これからも

 僕がティナと会話していた間。


「……さっさと走れ。走れ走れ走れ。面倒だけど、私が何があっても限界を超えて動けなくレベルにはならないよう、回復させ続けてやっている。だから、走れ」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」


「クソ……クソっ、何で……俺までぇっ。もうとっくに限界はっ」


「甘えるな」


 お姉ちゃんが鬼軍曹となってフラウとオットーの二人を永遠と走らせ続けていた。


「こひゅ……こひゅ……ひゅー」


「ぜぇ……ぜぇ、ぜぇ……」


 ずっと走っているフラウとオットーは既にバテバテの死にかけ。 

 フラウに至っては女の子が見せちゃいけないような表情となっている。

 ちなみに、オットーはあんな感じのチンピラだが、見てくれはイケメンチック。

 そして、美少女であるフラウが見せちゃいけない表情をしている横で、オットーは死にかけながらも、そのカッコよさは保っていた。

 なんなん?こいつは。


「今日はこの辺りかな」


 もう既に結構な時間を走っている……もうそろそろ精神的な限界が本格的に訪れる頃だろう。

 そう判断した僕は自分の隣にいたティナをその場に置いたまま、一息でフラウたちの前にまで移動して、口を開く。


「お、終わったのっ!?」


「……死ぬ」


 その僕の言葉を聞いた瞬間、フラウとオットーはその場に崩れ落ちる。


「お姉ちゃんもありがと。二人のことを見ててくれて」


「アークの頼みだから」


「さすおね」


 そんな二人のことを眺める僕はまず、お姉ちゃんの方にお礼を告げていた。


「さて、と。それじゃあ、二人とも。今日はお疲れ様。家へと帰ってゆっくりしな?」


「か、解放される……この地獄から。ようやく解放されるぅ」


「……死ぬ、マジで死ぬかと思った……うげぇ」


「また明日も走るからね。休憩は大事だよ?」


「「えっ!?」」


「というか、明日から三日間くらいずっと走ってもらうから」


「「えぇぇぇええええええええええええええ!?」」


「基礎体力をつけてもらわないと話にならないからね。僕とお姉ちゃんの魔法のおかげで、君たちは死にそうな思いを繰り返すだけで、数年間走り込みを永遠と続けたのと同じくらいの効果を得られるから頑張ってね?努力は無駄にさせないよ。それと、それをさせてあげている僕とお姉ちゃんに感謝してね?」


 二人とも強くなることを望んでいた。

 だけど、急激にフラウが強くなり、コロヌスをコテンパンにすることを望んでいるのは僕だ。

 そして、オットーは完全なついで。

 そんな中にあったとしても、僕は自分優位という立場のまま、二人に頑張ってもらうのだった。

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