久しぶり
凄まじい勢いで燃え盛る王都。
その中へと僕たち三人は突入していく。
「いたい……いたいいたい」
「きゃぁぁぁああああああああああ!?」
「あついっ!?あついっ!?」
燃え盛る王都。
外から見て地獄だったそこの内部は、しっかりと地獄だった。
辺りからは様々な悲鳴が聞こえてくる。
「大丈夫ですか!?」
そんな王都の中で、フラウは人命救助のためにとりあえず走っていた。
王都に響く悲鳴を聞いた瞬間、馬車を飛びだして行っていたのだ。
フラウは自分の力で市民を下敷きにしていた瓦礫をどけたり、燃える炎に魔法で水をかけたり、色々なことをして回っている。
「……まさか、こんなことになっているとは」
「そう、だね。オットー」
そんなフラウのことを眺めている僕とオットーは互いに言葉を交わす。
既に馬車の方からは降りている。
「……悪いが、俺はちょっと自分の生家の方に行く」
「うん、わかったよ」
オットーが自分の生家へと向かって行くのを見送る。
これで、僕は一時的に一人となった。
「おかえり。アーク」
その瞬間。
僕の背後に一つの気配が降り立つと共に、後ろから抱き着かれる。
「んっ、ただいま。お姉ちゃん」
もちろん、その人物はお姉ちゃんだ。
「えぇ、おかえりなさい。お姉ちゃんは優しいから、ちゃんとここで待ってあげたわ。そんな私に顔を見せてきたアークがくっさい雌豚の匂いを漂わせてて、お姉ちゃんは悲しいよ?お姉ちゃんのことを忘れちゃっていたりはしていないよね?アークの為に一人で頑張っていたお姉ちゃんのことをおいて、他の女なんかに現を抜かしているような、そんな愚かな真似はしていないわよね?もし、そうだったらおねえ───」
「ちゃんと頼んだことはやってもらえた?」
お姉ちゃんの長文を強引に遮り、僕は一方的にこちらが頼んだことについて尋ねる。
「……えぇ、やったわよ」
そんな僕の言葉に対して、お姉ちゃんは何処か拗ねたかのような雰囲気を醸し出しながら、頷く。
「それならよかった。ありがとう」
「アークの頼みだもの」
お姉ちゃんには僕がいない間の悪だくみをお願いしていたのだ。
「……それにしても、随分と派手なことをしようとしているのね?私にはあれだけ復讐しないように、とか言っていたのに。なんかもう出来なそうな雰囲気よ?」
「あははは」
僕は自分のほっぺを後ろから引っ張ってくるお姉ちゃんに対し、愛想笑いを返す。
「国王が死ぬとかいう想定外のことが起きちゃったしねー。今なら行けると思って」
「まったく。私には貴方が何をしたいのかわからないわ……本当に、私の復讐を叶えようとしてくれているの?」
「僕はただ、安心が欲しいだけだよ。別に、暗部と事を構えるつもりなんてないよ」
「……なんだ。つまらないの」
「フラウが国王になってくれれば、少しは安心できるでしょ?」
「そんな不安がらなくても、平気だと思うけどね?」
「油断大敵だよ」
そう。油断というのは簡単に足元を掬っていくからね。
「それじゃあ、お姉ちゃん。フラウと協力して、この状況を何とかしていくよ」
「……えぇ、いいわ。……いいわ。私は優しいから、ちゃんとアークの願いを叶えてあげるわ。お姉ちゃんだもの」
最後まで油断せず、すべてを決め切る。
僕は軽い足取りで人助けの為に奮闘しているフラウの方に近づいていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます