決着
足元に魔力を集め、それを爆発。
「ハァッ!」
瞬間的な加速により、一気に突き進んでいく。
『ぬぅんっ!』
そして、同じことを相手であるイノセントも行っている。
僕とイノセントが交わるのはすぐだった。
「大振りにもほどがある」
イノセントの大ぶりなラリアットに対して、半身を逸らすことで回避し、僕は固めた己の拳をイノセントの腹へと叩き込む。
『ぐぬぅ……』
「よし」
今度の一撃。
それは確かに、イノセントの体にもダメージを植え付けることが出来た。
『かぁッ!』
そんな風に、確かな手ごたえを感じている僕に対して、イノセントは体を動かし、こちらに向けて膝蹴りを叩き込んでくる。
「ほっ」
それに合わせて僕も膝蹴りを差し込むことで相殺させる。
『どのような技術だ……っ』
「凄いでしょ」
イノセントの攻撃をすかせた僕は反撃として魔法を発動。
今度、発動させる魔法は武装内骸で使った魔力の練り方。それを応用し、活用することで威力を底上げさせた魔法だ。
『ぐぉ』
「おぉ、凄い。威力もちゃんと上がった」
これまではまるで効いていなかった僕の魔法も、しっかりイノセントに通じた。
魔法による僕の雷はイノセントの体にも突き刺さり、その体の外骨格にまでヒビを入れることが出来た。
「何にでも利用できる……いや、これが本来の使い方か」
魔法の種類を増やし、魔法そのものが出来ることを増やす。規模を大きくする……こればかりに注力していたけど、魔力の練り方を工夫する方が大事かも。これ。
もっと、もっと、もっと魔力の練り方を工夫する必要がある。
「いいね……いいね、いいね」
どの練り方が最善だろうか。
どんな練り方をするのが一番楽しいだろうか。
「こうかな?」
渦を巻くように、魔法どころか、魔力そのものさえも渦で巻かせながら、風魔法を発動し、竜巻を作り上げる。
『うぉっ!?』
「サンダーッ!」
向かいあう僕とイノセント。
僕まで巻き込んで起こった竜巻を受け、自分たちの体が風で強引に巻き上げながら空の方にぶっ飛んでいく。
そんな中で更に降らす雷の数々。
それは確かに、イノセントはもちろん、僕の体も貫き、多くの傷を刻み込んでいく。
「……これ、普通に僕の方が痛いわ」
いくら回復魔法があると言っても、限界がある。
ボッコボコに自分の体へと雷が降り注ぎ、回復魔法があったとしても治しきれない傷の数々を受けた僕は諦めて魔法の発動を停止させる。
「どう?良い感じでしょ」
ぼっろぼろの状態で地面に落ちてきたイノセントと僕がいる中で、僕は笑いながら口を開く。
さて、さて、さて、それじゃあ……次は何をしようか、何をしてみようかッ!
僕は自分の中に浮かんでくる発想。強くなるための可能性。
それらのどれを試そうか思考を回し……。
パォーッ!
だが、それを遮るかのような、一つの角笛の音が響き渡ってくる。
『ふむ』
「……あん?」
『申し訳ないのだが、今日のところはこれで失礼させてもらおう。我にも我の事情があるのでな』
そして、そのまま僕のことを無視してインセクトが何処かへと逃亡していく。
「……えっ?」
いきなりの幕切れ。
それを前に僕は呆然と言葉を漏らす。
「はぁーっ!?」
そして、次に上げるのは怒りの声。
せっかく盛りあがっていたところだというのに……!
「もー!なんなんだよぉ!」
森の中に取り残された僕は一人、この場へと怒りの声を響かせるのだった。
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