦巻き、光を放つ一枚のカードが現れた。そのカードは、金色の縁取りと、毛利元就の名が彫られた、古びたものであった。
「これが、過去に戻るカードだ。しかし、その力を使えば、運命を変えることになる。すべてを失うことになるかもしれない。それでも構わないか?」
蟇田は一瞬、過去に戻りたいという欲望に駆られたが、心の奥底で冷静さを保った。彼は戦国時代の大名、毛利元就がどのようにして天下を目指したのか、そしてその力を得ることで何を変えることができるのかを深く理解していた。
「すべてを失う覚悟はできている。過去を変えることで、より良い未来を築くことができるなら、それにかける価値がある」
冥界の使者は再び冷笑を浮かべ、カードを蟇田に手渡した。
「良いだろう。お前にその力を授けよう。しかし、覚えておけ。このカードを使うことで、決して後戻りはできない」
蟇田はカードを手に取ると、その重みを感じた。カードはひんやりとしていて、どこか不気味なオーラを放っていた。しかし、その一瞬で、彼は自分がどんな未来を描くべきか、確信を持った。
「今こそ、過去を変える時だ」
蟇田はカードを握りしめ、冥界の使者の前で静かに目を閉じた。そして、力強くカードを押し込む。
瞬間、冥界の闇が爆発的に広がり、彼の周囲は一気に異次元へと引き込まれた。
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時空の扉
目を開けると、蟇田は見知らぬ場所に立っていた。周囲は戦国時代、毛利元就の城下町にそっくりだった。彼は深呼吸をし、振り返ると、自分が歴史の中に紛れ込んでいることを確信した。
「毛利元就、今、ここにいる」
蟇田は心の中で決意を固めた。元就のように賢明で狡猾に振る舞い、今の時代で得た知識を駆使すれば、彼の野望を超えることができると信じていた。だが、すでに過去に足を踏み入れた今、彼には戻る道はない。
そして、運命の歯車が再び回り始めた。
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冥界で手に入れたカードは、蟇田を戦国時代に導いた。しかし、彼が手にした力は、単に過去を変えるだけのものではなかった。冥界の使者が言った通り、力には代償が伴う。蟇田が元就を超える存在になるためには、どれだけの犠牲を払うことになるのだろうか。その答えは、まだ誰にも分からない。
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