後ろから
「ねぇ、アーク?」
「ん?何、お姉ちゃん」
「最近、アークはどんな悪だくみをしようとしているの?私は、ちゃんとわかっているよ?アークが色々と小細工を弄し、裏で暗躍していることを」
「えー、でも、完全には理解出来ていないでしょ?」
「暗躍している。その事実だけで十分……あの、ティナにまで接触しているでしょ。今回のはちょっと準備が長そうじゃないかしら?」
「やりたいこともそこそこ大きいからね」
「そんなこと、する必要ないじゃない」
「んー」
安心感。
僕は安心したいのだ。
「お姉ちゃんはさ、僕のことを守ってくれるよね?」
「もちろん。命にも代えても守るわ」
「なら、死なないようにしないとね」
「……ッ、そんな、計画なの?」
「なわけないじゃん。大事なのは、お姉ちゃんが僕に対して、そう思ってくれるように、僕も同じことを思っているってことだよ」
もう許さない。
「そんなことより、フラウが戦っているよ?」
話は終わりだ。
永遠と僕の髪を弄っているお姉ちゃんとの会話を打ち切り、視線を前に送る。
「いつまで逃げているっ!」
「ひぇぇぇぇえ!?」
その視線の先にいるのは、へっぴり腰になりながら、自分の前にいるコロヌスと打ち合っているフラウだった。
フラウはその弱々しい剣を振るい、コロヌスという暴力に振り回されていた。
へっぴり腰で、攻撃に出れるわけがない。
フラウは半泣きになりながら、何とかコロヌスの攻撃を受けて、それを受け流すことくらいしか出来ていなかった。
「ここだっ!」
「ひょっ!?」
「……ちっ、運のいい!いい加減倒れろっ!」
ただ、そんな戦いの中で重要なのは、僕とお姉ちゃんがだらだらと会話している間にも、フラウはコロヌスと戦えていたということだ。へっぴり腰ながらも、フラウはコロヌスと戦い続けられていた。
「うーん」
まぁ、こうなるよね。うん。
半ば想定できた展開だった。
「えいっ」
へっぴり腰のフラウをどうするか……そのための策も僕はちゃんと偉いから考えておいていた。
僕は一切の迷いなくフラウの背中へと魔法を叩きつける。
「うわぁ!?」
それを受け、フラウはコロヌスに向かって1歩、前に踏み出すことを強要される。
「いやぁ!?」
後ろからの攻撃にパニックとなったフラウは1度思考が止まり……そして、体は無駄な思考から開放される。
「……ッ」
変化は劇的。
無意識下において最善の動きを見せるフラウの体は実に美しい剣の軌道を見せ、コロヌスへと襲いかかる。
反撃を予期していなかったコロヌスは目を見開き、それでも、何とか地面を転がって彼女の元から離れる、
「……まぐれか?」
コロヌスの瞳は驚愕と共に見開かれ、フラウへと注がれる。
「何するのよ!?」
ただ、その視線はフラウに届かない。
彼女は攻撃を与えた僕に夢中だった。
「フラウ」
「な、何……?」
「僕の思う通りに動け。でなければ、魔法で撃つ」
「お、思う通り……?それはどんな……」
「感じろ、教えん」
「理不尽っ!?」
体は覚えているのだから、問題ないだろう。
「さっ、頑張って!死ぬような攻撃を受けても回復させてあげるからさ!」
悪魔を見るような視線をこちらに向けているフラウに対し、僕は満面の笑みで返すのだった。
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