祝賀会
無事に勝利で終わった第二回目の特別試験。
その日の夜。
「第二回目の特別試験お疲れ様~!」
「お疲れ」
「お疲れ様ー!」
「……」
フラウが一人暮らししている家へと、第二回目の特別試験における小部隊の全員で集まっていた。
僕、フラウ、オットー、お姉ちゃんの四人で一つのテーブルを囲んでいるのだ。
そのテーブルに並べられているのは僕が作った御馳走……ふふふ、これでも僕は料理に自信があるからね。うまく作れたという自負があるよ。
「ということで、フラウ。改めてコロヌスへの勝利おめでとう」
「……えぇ、ありがとう。まだ、実感はあまり強くないけどね。ほんと、なんで……私が勝てたのかしら?」
「いや、勝つのに対してそんな疑問はなかったよね?」
未だ、勝った実感があまり湧いていなさそうなフラウの言葉に対して、僕はオットーの方に視線を送りながら口を開く。
「あぁ、そうだな。実力で言えば、全然フラウはコロヌスにも負けないだけの実力は有していたな」
そして、その僕の言葉にオットーが頷き。
「私の方が強いわ」
お姉ちゃんが張り合いだした。
「そりゃあ、お姉ちゃんの視点で言えばね?お姉ちゃんに勝てる者がどれだけいるのか、っていう話だし」
フラウとお姉ちゃんの実力差はかなり大きいし、それは早々埋まるようなものでもない。
お姉ちゃんもあり得ないくらいに強いからねぇー、僕たち姉弟は世界最強クラスだ。
「……えっ。オットーまで私の勝ちを疑っていなかったの?」
そんな会話の中で、フラウがぱちくりと目を見開かせながら、疑問の声を漏らす。
「当然。というか、お前とアークのやり取りを見て、負けると思う方がおかしい。常にお前は追いつめられていたから自覚していないんだろうが、アークと戦っているときのフラウはマジで強者の風格を保っているぞ」
「……本当に?」
「こんなところで嘘つくわけないだろう」
「フラウは自信がなさ過ぎるんだよ」
「……師匠」
「僕が断言するけど、フラウは間違いなくこの世界でもトップクラスの強者だよ。でも、自己肯定感の低さが足を引っ張っているのか、剣を振るう直前に迷いが生じるんだよ。それが弱さになっている」
「えっ?」
「自覚ない?」
「い、いや……自覚、なんてぇっ……もしかして、師匠が、私のことを後ろから狙撃してきた理由って実は私に何も考えさせないようにするためですか?」
「そうだよ。むしろ、それ以外あるわけないじゃん。フラウだってさ、何となくわかるでしょ?コロヌスと戦っているときの感覚とかさ、ちゃんと残っているんじゃない?」
「……」
フラウは僕の言葉に黙り込む。
覚えは、ちゃんと残っているのだろう。
「これはフラウが自信を持つ第一歩だよ。君はコロヌスに勝てるだけの力があるんだ。自信をつけるだけだよ」
「……自信をつける」
「あぁ、そう。後、フラウがやらなきゃいけないのはそこだよ」
───戦う理由を見つける。それもまた、一つの手ではあるけどね?
「美味しい」
僕がフラウの強さについて語っていた中、そんなものを無視して食事を勧めていた
「それならよかったよ。お姉ちゃん。僕たちも食べよっ。僕が丹精込めて作った料理だよ。冷める前に食べよっ」
「あっ!いただきます!」
「……アークにこれだけの料理スキルがあったとは意外だよな」
「ふふんっ。僕は基本的に何でも出来るから。舐めないで?」
うん。美味しい。
オットーの言葉に返答しながら、自分の料理を口に運ぶ僕は頬を綻ばせる。
今日も僕の料理の腕は実に冴えわたっていた。
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