第二章 落ちこぼれ王女様
暗躍
学校が休みとなり、暇となった自分の生活。
でも、だからと言って、完全に僕が暇となったわけじゃなかった。
「……そこまで動きますかい?」
お姉ちゃんの闇堕ちを防ごう大作戦。
まず初手にお母さんを暗殺から守る───という第一歩から躓いた僕の作戦ではその後もいくつかの誤算が生じてしまった。
一つ目に、お姉ちゃんのメンタルが不安定となり、そこに寄り添っていた僕への依存が大きくなってしまったこと。
そして、二つ目に僕が思ったよりも目立ってしまったことだ。
「国の政府機関まで動き出すのは勘弁」
月も、星も、分厚い雲に隠された静まり返る一夜。
夜。そう、夜だ。
こここそ、これまでの僕が最も立っていた場所となる。
お姉ちゃんの闇堕ち。その一番最初の起点となるのが、お姉ちゃんの復讐心を利用しようと接触してくるこの国への反感を持つ革命勢力だ。
その革命勢力は今世でもしっかりとお姉ちゃんに接触しようと動いており、僕はその勢力がお姉ちゃんに接触しないよう、彼らをフルボッコにするという脳筋的な方法でお茶を濁し続けていた。
「はぁー。どうしましょうかね」
だけど、そんな連中を相手に僕が大暴れしすぎたのかもしれない。
今日も今日とて、お姉ちゃんの方にお触りしようとしていた革命勢力の連中を半殺し程度で留めてリリースし、家の方に帰ろうとした僕へと攻撃を仕掛けてきたのはまた、別の勢力だった。
「無駄」
闇夜に潜んで打ち込まれる一本の睡眠薬が塗られた針を結界で防ぐ。
「……既に僕は革命勢力と一戦交えた後なのよ」
何で、一回ちゃんと汗を流してこれから気持ちよく眠ろうという時に再度、動かなきゃいけないんだ。
「それに、何でお前らが動くんだ……」
僕もこの、夜の、闇の世界に溶け込んでから長い。
自分に向かって今、攻撃を仕掛けている連中が何者なのかもしっかりと容易にわかる。
国の暗部。
この国における国内外の諜報、暗躍を主な業務とする暗部。
そこからの攻撃を今、僕は受けていた。
「ここから、どうするか」
突然受けた奇襲。
それへとどう対応するか、僕は足をその場に止めて次のアクションを待つ。
「君はアーク、だろう?」
「……うーん。ここは何て答えるのが正解かな?」
なんて悠長なことをしていた僕の真正面へと降り立ち、素直に声をかけてきた仮面の男に対して、少しばかり面喰いながらも、口を開く。
まさか、ここまで真正面から僕について触れてくるとは思ってなかった。
というか、普通に話しかけてくるなら、てってこ家に帰ろうとしていた僕の横っ腹を蹴りこむかのように、幾重もの魔法を叩き込み、睡眠針まで飛ばしてくる必要はなかったよね?
「ちなみに、この程度の手勢で僕を包囲出来たと思っているのなら、甘いと言わざるを得ないけどぉ?」
僕へと攻撃を仕掛けてきた暗部の連中は全部で十数名。
こちらを制圧するにはまるで数も、質も足りていない連中だ。
「まったく。舐められたものだよね?」
はぁー、本当に誤算だ。
まさか、僕がここまで注目を浴びるとは……いや、確かに革命勢力と何度も戦い、勝利している奴がいたら、注目もするだろう。
チッ、革命勢力の方も詰めが甘いんだ。
僕は上に気づかれないように動いているのに、相手方の方がバレやがる。
「会話をしに来たのだ。最初のはほんの挨拶だとも」
「会話、ねぇ?言っておくけど、僕はお姉ちゃんの味方だ。今のお姉ちゃんに、革命勢力が癌だと思っているからこそ、僕は彼らを叩きのめしているに過ぎないよ」
「その目的に、我らも協力できると思うのだが?既に我々の要求がわかっているんだろう?」
今、この国は弱体化している。
暗部も然り。
彼らは僕を自分たちの味方としたいのだろう……闇で潜み、革命勢力と戦う僕を。あの試験でティナも苦戦した相手と同格であるイノセントと戦って被害を出せずに収めた僕を、暗部は取りこんでしまいたいのだろう。
「協力、ねぇ?自分たちの母を暗殺した人と何を協力すればいいのかな?」
「その暗殺で我らに逆らったお前を不問としてやる」
「端から不問となっているだろ。お家の存続を望む父が僕の死を許すとでも?」
「……」
「もっと口を回しなよ。子供に理詰めされて口を閉じないでよ……まぁ、今日のところは失礼させてもらうよ。出来れば、次は君たちからの失礼がないことを望んでいるよ。僕はこれでも貴族だ」
とりあえず、暗部はこちらに対して、強硬的な態度を取ってくることはないだろう。
それを確認出来た僕は迷うことなくこの場から逃亡の一手を選択した……流石に家には帰れないよなぁ。何処か良い寝床あるかな?
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