確認
フラウとオットーに逃げるよう促し、お姉ちゃんの方にも二人の護衛を頼んだ僕はその後すぐに学園の方へと一人で向かっていた。
「失礼するよ」
そして、学園に来た僕がやってきたのは生徒会室だった。
「ふふっ、まさか、君から来てくれるとは思っていなかったよ」
そんな僕を生徒会室で迎え入れたのはもちろん生徒会長───魔法によって、暗部の方々と通信を繋いでいる生徒会長だ。
「この状況下でまず会いに来るべきは君たちだと思ってね」
「捕縛されに来てくれたと?王殺しの大罪と共に」
「それに関してはただの病死であると、すべての医者が断言しているでしょう?流石に天命まで僕のせいにされるのはね。ちょっと不愉快だよ?」
「だが、王弟を解放したのは君だろう?」
「ふふ……証拠は?」
「ちっ」
僕の言葉に対して、生徒会長はわかりやすい形で舌打ちをうつ。
国王を殺したのも僕だし、王弟を解放させたのも僕だ。
だが、そのどちらにも証拠は残していない。僕だと確定させることは多分無理……その上で、国王殺しは僕が関与しているという匂わせすら許していない。王弟は僕の関与があると疑えるレベルにしてあるけどね。
「さしずめ、君の目的は王弟を国王とし、自分の母親を殺した一派を排除することかい?だが、その目論見はうまく行かない。私たち暗部の人間が必ず防ぐ」
生徒会長はまだ、暗部の人間じゃないよね?という疑問は一旦端に寄せて。
「何を言っているんだい?暗部は王位継承戦に参加できないでしょう?」
別の話を生徒会長の方に振る。
暗部はあくまで、国全体を守る組織だ。国内での争いの際、暗部は出てこれない。どこかの陣営に肩入れすることは何があっても出来やしない。
「既に王弟は負けているのだ。ただの犯罪者、それを暗部が捕らえる……いつものことで、それを禁止される道理はないな」
「はぁ~?別に僕は敗者である王弟を国王にするつもりなんてまるでないよ?そんなつもりがあるわけないじゃん」
「ならば何故、王弟を助け出したと?アークの周りに王族なんて……もしや、コロヌス?あの闘技場での争いは───」
「フラウに決まっているでしょ。むしろ、それ以外あると?」
ちょっと思考が飛び、話が脱線した生徒会長へと僕は簡潔な言葉を告げる。
「暗部の人間も、まだフラウを下に見ているんだろうけどさー。あの子は、ちゃんと強いよ」
間違いなくフラウは僕の期待通りにやってくれる。
それは何もゲームで見たからじゃない。僕の目で見て、彼女と触れ合って、そう信じられたのだ。
だから、フラウに僕は賭けた。
「僕は絶対に勝てる賭けしかしない。暗部は動くなよ。それだけだ。王弟は勝手に暗部で排除してもらっていい。僕はフラウについているだけだからね」
王弟は単なる雑な撒き餌だ。
周りの王族たちを早々に動かし、膠着状態を作り出させないようにするための。
「僕はここに暗部と意見のすり合わせに来た。それだけ。暗部がちゃんとそのポリシーに従って動かないことを確認するためにね」
「……」
「沈黙は肯定として受け取るよ」
どれだけ僕のことを危険視していようとも、暗部のポリシー的には絶対に動けない。
ここを捻じ曲げたら、それはもう暗部としての機能はもう果たせない。
「というわけだから。それじゃあ、僕はここらで失礼するよ」
暗部は動けない。
それを確認出来た僕は満足して席を立つ。
「これは、本当に私個人からの疑問だ」
そんな僕に対して、生徒会長はこちらのことを真っすぐ見つめながら、口を開く。
「んっ?」
「君は、このユノレヒト王国を害するつもりは、あるのか?ユノレヒト王国を破綻にまで追い込むつもりがっ、アークにはあるのか?」
「いや、そんなことするわけないじゃん。それでユノレヒト王国が他国の食い物にされたら終わりでしょ。大国であるから価値があるのに」
ユノレヒト王国が大国の座から転がり落ちるの勘弁。
衰退国家なんていい思いはしないからね。
「……そうか」
「だから、安心してよ。それじゃあね。早く僕もフラウと合流したいから」
やるべきことを終えた僕は生徒会室を後にし、フラウと合流するために歩を急がせるのだった。
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