やるべきこと

 一生懸命人命救助に当たっていたフラウ。


「ねぇ、フラウ」


 そんなフラウへと僕は声をかける。


「あっ!アーク!ちょっ、人助けを手伝ってくれないかしら!?わ、私一人じゃ手が足らなくて……」


「……いや、今はそれよりもやるべきことがあると思うよ」


「えっ……?」

 

 僕はフラウの言葉に首を振り、それよりも、と声をかける。


「まだ、王都が燃える要因は生き続けている。今も尚、新しい火の手が上がってきている……フラウも気づいているよね?」


「う、うん……いや、そうわよね。アークはもっと出来ることがあるし、こんなところで私の手伝いをしているような暇はなかったわよね。ごめんなさい」


「いや、それはフラウだって同じだよ?というか、王族何だし、僕よりも上でしょ。別に今は純粋な力で全てを洗い流してしまえばいい、なんてことは無いし」


 まだ、まだまだフラウは自分の価値を全然理解出来ていない。

 彼女の根っこにまで浸透している幼少期から培ってした劣等感は、それほどに大きい。


「フラウこそ、ここで個人を助けている場合じゃないよ。根本的なものも何かをしないと、被害は拡大するばかり……フラウは、この事態を直接収められる側の人間だよ」


「……わ、たしにそんな力は」


「自信を持ちなよ。フラウ。君は大きなことが出来る。人命救助も大切だけど、目先のものに囚われ、より多くを助けられるのに助けないというのは怠慢だよ。やるべきことをやるべきだ」


「……やるべき、ことを。そう、よね。貴方から、信頼を受け続けて、こんな状況でも俯いているわけにはいかないわよね。私に、何が出来るかしら?」


「ふ。その域だよ。それじゃあ、何をするべきなのか。それを考えるために、まずは現状を把握していこうか。ということでお姉ちゃん。今の王都の状況を教えて」


 すんなりと覚悟を決めてくれたフラウに満足げな笑みを向けた僕はその後、お姉ちゃんの方に話を振るう。


「ようやくそこの女のうじうじは止まったの?」


 そして、そのお姉ちゃんがまず口にするのはフラウへの皮肉でもない、率直な非難だ。


「うぐっ……」


「お姉ちゃんの口撃の火力が高い」


「あら?そう……でも、これくらい普通よ」


 うーん。相も変わらずお姉ちゃんのフラウへの当たりが強い!

 信じられないくらいの強さをしている。

 まぁ、別にいいけど。


「それじゃあ、私がアークの為に集めた今の王都の現状を説明していくわね」


「……これ、私も聞いていいやつなのかしら?」


「うん。聞いていい奴だよ。というか、聞いてくれないと困る」


「ちっ」


「舌打ちされた!?ねぇ!?今、私、舌打ちされたわよね!?」


 お姉ちゃんから舌打ちされたことに対して驚愕し、喚き始めるフラウ。


「まず、この王都で何が起きたのかというと」


 そんなフラウを華麗にスルーし、お姉ちゃんは今の王都について語っていくのだった。



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