生徒会

 これから訓練しよう!という時にやってきた謎の僕の名前が書かれた書類を手に持った女子生徒。

 その女子生徒に言葉に一介の生徒として従い、僕は呼び出された生徒会室へとやってきていた。


「それで?自分に何の用です?」


 自分の通っているユノレヒト王国のオーリオ学園の生徒会。

 オーリオ学園に多数ある日本でいう部活動みたいな立ち位置にあるクラブ。その一つでありながら、生徒たちの上に立って、様々なことを執り行って管理する立場にある少々特異な生徒会。

 当然、立場的に他の生徒よりも上の立場に行くこととなる生徒会へと集まるのは学園のエリートたちであり、生徒会に入れば将来の成功が約束されるとまで言われるその周りより称賛されるその席は学園の誰もが求めて競い合っている。


「サテナ生徒会長」


 そんな生徒会の中でも、更にトップの地位にある生徒会長。

 僕は今、その今期の生徒会長へと呼び出されていた。

 学園の生徒会室。

 そこで僕はオーリオ学園生徒会の生徒会長であるリューエン侯爵家の『神童』サテナ・リューエンへと呼び出されていた。


「私が君を呼びのがそんなに不思議かい?君の立場と、やっていることを考えれば、割と妥当だと思うが?」


「はて?そんなに自分はおかしなことをした覚えはないですよ?品行方正に、真面目に学園へと通っていますが」


「散々とサボっている君はそれを言えないだろう」


「それは自分の姉に言ってください。あの人が勝手に僕のことを担いで、家へと強引に連れ帰ってしまうんですよ」


「それで、君は姉と共にどう帰っているんだい?その帰る先である家は何処だ?家に帰っている姿は見たことない。何処かへと遊びに行っているのでは?別の街などに」


「あっ、やっぱり学園の生徒会は暗部としっかり繋がっているんですね」


 学園の生徒会。

 ここに選ばれる選考基準としてまずあるのがユノレヒト王国の貴族であることが大前提となっている。

 そして、それが大前提となっている理由はこの生徒会という場所そのものが国にとって最も重要と言ってもいい影から国を支える舞台骨と言える暗部の一員を生徒会から補充するため……と、言うのを僕はゲームの知識で知っていた。


「生徒会に入れば必ず成功する。そんな眉唾とも言えるような話は、今後将来、この国の暗部を味方につけられるという点で事実。天才たちばかり集まっているはずの生徒会メンバーであるが、その一部は何故か、パッタリとその名声が何処にも届かなくなる。その他多くの、暗部との繋がりを感じる生徒会の事実」


「……つまり?」


「これまでの疑いがちゃんと繋がって、生徒会と暗部の繋がりがあることを確信出来たから良かったよ」


 それを僕はさも、自分が調査して探り当てた事実であるかのように語っていく。


「私はまだ、君たちの家が何処にあるかわからない、という点しか語っていないが?」


「それだけあれば十分ですよ。自分たちのことをマークしている筆頭は暗部ですし。何よりも、昨日暗部と接触したばかりですしね。僕……そもそもとして、調査しようと思わなければ、僕たちの家が何処にあるのかがわからないという思考にさえ至れないようにしています」


「不登校と」


「生徒会の皆さんが調査したくらいでは僕の魔法の一段階目は破れないですよ?生徒会長が調査したところで、家は見つかっていないけど、それでも家は見つかったものであると錯覚して終わりです」


「ふふ……それは凄まじい自信だな。私と比べ、君が圧倒していると?」


「お姉ちゃんに負けているじゃん、貴方。僕はお姉ちゃんより強いよ?」


 幼き頃より神童と称えられ、その評価に見合うような活躍と成長を遂げた美しく強い麗人、サテナ。

 それでも、そのサテナは半年くらい前にあった学園全体のトーナメント大会で僕のお姉ちゃんに敗北している。

 そんな相手に、僕が負けるはずもなし。


「……」


「んー。それにしても、学園にいる生徒らしくない物騒な会話だったね」


「君がいきなりぶっこんで来たのだが……私は今日、そこまで深く語るつもりはなかったのだが」


「時間をかけたくもないし。僕は端から生徒会のことを暗部の下部組織としか見ていないし、そこに呼び出されたなら、昨日関連の話でしょ?協力関係結ばないか、っていう話であっている?」


 僕は適当なソファに腰かけ、生徒会長の方に声をかける。


「……ふー、私はあくまで、暗部の人間より君を呼び出し、接触するように言われただけなんだ。関係をもっておけ、そのレベルの話だったよ」


「あー、なる。ここまで僕が爆速で暗部絡みね?と決めつける話ではなかったと」


「あぁ、そうだ。私はここで君を呼び出し、特別試験におけるこちら側の不手際の尻拭いをしてくれた君に感謝を述べ、生徒会に誘おうと思っていただけだ」


「だったら、何で最初不穏な感じだったの?」


「……それは私の素だ。これでも、好意的に会話したつもりだ。それに、初期で不穏だったのは君だ」


「あっ、そう」

 

 確かに、最初のセリフである『君の立場と、やっていることを考えれば、割と妥当だと思うが?』も、特別試験について話していたのか。

 勝手に、僕が昨日の夜の暗部とのドンパチを思い浮かべただけで。


「えっ、じゃあ、この後どうするの?」


「ふっ……わからん」


 僕の疑問に対し、生徒会長は不敵な笑みを浮かべ、お手上げだと言わんばかりの言葉を口にするのだった。

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