屋敷
お姉ちゃんにあえなく捕まった僕。
「まだ学校やっている最中なんですけどぉー?」
「帰る。もう帰るよ」
そんな僕はお姉ちゃんへと運ばれるような形で学校を後にし、自分たちが住んでいる屋敷の方へと戻っていた。
「……だから、僕ってばボッチになっちゃうんだけどぉー」
こんな形で家に帰ったことは一度や二度じゃない。
そのせいで僕は学校を無断で休むヤバい子という印象がついたことで周りからちょっと浮いており、それがボッチに繋がっているところがある。
まぁ、別に僕は学園で友達を作ることよりも、やらなきゃいけないことがいっぱいあるから、ボッチという状況を甘んじているけどさ。
「アークにはお姉ちゃんがいるでしょ?」
「お姉ちゃんも僕以外の人と交流を持ちな?」
「ふんっ」
僕の言葉に対して、お姉ちゃんは不満げな態度で鼻を鳴らす。
「あらら」
そんな彼女に対して、僕は曖昧な笑みを浮かべる。お姉ちゃんは重症だ。
「ほら、着いたわよ。ちゃんとただいまするのよ」
「わかっているよ。ただいま、っと」
なんて話をしていたら、僕たちが暮らしている屋敷の方へと着いてしまった。
そんな中で僕はお姉ちゃんの腕の中から脱出して、屋敷の扉の鍵を開けて家の中に入る。
「何度見ても、アークの鍵開けの魔法は綺麗ね」
「ありがと」
この世界における戸締りは基本的に魔法で行われる。
施錠も開錠も魔法の分野だ。
「もうお弁当はここに帰ってくるまででぐちゃぐちゃだよ。新しいのを作らないと」
屋敷の中へと入った僕はまず、手に持ったお弁当箱へと意識を割きながらキッチンの方に向かって行く。
「私のも所望するわ」
「なんでよ。食べていないの?」
「食べたわ」
「なら、いらないじゃん」
「アークのご飯ならいくらでも入るわ」
「それは困るなぁー、食費が大変なことになる」
僕たちが暮らしている屋敷はラインハルト辺境伯が王都に所有しているかなり大きなところとなる。
基本的には幾人かの使用人がいて、管理をしている屋敷だが、僕とお姉ちゃんが学園へと入学するために移り住んでからは、二人暮らしになるため、すべての使用人を一旦領地の方に帰らせている。
そのため、この屋敷の家事は使用人に頼むことが出来ない。
というわけで、僕が一人で担当することになっていた。
お姉ちゃんはまるで家事出来ないよ。僕に全任せだ。
とはいえ、家事何て魔法で解決するけど。
「確かに、でも、そうだなぁ……一人で食べるのもちょっと罪悪感あるしなぁ。なんかもう、お昼は食べなくてもいいかな?」
「あの女の子に対して、食べるように言っておきながら、自分は食べないの?」
「僕、ご飯食べても体大きくならないし。技量で何とかするからいい」
「確かにアークの発育はそんなに早い方じゃないけど、悲観的になっちゃ駄目よ?希望も持たないと」
「魔法で自分の体なんて隅々まで精査しているし、自分の体がどうなってどう成長するかなんてある程度把握できている」
ゲームでも、アークは中々強そうな見た目にならないショタっ子だった。
僕がどれだけ頑張っても、こればかりは遺伝によるものが大きい。
ちょっとガチムチマッチョにはなれない……だからこそ、それを覆すための技術が一番だ。
「何、その魔法……強くない?」
「僕の使う魔法だもの」
魔法の腕にも自信ありだよ、僕は。
自分の成長具合を想像する魔法くらいであれば朝飯前だ。
「食べずにぐちゃぐちゃになった弁当は夜ごはんで流用しよ。お昼は良いや」
朝ごはんも食べたし。
別に要らないかな。お昼は別にもう。キッチンに来た僕はお弁当箱をただそこに置く。
「それじゃあ、お姉ちゃんと一緒にお風呂行く?」
「入らないよっ。まったく。何処からお風呂が出てきたの?全然、それじゃあ、ではなかったよ?」
お風呂は夜に入るもの。
せめて、朝だよね。真昼間に入るようなものではない。
「それじゃあ、僕は自室に戻っているから」
学校に置きっぱなしにしていた自分の荷物を魔法で己の手元にまで召喚させる僕はそのまま、お姉ちゃんと別れて自分の部屋に戻っていった。
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