生家

 フラウが頼れるような伝手なんてほとんど限られている……というか、ゼロに近いと言っても良い。

 そんな中で、フラウは王都からリューロスト伯爵領の方に逃げてきていた。


「……だ、大丈夫かしら?私が行っても。き、キレられたりはしないわよね?」


「大丈夫じゃないかな?孫であるわけだし」


 リューロスト伯爵家。

 そこはフラウを産んだところで亡くなってしまった母親の生家である。

 フラウはそこの家にとって、孫にあたる人物だ。


「うぅ……恨まれていたりぃ」


「そんなことはないだろうから大丈夫だよ」


「ほ、本当に……?こんな私を産んだせいで、私のお母さんは亡くなっちゃったんだよ……?」


「それは自虐的すぎるし、その考えは君を思って命懸けで産んだお母さんに対して失礼だよ」


「……ッ、う、うん」


 もし、恨まれているのなら逆恨みにも程があるし……そうはならないことをしっかりと確認済みだ。一応ね?これくらいは当然してある。


「……クソ、何で俺も一緒に来ているんだ?」


 多分受け入れてもらえるであろうリューロスト伯爵領へと、僕、フラウ、オットーの三人で馬車に乗って向かっている最中だった。


「最悪、リューロスト伯爵領から追い出されたとしたら、オットーの家の方を頼ればいいんじゃない?」


「おいっ!?うちは代々大臣を歴任してきた、領地を持たない文官専門の貴族だ。王都にリターンすることになるぞ!?……うちの両親は既に自分の一派にある領地持ちの貴族家に身を寄せているような状況だからな。役には立たないぞ」


「ちなみにラインハルト辺境伯領はこういう時に無力だよ。バランスブレイカーになっちゃうし」


 残念ながら、家に関してはもうリューロスト伯爵領しか頼れるところは無い。

 僕のコネにも、ここで頼りになるところはない。

 基本的に僕の関係の作り方は利害関係ばかり。互いに得になると判断してから関係を作り始めるからね。


「うぅ……頼れる線が細すぎる」


「んー、親族だし、そんな心配することないと思うけどねぇ……」


「私、家族に対していい思い出ないよ?そもそも、親族という理由で仲良いなら、私はこんな逃避行する必要ないと思う」

 

「……」


 全くもってその通りである。


「ダメだ……もう終わりだよ、うぅて……心配だァ」


「まぁ、何となるよ。ならなきゃ終わりだしね。それにさ、もう、着いたし」


 リューロスト伯爵家の屋敷。

 その中へと、この家の騎士たちの案内を受けながら僕たちの乗る馬車が入っていくのだった。

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