接触
無限に走らされているフラウ。
それとそのついでに走っているオットー。
「やっているねぇー」
そんな二人の様子を眺めている僕へと先生……ティナが近寄ってくる。
「仕事はどうしたの?自分の分の仕事は?」
そんな先生へと僕は簡潔に言葉を返す。
「学生の身して、授業をサボっている君たちに言われたくないよ」
「いつもサボっているのに、僕たちを隠れ蓑に使わないでくれない?」
先生は学園一のサボり魔だ。
常にサボり散らかしている。
「ははっ、君は手厳しいな。そんな融通効かないようじゃ女の子にモテないよ?」
「融通が利くのはティナが一番知っているでしょう?」
ここで、僕はティナの方へと視線を送り、笑う。
「……ッ」
そんな僕の視線を受けるティナは言葉を詰まらせ、息を漏らす。
「何を、何をするつもりなんだ?」
「ふふっ、最初からそれを聞きたかったんでしょう?僕とティナの仲だ。もっと直接的に言ってくれてもいいんだよ?お師匠様」
「……久しぶりに、そう呼んでくれたな」
「ははは、どれだけ時が経っても、ティナが僕の師であることは変わりないし、尊敬は落ちていないよ」
最も効率よく強くなるには、最も強い人から師事を受けるのが一番だ。
相手の技術を盗むことを得意とする僕のようなタイプであれば。
幼少期における僕の師はティナであり、彼女の元で僕は戦い方の基礎を学んでいた……今にして思うと、かなり足りていなかったけどね。
幼少期の僕はティナを超すことよりも、自分が出来ることを増やすほうに重点を置いたのだ……国を相手にして、お母さんを守れるほどに自分の手を大きくするため。
まぁ、失敗したけど。
「それは、ありがたい……それで、だ。お前は、何を考えて動いている?」
「んー?」
「王族であるフラウに接触したうえで、王太子であるコロヌスへと接触した。そんな動きをしておきながら、王家に対して何もしない……なんてことはないだろう?どんな嫌がらせをするつもりだ。
「僕はお姉ちゃんと違って、そんな復讐心でいっぱい、ってわけじゃないよ?」
「だとしても、だ。お前という人間。お前という存在……それを幼少期から見ていた私からしてみれば、何を思ってどう行動するのか、知っておかなきゃ不安なんだよ」
「心配性だなぁー、まったく。僕はただ、ね?」
ティナは僕のことを昔から知っている。
お母さんを守るために暗躍し……それで、無残にも失敗した。
そんな僕のことを警戒しているティナの方へと、僕は口元を近づける。
「───」
そして、囁くような声で僕が今、裏の方でしていることをこっそりとティナへと教えてあげた。
「……本気で、言っているのか?」
「本気も、本気。ティナにも手伝ってもらいたいことがあるから、さっ。色々期待しているよ?」
僕がやろうとしていることの概要……その触りだけ。
ただそれだけを聞いただけで体と頬を硬直させているティアへと僕は笑みを向けた後、その視線をフラウとオットーの方に戻すのだった。
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