小部隊

 コロヌスが去った後も。


「アーク。よくやったわ。あのウザったい男に現実を叩きつけられるいい場が出来たわ。特別でもなんでもないというのに、王子であるという生まれだけで偉そうにしていて、嫌いだったのよ」


「お姉ちゃん、コロヌスへの敵意かなり強いね?実は相当喧嘩を売られている?」


 お姉ちゃんが暗部との関連無しにここまで敵意を剥きだしとするのも珍しい。

 コロヌスは別にお姉ちゃんにとっての怒りの対象ではないはずなんだけど。


「そうなの。本当に、ウザい奴なのよ」


 その上で、他人への興味がないお姉ちゃんからの怒りを買うとは、本当に相当なことをしたんだろうね。コロヌスは。


「お姉ちゃんがそう言うなら、相当だね」


 この場の中心にいたのは先生でも、他の生徒でもなく、乱入者でしかないお姉ちゃん。それとその弟である僕だった。

 うーん、特別試験に対する説明の最中にお姉ちゃんが乱入し、そのままも参戦。状況としては完全にぐちゃぐちゃになってしまった。その上で、更にここからも主導権を自分が握ってしまうのは他のクラスメートたちに申し訳ないところなんだけど……ここは仕方ない。僕が変わらずに主導権を握らせてもらっちゃおう。

 話を最後まで進めてしまいたい。


「それで?どっちがあの愚か者に現実を見せる?私がやる?それともアークが叩き潰す?」


「えっ?何を言っているの?コロヌスを倒すのは僕じゃないし、お姉ちゃんでもないよ?」


「んっ?」


 僕とお姉ちゃんが倒したところで、何の意味もない。僕たちを含め、自分たちの父までその名誉が上がっていくだけだ。


「コロヌスを倒すのは僕の隣にいるフラウだよ?」


 僕はフラウの肩を叩いて一言。

 最初から、フラウをコロヌスに勝たせるという計画で彼に喧嘩を売っている。

 ここを譲るつもりはたとえお姉ちゃんであってもない。


「えぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええ!?」


 そんな僕の言葉に対し、まず反応するのがフラウ。

 彼女はこれ以上ないほどの驚愕の表情を浮かべ、驚きの絶叫をあげていた。


「む、無理よ!?私があのお兄様を倒す!?無茶よ!」


「いや、無理はうそつきの言葉だから」


「何でっ!?」


「何でもクソもないよ。これは確定事項。これから、フラウにはあのコロヌスをボコボコに出来るほど強くなってもらうから」


「絶対に無理よっ!?私とお兄様にどれだけの差があると……!?」


「ふふっ、君の師は僕だよ?」


「……っ」


「黙って従いなよ?ちゃんと強くしてあげるから。それが君の望みでもあるでしょう?」


 なんてことはない。

 ただ、ちょっとフラウの覚醒イベントを前倒しにしてもらうだけだ。

 全然、勝たせられると思う。

 第二回目の特別試験はまだ先だしね。開催時期はゲームでも明確に表記されているので、第一回目と違ってしっかりとわかっている。

 てなけで、これは確定。


「ということで、特別試験の部隊だけど、僕にお姉ちゃん。それとフラウ」


 なので、小部隊に関してはここまでは確定。

 それであとは、もう僕が話を振れる人間なんて一人しかいない。


「最後にオットーでいいよね?」


「えっ!?おれぇ!?」


 いきなりな僕からの指名を受け、オットーが驚愕の言葉を上げるのだった。

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