7話

扉の先は森だった。


正確には、石でできた森だが。


このダンジョンの中にいた蛇、鶏モドキ、ヒヨコモドキ、クトゥルフ卵の石像もある。


そして、嫌な予感がしたため近くの石の木の陰に隠れる。その瞬間、周囲をまばゆい光が包まれる。

僕を襲おうとしていた蛇がその光線に当たり、石になって地面に落ち、砕ける。

光が収まったのを確認して光線が飛んできたところを見る。そこには頭が鶏、尻尾が蛇(実際は反対だけど)の巨大な生物。コカトリスがいた。

そのコカトリスが僕に気付き、襲い掛かろうとしたため頭を撃ち、怯んだその瞬間を逃さずに反対の蛇の方も鉤爪で切り裂く。


死体を確認するとヒヨコモドキと鶏モドキと同じように、やはり胴体などは触手で覆われていた。


コイツを目にするまではコカトリスがここの守護者だと思っていた。だが、コイツの魔力は扉の外で感じた魔力より明らかに少なかった。

それに


ダンッダンッ


「「「「「ギシャァァァァァァ!!」」」」」

「「「「「コケェェェェェェェ!!」」」」」


目の前の死体を撃つと周囲から悲鳴が聞こえる。

つまり、ここにコカトリスは複数存在している。


なら、他に守護者がいる。そう考え始めるとふと一つの可能性に気がつく。


コカトリスの眷属として蛇が生まれた。卵はヒヨコへ、そして鶏に進化している。

もし、蛇も進化している個体がいたとしたら?

もし、そいつはコカトリスと同じような能力を持っているとしたら?

なにより、このダンジョンにまつわるモンスターだとしたら?


そう思った瞬間、バンダナで目を隠して視界を消し、バンダナの能力である魔力探知で索敵する。

すると、正面からなにかが飛んでくる気配を感じる。


「チッ!!」


飛んできたそれを回避する。が、そいつの髪の毛・・・が襲いかかってくる。

照明弾で目潰しをして後退する。

なにも石化の呪いを持つモンスターはコカトリスだけではない。

蛇の髪を持ち、目を見たものはその恐ろしさに体を震わせ、その振動で体が固まってまるで石のようになる。

そして、鏡によって倒されてしまう神話上の怪物。その名は


「メドゥーサか。念の為にこのバンダナを装備してて用意しててよかったよ」


目を隠しているからメドゥーサのことは見えない。だが、その手には石の槍を持っており、同じ石のはずの木をいくつも破壊したのは耳で聞こえていた。もともと筋力があるのと魔力で強化しているからか、アレをまともに受けたらさすがに死ぬな。


鉤爪を外してアイテムボックスに戻す。そして銃を2丁取り出す。

その隙を見逃さずに槍での突進をかわし、両手の銃を同時に撃って吹き飛ばす。

反動で腕が脱臼するが魔力で強引に回復させ、消費した魔力をバングルで回復する。


残りの魔力の半分近くを注ぎ込んで撃ち込んだんだ。ダメージが入っていると・・・無事だね。

投げられた槍を空中に飛ぶことで回避し、その先に伸ばしていた蛇を2段ジャンプで回避する。


木の上に着地するが、その瞬間に周囲に火の玉が出現し、一斉に爆発する。

魔力を全身に覆うことで防御するが、目の前に気配を感じ、銃をホルスターにしまって盾を取り出してガードする。

が、持ち堪えることができずに吹き飛ばされる。そこに髪の蛇が襲いかかる。

照明弾を放つがその蛇たちは目を瞑る・・・・ことで回避した。中には目を潰してしまい、動きが鈍くなったものもいるみたいだが。


それを見て、策を思いついた。


蛇達が俺に襲いかかる。が、その瞬間に僕は口を開く。


「『キミたちは、無理やり従わされているんだね』」


その瞬間、蛇達は動きを止める。まるで、僕が言ったことが本当であるかのように。


「『でも安心してよ。キミたちを無理やり操っている怪物は僕が倒してあげる。だから、協力してくれない?』」


その言葉に蛇達は頷いた。これでいい。


「『僕が怪物に突撃する。キミたちは僕に続いて欲しい。それで、あの怪物を倒せる。そして、キミたちは解放される』」


そう言うと、蛇達は大人しくなる。それを確認して、僕はメドゥーサに向けて走り出す。

メドゥーサは髪の蛇達がいうことを聞かなくなったことに戸惑っている。それに向けて僕は口を開く。


「『彼らはアナタを殺そうとしている。心当たりがあるでしょ?』」


そう言うとメドゥーサは考えるそぶりをするとなにかを思いつく。なにか思い当たることがあるようだ。そんな記憶なんてないのに・・・・・・・・・・・・


「『僕が跳んだその瞬間、彼らは僕を攻撃するフリをしてアナタを殺しにかかる。アナタは彼らをすぐに処理しないといけない。たとえば、石化、とかね』」


それを聞いたメドゥーサは頷いた。

これで、勝ちだ。


「いくぞ!!」


僕はその場を上に跳ぶ。その瞬間、髪の蛇達はメドゥーサに突撃し、メドゥーサは蛇達に石化の呪いを掛ける。


が、その呪いの対象は自分の髪の毛である。

蛇達を石化させると、その呪いは範囲を伸ばし、そして自分自身を石化させる。


それに気付くと僕に視線を向ける。助けろと。なんとかしろと。それに対して僕は拳を握り、親指を下に負けながら言う。


「先に地獄に行ってろ。化け物ばーか


その言葉が理解できたのか、または雰囲気で察したのかわからないが、メドゥーサは怒りに震えて僕に突撃してくる。


が、その前に頭が石化し、全身の動きが止まる。

そのまま地面に落下して砕け散った。


神話通り、自分の力で討伐されたな。討伐者が英雄と卑怯者の違いはあるけど。


正直者は馬鹿を見る?違うよ。嘘つきが正直者ばかを見るんだよ。


そのままメドゥーサが飛んできた方向に進むと空中に浮かぶ水色の巨大な水晶。ダンジョンコアがあった。


それを銃で粉砕する。すると、ダンジョンの消滅が始まる。

使い捨ての巻物型の帰還の魔導具を帰還させて僕はダンジョンから脱出する。


魔導具の光が収まると、目の前に黒く濁った鏡があった。そして、その鏡は目の前で砕け散った。


迷宮省の調査がないと断定はできないが、これでこのダンジョンはなくなった。


それを確認すると手を合わせ、形だけだが被害者達に黙祷する。


その後、ミラーハウスの外に出る。スマホを確認するとダンジョンに入ってから2日経っていた。


この日の空はとても晴れていた。

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