援軍
これからだというタイミングでがいなくなってしまった。
「消化不良」
その事実を前に、僕は不満げに声を漏らす。
「ガァァァァァァアアアアアアアアアアッ」
「……ん?」
なんてことをしていた中で、いきなり僕が立っていた地面が大きく割れ、そこからさっきも見たムカデの魔物が飛び出してくる。
「あー……そうかそうか。まだ、この場所には想定外そうな魔物たちはいるんだっけ」
戦闘の邪魔だったから感知系統の魔法を切っていたせいで、そんな大事なことも忘れていたわ。
さっさと片付けないと……っ。
僕が目の前にいるムカデも含め、森の中にいる魔物たちのすべてを討伐するための魔法を発動させようとしたところで。
「およ?」
空より一振りの氷の槍が天を引き裂いて落ち、自分の前にいたムカデを貫いた。
「氷結世界」
そして、その氷の槍より冷気が解放され、森全体が凍り付く。
その凍結によってその身を氷づけとされたのは森だけではなく、ここにいた魔物たちもすべてだ。
「何をしているの?」
そんな氷の槍へと続くような形で、お姉ちゃんが降ってくる。傾いて地面へと突き刺さった氷の槍の柄の部分へと降り立ったお姉ちゃんは僕のすぐ目の前で、こちらに向かって疑問の言葉を投げかけてきた。
「普通に負けそうになっていただけだよ」
イノセントは本当に強かった。
普通に死にかけ……いや、保険もちゃんとあったから死ぬことはないと思うけど、それでも、全然負けられた。一秒でも武装内骸の模倣が遅れていたら、多分普通にぶっ倒されていたかも。
「アークが、負けそうになった?また、無茶したんじゃなくて?アークは昔から強そうな敵がいるとなぜか、意気揚々と魔法も使わずに突撃して、ボッコボコにされながら笑うなんていう奇行をするんだから……」
「ははは」
あれにもちゃんと意味があるのだ。
魔法があると前世との感覚の差によって、うまくラーニング出来ないんだよ。僕が成長し、相手を糧にして格上にも勝てるようにするためにはあぁ、そうするしかないのだ。
「お姉ちゃんとしては何時も心配なのよ?」
お姉ちゃんは僕の方へと手を伸ばし、自分の頬へと触れて撫でながらこちらを思いやるような言葉を話す。
「……眼球が飛び出していた時なんか、私はっ」
「どうせ回復魔法で治るじゃん」
「そういうものじゃないのよ。人には痛覚だってあるのだから」
「まぁ、そうだね」
あの、自分の体を痺れさせるような痛覚がなかったらバトルも楽しくないもんね。
「まぁ、そんなことはどうでもいいよ。どうせ勝ったし。そして、この場はお姉ちゃんが魔法で強引に収めさせた。それで終わり」
「ちょっと」
お姉ちゃんの御小言は聞きたいない。
というか、心配にさせないでいうのは僕の言葉だ。悪役令嬢の弟になんて転生したせいで、こっちは常に気苦労が絶えないんだ。
「そんなことよりフラウ。大丈夫だった?」
お姉ちゃんのことよりも今はフラウの方だ。
「君の前で大激闘を繰り広げちゃったけど……」
ちゃんとフラウに被害が出ないよう、色々と気をつけていたとはいえ、あれだけのバトルをしていたのだから、フラウにわかりやすい怪我以外の部分の影響があってもおかしくはないと思う。
「……うん。だ、大丈夫だけど。その、前にいる方は?」
そんな僕の心配だったが、フラウはその心配はいらないと首を振り、その後にお姉ちゃんの方に話を振る。
「……誰かしら?」
だが、それに対してお姉ちゃんは何をトチ狂ったのか、いきなりド失礼なことを口にし始める。
「やめい。王女知らない辺境伯の娘とか我が家の恥だから」
そんなお姉ちゃんに対して僕はチョップを叩き込む。
まったく……お姉ちゃんの嫉妬か?それはちょっと勘弁してほしい。
「んっ。まぁ、大丈夫だというなら、早く先生たちの方に戻ろうか。学校がどうなるかわからないのだし」
これ以上話を深堀したくなかった僕はサクッと話を切り替え、先生たちの元に戻ろうと声をかけた。
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