リューロスト伯爵閣下

 リューロスト伯爵家の屋敷へとやってきた僕たち三人。


「いやぁー、よくぞいらっしゃった!歓迎させてもらうぞ!」


 そんな僕たちは今、リューロスト伯爵家の当主にして、フラウの祖父。

 オルモ・リューロスト伯爵閣下からの熱烈な歓迎を受けていた。


「お初目にかかります。リューロスト伯爵閣下」


 馬車から降り、使用人からの案内で応接室に通されて早々に受けた熱烈な歓迎を前にフラウが固まってしまった中、僕が代わりに口を開く。


「おや……?君は?」


「申し遅れました。私はラインハルト辺境伯家の嫡男。アーク・ラインハルトと申します。以後、お見知りおきを」


「おぉ!あのラインハルト辺境伯家の!」


「えぇ、あの、ラインハルト辺境伯家にございます。我が家は知っての通り、かなり特殊な位置にある家にございますので、こういう状況になると頼れず……リューロスト伯爵閣下がこうして我々


「いやはや、私はフラウ王女殿下の祖父ですから。当然、受け入れさせてもらいますとも。ところで、何故、アーク殿はフラウ王女殿下と共に?」


 僕のことをちゃんと名前呼びしてくれるのポイント高いよ。

 しっかり、僕がラインハルト辺境伯家の名前と共にここへは立っていないことを察してくれている。


「いえ、私はあくまでそこにいるフラウの師匠にございますので。学校ではその関係だったのですよ。強者であるという自負は持ち合わせておりますので」


「おぉ。それは心強い。そんなのが私の孫娘の近くにいてくれるというのだから、感心することしか出来ないですなぁ。本当にありがたい限り」


「ふふふ、そう言ってもらえて何よりですよ」


 オルモ・リューロスト。

 今世において、初絡みする御仁だけど……結構食えなそうな人だな。敬語が苦手であまり知慮深くはない武人。というのが広く知られているリューロスト伯爵閣下の評価だけど、全然そんなことはないかな。

 絶対この人は頭が回るタイプの御人だ。

 リューロスト伯爵閣下、最初から僕にしか注目していないもの。

 フラウ王女殿下でもなく、見た目が厳つくもイケメンであるオットーでもなく、一見すると無害なショタにしか見えない僕しか警戒していない……ちゃんと世相は調べていそう。

 流石にすべての足取りを消すのは無理だからね。めちゃくちゃ丁寧に調べれば、僕の関与があるかもしれないという疑いを持てるレベルには情報を残してしまっている。

 ここから、ちょっとずつ大変になる部分もあるだろうなぁ……。


「おっと。すまない。ずっと、君たちを立たせてしまっていてね。ささ、早く座ってくれたまえ」


 話の一区切り。

 それがついたところで少しの沈黙の後に、リューロスト伯爵閣下は僕たちに座るよう促し始める。


「失礼します」


「し、失礼します」


「失礼する」


 三者三様の態度と言葉と共に僕たちは席につく。


「……」


 席についたところで、僕は自分の視線をフラウの方に向ける。


「……っ」


 最初の挨拶は代わりにやってあげた。

 これ以上やってあげるのはもう過保護のレベルだよね。

 だって、僕たち一行のトップはフラウなのだから。


「……りゅ、リューロスト伯爵閣下。まずはこうして、私たちを受け入れてくれたことに感謝いたします」


 その僕の視線を受け、フラウはちょっとばかり声を震わせながら、それでも、ちゃんと自分の言葉で話し始める。


「孫娘である貴方なのですから、当然のことです。むしろ、なのですよ。これまで、位置関係、力関係で貴方の守護者となれなかったことに対して、ただただ謝罪をするばかりですよ。ですから、今、我々に出来ることがあれば何でもおっしゃってください。お力添えしましょう」


「……それでは、リューロスト伯爵閣下のお言葉に甘えさせてください。良ければ、私の味方になってくださいませんか?」


 ふわっとした言葉。


「……っ。えぇ、もちろんにございます」


 それでも、実はかなりの拘束力のある言葉を辺境伯家並びに侯爵家の嫡男二人がいる場で、フラウはリューロスト伯爵閣下の口から引き出すのだった。



 ■■■■■


 お久しぶりです、作者です。

 インフルでダウンして、更新できませんでした。

 ちょっと更新頑張ろうとしていたんだけど、思ったよりも筆が進まなくて二日間休んじゃいました。すみません。

 まるっきり、すべての作品で更新しないってのがかなり久しぶりでドキドキしちゃった。

 これからは多分、毎日更新するので、今後ともよろしくお願いします(友達と遊んでてそのまま飛ぶことがあるかもしれない……けど)

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