定期テスト
僕とお姉ちゃんの関係性は硬く結ばれているものの、薄氷のように薄いところもある。
姉弟として、長らく一緒にいる。けれでも、お姉ちゃんはお母さんを殺した相手への復讐心を忘れておらず、僕はそれを重要視していない。
自分たちにとって、最重要とも言えるお母さんが殺された。
その事実へと触れずに暮らしてきた。それが僕たち姉弟だった。
「ふわぁ……」
それでも、僕とお姉ちゃんはちゃんと二人で過ごすことが出来ていた。
「よく、そんな風にあくびを浮かべられるわね……」
「ん?」
久しぶりに、お姉ちゃんと軽くお姉ちゃんについて話した日から一週間ほどで学校が再開。
僕たちの学生としての生活が元に戻ってきていた。
「今日は定期テストが返される日なのに……うぅ、私はもう既にお腹が痛いわ。体が拒絶を示しているわ」
学生としての生活。
そこには絶対的に入ってくるのが筆記で行われる定期テストだ。
「あぁ……そうだね」
それが行われたのが学校が再開されてから一週間後。
今より三日前のことだ。
毎週の二連休を挟んだ今日、週末に行った定期テストが返却されるのだ。
「まぁ、大丈夫でしょ」
定期テストの出来について、自分の隣にいるフラウが悩ましそうな表情を浮かべている中で、僕は軽く言葉を返す。
教育レベルであれば、前世の地球の方が高い。
そこでしっかりと義務教育を終え、高校生活を送る途中だった僕にとって、この世界における学校のテストはそこまで難しいものでもない。
今世の方でもちゃんと勉強は継続的に、小さいころからしているしね。
「それだけの自信が羨ましいわ……本当に」
「はぁー、勉強なんて日々の積み重ねだよ。勉学とて、強さに直結するよ」
「私は覚えが悪いから、毎日やっても中々身についてくれないのよっ」
「幼少期の頃からちゃんと真面目にやっていた?」
「はぅ」
「フラウ王女殿下はかなりヤンチャで、勉強は嫌い。遊ぶことが大好きってのは昔から有名だよね」
「ぐぅ、これだから王族は……私の一挙手一投足が貴族社会に流れるんだから」
「その点、辺境伯だと距離の問題もあって、その実態はあまり知れ渡っていないから得だよね」
「二人の、神童がいるってのは有名だったけどね」
「それだけでしょ?」
僕がフラウと会話していた中で。
「うし!こっち側のチェック終わったぞ!」
教卓の前に立ち、テスト用紙が人数分あるかどうかなど、しっかりと自分の仕事を終えた先生。ティナが声を上げる。
「いやぁー、採点を適当な奴に任せたはいいが、こっちの名簿に点数を書かせるのを忘れていてな。いやいや、こんな風に書き写すことになるとは思わなかった」
……仕事しろ、先生。
「時間も押しているし、三秒で配るぞ」
テスト返し。
それ自体は一瞬だ。
先生が両手を叩き、魔法を発動。
それによって、各生徒のテーブルにそれぞれのテスト用紙が転移される。これによって、一瞬でテスト返却が完了した。
大量の物品を、一度に転移。
こんなところで発揮するものでもない、無駄な高性能魔法だ
「やった!私、ちゃんと高い!」
「うぉぉぉぉぉおおおおおおおお、赤点だァ!?」
「ふー、何とか耐え、かな?」
そんな高性能魔法……に驚くようなことはなく、クラスのみんな自分のテストの点数を見て一喜一憂する。
「ふぅぅぅぅー、何とか、何とか平均は超えたわ」
フラウもしっかり平均を超えられたようで、とりあえずの安堵の息を漏らしていた。
「んっ」
平均越え。
あまり凄いとは言えないラインだが、僕が全教科満点で平均を底上げしているので、それも考えるとまずまずと言えるくらいには頑張っているでしょう。
「師匠は何点だったかしら?」
「満点だったよ、全部」
「えっ!?」
わざわざ驚くようなこともでもない。
「おーい、お前ら。テストの点数を受けて一喜一憂するのはいいが、そろそろ第二回目の特別試験も始まるぞ。ちゃんとそっちのことも考えろよ」
おっ、そろそろ来るか。
ゲームの主人公の運命を変えた、あの特別試験が。
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