逃亡
この日、ユノレヒト王国にこれ以上ないほどの激震が走った。
国王、死す。
その一報は王太子の関連で揺れていたユノレヒト王国を更に揺れ動かし、そして、大きな騒動へと発展する劇物となった。
「……うーん。王太子たちの陣営よりもまず先に第二王子の陣営が動き出したかぁ。他のところもぽろぽろ動いてくるだろうな」
まだ、国王が死んだという触れ込みが回り出してから一時間程度しか経っていないというのに、もう王位継承権を持つ王子、王女が動き出している。
ユノレヒト王国の王都は今、世界で最も陰謀渦巻く地へと早変わりしつつあった。
「ど、ど、どうするのよっ!?」
「……逃げるしかないでしょ」
そんな中、今なお、フラウの家にいる僕とフラウ。
僕は動揺しまくるフラウの言葉にあっさりと言葉を返す。
「ちょっとフラウには人手が居なさすぎるね。仲間が誰もいない中で、この荒れる王都に居るのは不味いかな」
「……仲間」
「仲間、その一言でこっち向かれてもちょっと困るよ……?別に僕はフラウを王にしようと動いているわけじゃないし」
「……そ、そうよね」
「まぁ、フラウの身は守るけどね?まずは、この王都を一緒に脱出するところからかな。もう学校とか言っていられる段階じゃないでしょ。僕も王都から逃げた方が良い立場だし、一緒するよ」
ラインハルト辺境伯家は王位戦に干渉しないことが通例となっている。
王家への繋がりを持ち、力をつけすぎるのは不味いからね。
ラインハルト辺境伯家と王家の繋がりは、既に中央で力を発揮できない王族との婚姻関係だけ。
「夜逃げの準備をするべきかも……」
「に、逃げる、逃げる、ねぇ……」
突然の事態に対してどう動くか。
僕とフラウが共に頭を抱える。
「おいっ!大変だっ!?」
そんな中で、血相を変えたオットーが僕とフラウが居たリビングへと転がり込んでくる。
「どうしたの?」
情報を集めてくると言って、国王が死んだという一報を受けた瞬間にフラウの家を飛び出していったオットー。
そのオットーが血相を変えて戻ってくるという最悪に近い状況の中においても、僕は冷静さを保って疑問の声を一つ。
「王弟が動き出したそうだっ!」
それに対するオットーの答えはかなり深刻なものだった。
「んっ……?その王弟って、投獄されている?」
「あぁ、そうだ!誰かが牢屋をぶち破ったらしい!最悪だっ!」
「……マジ?ヤバくない?」
「大問題だっ!この一手は国王陛下がお隠れになられた今、次の玉座を求めていた王位継承者たちを大きく刺激することになる……ッ!ここらで一発、大きな花火が起きてもおかしくないっ!」
「……そうかぁ。それは、ちょっと不味いなぁ」
「……本当にマズイ。特に、俺たち、つかフラウは特に」
ちなみに、その王弟を解放したのは僕である。
「わ、私、本気で不味いのかしら……?私はつい最近まで落ちこぼれで、周りは誰も気にしないような子だったんだけど……?」
「でも、今のフラウは王太子に土をつけた王位継承権を持つ王女だ」
「……」
オットーの言葉にフラウは口を閉ざす。
ちょっと色々なものが甘めなフラウでもわかるだろう……今の彼女はかなりヤバい状態にあると。
「まっ、今は逃げるしかないね。さっさと逃げようか」
誰が考えてもわかる。
この混乱状況において、兵力を何も持っていないちょっと話題の王女が王都にいることの危険性を。
僕は二人に対し、さっさと逃げようと声をかけるのだった。
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それと、あとちょっとだけいつものあとがきより少し。
皆さんに対してのちょっとしたお知らせがあるのです。
実はですね、近況ノートの方を見ていただいている方なら知っておられるでしょうが、僕は12月6日に19歳の誕生日を迎えさせてもらいました。
ということで、それを記念し、サポーター限定近況ノートの方にこれまで僕が作ってきた小説の没案を全公開しようと思います。拙い手書きのものであったり、タイトルしかない案だったり、あまりにも適当な有象無象の集まりですが、興味のある方がいましたら、ぜひご覧になってください。
僕への誕生日プレゼントの意味も込め、サポーター限定近況ノートを見れるようになるギフトを頂けると嬉しいです。
それではいつもよりあとがきが長くなってしまいましたが……今後とも、本小説並びに19歳を迎えた作者の方をよろしくお願いします。
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