2話
「とりあえず1週間お願いします。あ、これ依頼書です」
「確認しました。再びのご利用ありがとうございます。ダンジョンの件、よろしくお願いします」
ホテルのフロントに探索者カードと依頼書を見せる。
ダンジョンが出現した場所の宿泊施設は探索者が優先的に泊まることができる専用の部屋をいくつかキープする義務がある。まあ、使用するには『撮影目的でなく、依頼を受けて来た』という証明が必要になるが。
これはルールではなく暗黙の了解となっているため、使用している探索者がダンジョンに行って配信してもその宿泊施設関係者は知らないフリをする。
が、その宿泊施設内の様子を撮影したら配信していることが判明すると、その瞬間にその探索者はすべての宿泊施設を使用できなくなる。
中にはダンジョン内であっても撮影した瞬間に使用できなくなる場所もある。そういうところの見分け方は簡単で、施設の入り口に貼り紙で『撮影禁止』とあるところはダンジョン内なら知らないフリをするところで、『配信禁止』とあるところはダンジョン内含めてすべて禁止となっている。
ここは後者のところになる。
俺がいるのは『エグチキホテル』。つまり、エグチキパーク内の宿泊施設だ。
本来なら予約しても数年は待たないといけないが、ダンジョンができてしまったことで急なVIPを泊まるための部屋の1つを探索者用の部屋にしているのだ。もちろん、割引で安くはなっているがそれでも並の探索者では1泊するのも難しい値段になっている。
あ、僕は普通に泊まれる。なんなら半年でも。それくらいは稼いでいる。その分年末が大変だけど。
「当ホテルは朝食は大広間でのバイキング形式、昼食と夕食は宿泊者様限定でホテル内のレストラン施設を半額で使用でき、15時までに注文なされば18時にお部屋にコース料理を運ばせていただくことになっております。レストランで夜のひとときを過ごされてもいいですし、ご自身の部屋で夜景を見ながら堪能するのもお勧めしております」
「わかりました」
ダンジョンにかかりきりになるから使用するかは不明だけど。なるべく早く終わらせたいし。
「10時から14時の間は各部屋に清掃の者が訪れて部屋の清掃、シーツの入れ替えなどを行います。その間はパーク内で楽しまれるか食事に行っていただけると助かります」
「はい」
「探索者様ですので取られた日にちを超過することも考慮し、最後にチェックアウトする際にお支払いしていただく形となっております。よろしいですね?」
「助かります。ダンジョンに行って1回帰ったらすでに1週間経っていて部屋が埋まっている。なんてことがあったら困りますからね」
「最後に、当ホテルでは携帯で通話することはできますがダンジョンも含めてすべての配信、撮影などの行為を禁止しております。それが判明した際、相応の対応をさせていただきます。よろしいですね」
「はい。構いません」
「こちら、S-1の部屋の鍵となっております。最上階のお部屋になっております。入口から見てエントランス右側のエレベーターで最上階まで昇り、右手側の部屋になっております」
「ありがとうございます」
カード式の鍵を受け取るとさっそく部屋に向かう。
20階建てのホテルのためけっこう時間はかかったが最上階に到着し、鍵を使って部屋に入る。
内装はここのキャラクター達のイラストが壁の模様となっており、大きめの冷蔵庫にワインセラー、広すぎる浴場とトイレ、そして1人で寝るには大きすぎるキングサイズというベッドがあった。
他にもプロジェクターやキャラクターごとの作品の円盤や本などがあるがそこはいまはどうでもいい。どうせ使わないから。
荷物をロッカー(清掃の人が定期的に来るみたいだからそれ用)の中に入れ、風呂に入る。移動に結構時間がかかったから今日は簡単にシャワーで終わらせた。
その後、コースの注文の時間はとっくに終わっているため、レストランに行って食事した。『エグチキパークのオムライス』というものを食べた。
味自体は普通のオムライスだが、卵のなめらかさと濃厚さ、酸っぱすぎないケチャップ、それと一緒に出される卵スープとフライドチキンも美味しかった。食後にミルクセーキが出た時は少し笑いが出た。
その後、部屋に戻ると明日の準備を整えて眠りについた。
さて、潰すか。
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