イカした仲間を紹介するぜ!
反政府組織『新たな時代』の本拠地。
かつてアメリカ合衆国と呼ばれていた地の西側にそびえ立つ大きな建物は、高級ホテルのような見た目をしながらも、一切の光をまとっていない。騒がしいや浮ついたなどといった言葉の対局の存在であるかのような建物の周りには、人っ子一人いない。それもそのはずだろう。革命軍と呼ばれるこの組織の構成員は、政府に恨みがある者、純粋に世界を変えたい者、そうでなければ、どこにも受け入れてもらえないならず者ばかりだ。周囲にいるのは少しの見張りくらいで、この場所に来るのは加入希望者か、相手の力を分かっていない愚か者くらいだ。
そんな『新たな時代』の本拠地、世間的に『
彼らはこの組織の最高幹部達である。
ふと、一番立派な、それこそ会社なら社長が座るであろう大きな机のところに腰掛け
る中学生くらい少女が口を開く。
「そういえば、ルシファー?聞いてなかったけど、この前の作戦上手くいったの?」
「…………。」
問いかけられた男は沈黙している。その沈黙は無視をしているといった感じではなく、答えるまでもなくわかるだろう。という無言の返答だった。そんな態度を意に介した様子もなく、当然のように感じているのか、少女は口を開く。
「まあ、だろうねえ。ルシファーだもんねえ。……というか、どうするよ。あの人?正直扱いに困……」
後半の言葉は呆れに頭を抱えながら呟いたが、最後まで紡がれることはなかった。バンッという音と共に扉が開かれる。落ち着いた雰囲気は一瞬にして壊された。
「イカした仲間を紹介するぜ!」
「ほら、噂をすれば来た。」
「おっと、かっこいい男で有名なクロノアさんの噂をするのは勝手だが、惚れるなよ。俺には将来を誓った相手がいるんだ……」
現れたのはクロノアである。いつもの笑顔で現れたクロノアに面々はあまりいい顔をしていない。
「ないない。」
「おっと、そいつはどっちの意味だい?惚れないことか?相手がいないことか?」
「どっちもだよどっちも。」
「こいつは手厳しい。」
そう言いながら、快活な笑いを上げるクロノア。会議中の大人の間に割り込んで邪魔をする子どものように現れたクロノアだったが、当の本人はなんの気にもしていない。そのままクロノアは大仰なポーズをとって叫びだす。完全に子供である。
「それじゃあ、改めてイカした仲間を紹介するぜ!」
「改まんなくていいし紹介しなくていいから。」
相変わらず二人しか口を開いていない。他の面子は反応するのが面倒くさいのか、それとも慣れているのか。いや、どっちもか。
「こいつは、ヴェルティクス・ゲネシス。この組織のトップで創設者、ここで一番えらいやつだ。革命軍なんて野蛮な組織のリーダーだが、根は優しくて素直、思いやりがあるともっぱら評判だ。その愛らしい見た目も人気の一つ。最高幹部で最高なのは誰!?アンケートではアンケート開始から3年間不動の1位として有名だ!ちなみに愛称はウィルで僕っ娘だ!」
ビシッと件の少女を指さしながらクロノアは叫ぶ。
「いやあ、それほどでも。」
まんざらでもなさそうに照れる少女の見た目は中学生くらい。長いストレートの金髪にぱっちりとした赤い大きな瞳、体型や背丈からも幼さが目立つ。だが、見た目に反して纏う空気は達人のそれであり、顔も整っていてどこか妖艶な風にも見える。
照れてるウィルを横目にクロノアは続ける。
「ちなみにこんな見た目だが実年齢は50歳超えの立派なババア。」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
絶叫、突如始まった紹介によって精神的ダメージを受けたウィルは涙目になりながら口を開く。
「とういうか、よく聞いたら後半しか褒めてないじゃん!?野蛮ってなに!?崇高な組織なんですけど!というか、何そのアンケート!?聞いたことないんだけど!なに!?僕って組織のマスコット的存在だったの!?みんなトップを甘く見過ぎじゃな
い!?」
大体そんな感じなんだよなあ、とクロノアは思う。まあ、一部の紳士諸君の間では密かに愛でられているのだが……
「まあ気を取り直して、紹介するぜ!」
「取り直さなくていいからその前に謝って!僕の事ババア呼ばわりしたこと謝って!
というか、僕能力で年取らないだけだから!実年齢とか存在しないから!」
イカした仲間の自己紹介はまだまだ続く……
組織解説
組織名 新しい時代
創設者 ヴェルティクス・ゲネシス(ウィル)
概要 政府と同程度の規模を誇る世界組織。構成員は革命を望む者や政府に恨みがある者と行く宛のない者で構成されている。創設者を含める8人の最高幹部を筆頭に幹部、エリート、隊員、下っ端というふうにざっくり分類されている。戦力自体は政府と拮抗しており、スポンサーも多くいる。世界各地に支部が存在するが、最高幹部は基本本拠地にいる。世界政府とは6年前から本格的に敵対しており、五分の戦いが続いている。
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