貧乳の妹

 自宅に着いた俺は、扉の鍵を開けて扉を開ける。そして、玄関で靴を脱いでいると……妹の玲愛れあがエプロン姿で出迎えてくれた。


「おにい、おかえり~」

「おう、ただいま」


 妹の玲愛は現在、中学2年生の14歳である。バスケ部に入部していて、俺とは違って運動神経がちょー抜群だ。部活のある日は、俺が寝ている時間に学校に行ってしまうので会うことはない。金髪と言うよりかは黄色の髪のショートヘアで、何人もの男子に告白されるらしい。俺はなんとも思わないが、妹は美少女だということなのだろうか? あっ、ちなみに告白してきた男子は全員振っているらしい。つまり、彼氏がいない。


「もうすぐで晩御飯できるから、先にお風呂に入っちゃって」

「りょーかい」


 妹に言われた通り、俺は浴室へと向かい……制服を脱いで全裸になる。そして――髪の毛や顔、身体を洗って浴槽へと入る。


「ふぅ……。きもちぇ~」


 俺は一点を見つめて、今日の出来事を改めて振り返る。冤罪をかけられて絶体絶命だったところを、転校してきたありさちゃんに助けてもらい、そのあとはありさちゃんと昼飯を食べて、放課後にありさちゃんとクレープを食べに行った。そして……なぜだか俺は、ありさちゃんにハグをされた。


「ほんの一瞬の出来事だったから、驚きもあってあまり覚えていないけど……どうしてハグをしたのかマジで謎だな」


 でもまさか、推しにハグをされる日が来るなんて……! 俺はなんて幸せ者なんだッ!! 


「そのうちありさちゃんにキスをされる日が来たりして……いや、それはな――」


 すると、風呂場の扉が開いてエプロン姿の玲愛が現れた。


「お兄、ご飯できたよ」


 俺は妹のことを見つめると……顔を真っ赤にしながら口を開いた。


「この変態ッ! 俺の裸を見やがって!!」

「はあ? 誰がお兄の裸なんか見たいと思うのよ。私、ちょーお腹空いてるから早くお風呂出てね」


 バタンと大きな音を立てて風呂場の扉を閉め、妹はその場を後にした。


「可愛げのねぇ妹だ。お兄ちゃんとお風呂入りた~い! とか言ってみやがれ。……そろそろ出るか」


 俺は浴槽から出て、バスタオルで髪や体を拭き、洋服を着てリビングへと向かう。


「可愛げのない妹よ。風呂から出たぞー」

「誰が可愛げのない妹だって……」


 すると、椅子に座っていた妹は立ち上がって……俺の頬を引っ張ってきた。思いっきり引っ張ってきたので普通に痛い。俺は妹の肩を叩いて声を上げる。


「ギブアーップ! とーても可愛い妹の言い間違いでした!」


 そう言うと、妹は俺の頬を引っ張るのをやめて口を開いた。


「次はないからね……」


 鷹のような鋭い目つきでそう言うと、妹は笑顔で椅子に座って言葉を続ける。


「お兄、早く椅子に座って!」


 俺は引きづった表情をしながら椅子に座る。女ってこえぇぇぇぇぇぇぇぇ……。女と言うより妹の怖さに気づいてしまった。


 俺たちは手を合わせて口を開く。


「いただきま~す!」

「い……いただきます」


 妹が作ってくれたメニューは……白米にわかめと豆腐の味噌汁、筑前煮とサバの味噌煮だ。俺は味噌汁を一口すする。本人の前では絶対に言えないが、ちょー味が薄くてあまり美味しくない。筑前煮とサバの味噌煮も一口づつ食べるが……うん。味が薄くて病院食かと思うほどだ。なんなら病院食より味が薄いのではないのだろうか? そう思ってしまうほど味が薄すぎるのだ。正直、ちょー不味くて食べたくない。コンビニ弁当……いや、病院食を食べたい。こんなにも不味く料理を作れる妹にある意味感心してしまう。


「どう? お兄、美味しいでしょ?」

「あ……ああ、ちょーうめぇ……」


 嘘をついて無理して食べること15分後……俺たちは食事を終えて妹は皿洗いをし、俺はソファーに座ってテレビを見てくつろいでいる。


「なんとか食べきった……」


 小さな声で呟くと、俺は妹の方に視線を移して声をかける。


「何か手伝うことはあるか?」


 俺がそう聞くと、妹は首を横に振りながら口を開いた。


「ううん、不器用なお兄はくつろいでて」


 俺は額に青筋を浮かべると、テレビを見ながら内心思う。確かに俺は不器用だけど……あんなにも不味い料理を作るお前に言われたくねぇつうの! 勘違いしてんじゃねぇぞ、この……Aカップの貧乳女が!! お前のブラジャーを偶然見ちゃったから知ってんだぞ! しかも、胸パッドを入れて胸を大きく見せようとしていることもなぁ!! だけど残念でしたぁ~! お前が胸パッドを入れて胸を大きく見せても……ありさちゃんの胸の方が大きいですぅー!!


「貧乳女……」


 小さな声で呟くと、妹は皿洗いを終えて俺の隣に座ってきた。


「お兄、いつになったら童貞卒業できるんだろうね?」

「んなこと知るか。一生童貞でも悪くはねぇよ。つうか、どうしていきなりそんなことを話してきた?」

「ん? なんとなく」

「なんとなくで話す内容じゃねぇだろ。……お前だって処女のくせに」

「高校生になったらヤって処女卒業するって決めてるし」


 俺は耳穴を指でほじりながら、妹に忠告をする。


「妊娠したら色々大変だから、頭に入れとけよ」

「そんなこと分かってるし」

「ヤリかねないからな……お前は」


 俺は小さな声で呟くと、妹と一緒にテレビを見てくつろいだのだった。

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