燃え盛る

 フラウ抜きでオットーと共に決めた再び王都の方に戻ろうという方針。

 それにフラウの方もしっかりと従ってくれた。


「これからの自分たちの方針はどうする?」


 リューロスト伯爵閣下の元で休憩して態勢を立て直した後、再び王都に向かって進み始めた僕たち三人を乗せた馬車。

 その中で、僕はフラウへと疑問の声を投げかける。


「えっ!?な、何か決めていたんじゃなかったの……?」


「いや、自分たち一行のトップはあくまでフラウだから。フラウの話だって聞かなきゃ」


「……んっ。確かにそうだな」


「え、えぇ……」


 僕とオットーの言葉を受け、フラウがちょっとばかり声を震わせる。


「わ、私としてはもうほとぼりが冷めるまでお爺様の元でゆっくりしているんでいいと思っているんだけど。王位戦で中立の立場を示している貴族を叩き潰す、なんてことはしないと思うし……それで時間を潰すのが一番安全で、丸いんじゃないかしら?」


 そして、フラウは自分の考えを素直な言葉で話していく。


「いや、そんなわけないじゃん?というか、王太子関連であれだけ注目浴びた中、何も持っていない身軽な状態でいるのは不味いと思うよ?自分の立場はちゃんと明確にしておくべきだと思う」


「うぅ、確かに、そうかもしれないわね……父上が死んだことで動転してて忘れちゃっていたけど、……そういう立場にも置かれていたわけだものね。私は」


「そうだよ。それに、フラウの実力だって、この国でもトップクラス。何かを為せるだけの力があるわけだからね。その上で、何もしないというのは怠慢だと思うよ?生まれが生まれだし」


「え、えぇ……?そうは言われても……私、やっぱり自分が強いってことをあまり咀嚼しきれていないのよ。強くなりたい。認められたい。その一心で動いていたけど、実は強かった、なんて言われても中々信じられないというか……」


「でも、事実だからね。どれだけ遠ざけても。もう一度聞くけど、フラウは何をしたい?」

 

 真正面の僕からの質問。


「……まだ、わからないわ」


 それに対して、フラウは視線を逸らしながら、小さくただそれだけを答えた。


「なら、今はそれでいいよ」


 ここでフラウからの答えが返ってきたら色々狂うからね。

 その答えで満点だよ。

 僕的には。


「じゃあ、その代わりに僕とオットーが決めた方針に従ってもらうね。とりあえず、僕たちは自分たちの陣営を作ります。ラインハルト辺境伯家の名前の威を借ることで人を集めていくよ」


「へぁっ!?」


「それで、もう大体集め終わっているから、今から王都に行って決起集会を開き、本拠地を決める。それで、自分たちの立場を明確にするよ」


「……んなぁっ!?ねぇ、私の意見を聞くとか言いながら、私のいないところで最初から方針は決まっていた感じじゃないかしら?これ?」


「そんなことないよ。ねぇ?」


「ん?あぁ、そうだな」


 フラウの追及に対し、僕とオットーは雑に追及をかわす。


「……うぅ。まぁ、いいけどさぁ」


 そして、そんな僕たちを見て、フラウがため息を吐く。


「ほら。もう王都が見えてきたよ。切り替えて?」


 そんなフラウへと御者台に座り、馬車を進める僕が声をかける。

 既に王都は見えてきていた。


「あっ、ほん……」


 その僕の言葉を受け、馬車の中から顔を出して王都の方を見ようとするフラウ。


「……えっ?王都が、燃えている?」


「うん。燃えているね……何があったんだろ。帰るべきか?これは」


 そんな彼女の目に映るのは絶賛、今も燃え盛っている王都の姿だった。

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