第二回特別試験

 学校なんてものは常に何かしらのイベントが目白押し。


「ほら、お前ら、第二回目の特別試験について説明するから静かにしていろよ?あまり私の手を煩わせるなよ」


 前に大変な事態があってから一か月も経たずにもう第二回目の特別試験がやってきていた。


「さて、それじゃあ、説明に入っていくぞ」


 先生が強引にクラスのみんなを黙らせた後、試験についての説明に入っていく。


「今回の試験は上級生との関係を築くようなものだ。上級生と協力しての試験となるから、そう思っておくように」


 上級生。

 今回の試験で一緒になるのは、数ある上級生の中でも、三年生となる。


「さて、今回の試験も至ってシンプルなものだ。上級生一人と、一年生三人で四人一組を作る。そして、その小部隊同士での模擬戦となる。前回の試験が対魔物戦となるなら、今回の試験は対人戦となる……まぁ、前回の試験が対魔物戦となったかどうかはちょっと不思議なところだがな」


 前回の試験はイレギュラーもあり、魔物と一戦を交えた者の方が珍しいだろう。


「対魔物戦を想定した第一回目の特別試験。それに代わるようなものを行う予定がある。君たちはそれを心して待っていてくれ。めんどくせー、と思うだろうが、必要なことだ」


 まぁ、そうなるのが妥当だよね。

 第三回目の特別試験でも魔物と戦うが、少々難易度が上がる。

 第一回目の試験を受けて経験を積まずに、第三回目の特別試験を受けるのは少々厳しいところがあるだろうね。


「まぁ、頑張れ」


 明らかに応援へと気持ちがこもっていないな。

 先生たちへのボーナスについてだが、第一回目の勝者は誰がどう見ても僕。

 しっかりと先生にはそれのボーナスが行ったらしい。その旨を嬉しそうにみんなの前で語っていた。 

 だけど、代わりの試験では生徒の成績によるボーナスはないのかな?そうとしか思えないような、先生の興味ない反応だった。


「んで、元の話に戻るが、既に上級生には来てもらっている。来ているのは三年生たちの中でも選ばれた成績上位者だ。学べるところは多いだろうから、そう思っておいてくれ」


 三年生と言えば、お姉ちゃんの学年だ。

 そして、お姉ちゃんが成績上位者でない理由はない。


「その上級生たちとお前たちは四人で一つの小部隊をこの時間で作ってくれ。いきなりだと思うだろうが、前の事態による休校の影響で色々なところで遅れが来ているんだ。頑張ってくれ」


 上級生が、三年生がもう既に待機しているとの発言を先生が口にする。

 その時には。


「アーク。おはよう」


「んっ、おはよう。お姉ちゃん」


 何時の間にか、お姉ちゃんが僕の背後に立っていた。

 そのままお姉ちゃんは僕のことを持ち上げ、椅子から立たせる。そのまま僕の代わりに椅子へとお姉ちゃんが座る。そして、最後にお姉ちゃんは持ち上げたままの僕を自身の膝の上へと乗せる。


「アークは私と一緒の部隊ね」


「はしたないぞ。リーズ。汝、一人だけフライングするではない」


 勝手にお姉ちゃんが指示が出るよりも前に僕と組もうとしていたところで、新しい声がこの場に響いてくる。

 その声が聞こえた方に視線を向けてみれば、そこにいるのはこのクラスに入るための扉を開けている一人のところ男だった。


「我々は一年生のお手本となるべき上級生だ。そのお前が勝手なことをするべきじゃないだろう」


 その男はお姉ちゃんの方へと視線を向け、上から目線の堂々たる態度で説教の言葉を並べ始める。


「お前には果たして我が国が誇る学園の生徒としての自覚がちゃんとあるのか。そこの上に乗せられている男もそんな女と一緒にい……むっ?その隣にいるのは落ちこぼれのフラウではないか。お前、恥も忍はずに学校へと来たのだな。感心したぞ」


「……ッ!?」


 そして、その男が言葉の途中で触れたのはフラウのこと。

 男はド直球で、フラウのことを侮辱しに走った。


「ひゅー」


 そんな中で、僕は新たなカマセ犬の風を吹かせる相手の登場を前に、僕は口笛を鳴らす。


「おにい、様」


「……うざ」


 フラウが畏怖と恐怖の感情と共に視線を向け、翻ってお姉ちゃんが心底どうでも良さそうに言葉を吐き捨てたまま視線さえも向けられなかった一人の男。

 その人物の名はコロヌス・シュプラー。

 ユノレヒト王国シュプラーヘ王朝における第一王子であり、王弟が軒並み叩き潰された今において、まだ学生の身でありながら、王太子の地位にある者だ。

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