正義は影の中で輝く

襲いかかる影に応戦しながら、クロノアは笑みを浮かべた。


「『影絵の猟犬Shadow Hound』ねえ。名前通りの能力だ。」


影でできた猟犬を召喚する。といった能力だろう。数は7体。7体を同時に操っているとは考えづらい。そこから見るに、おそらく完全自律型。


思考を巡らせながら猟犬の1体に拳を放つ瞬間にエネルギー弾をぶつける。

シュルルという音とともに猟犬は姿を消す。その瞬間に能力者の男がナイフを突き立ててくる。後ろに引いて距離を取りながら話しかける。


「なかなか、いい能力してんねえ。」

「………。」

「おいおい、しけてんねえ。もっと楽しもうぜ。」


ふむ。煽りを入れてるが乱れる気配はないか……。まあそこは本筋じゃないからいいとして…


再び1体をエネルギーを用いて消す。これで影の数は5体……ではなかった。


もう復活してやがる。6秒くらいか?しかも、この犬……


瞬間、背後から殺気。とっさに振り抜いた裏拳をぶつけるが、猟犬は吹き飛びすらしない。それどころか、腕を取り込むかのように影が蠢き、じわじわ侵食されるかのような鈍痛。すぐにエネルギーを収束させるが、猟犬はばっと距離を取る。

また、殺気。今度は下から。急所を狙うそれをとっさに腕でを間に挟んで庇う。


ザクッ。


「チッ。」


深々と突き刺さるナイフを見て男は忌まわし気に舌打ちをする。すぐさま距離を取り、新しいナイフを取り出す。


刺さったナイフを取り除きながら、クロノアは思考する。

明らかに慣れてる動き。さっきまでの連中とは違う。戦闘に慣れてるし、能力も強力。しかもあの影、物理攻撃を実質無効ときてやがる。お陰でいちいちエネルギーを貯めさせられる。消耗が激しい能力者だったらかなりきついだろう。もとの動きを見ていないからなんとも言えないが、大きく行動が阻害されてる気配はない。長期戦を嫌う雰囲気もないし。おそらく代償はそこまで重くはない。……まあそこは気にしていないが………


ナイフを抜き終わった瞬間。まるで何事もなかったかのように傷が塞がる。

男の眼が驚愕に染まる。当たり前だ。眼の前で少なからず手傷を負わせた相手の傷がもうも早く塞がったら誰だって驚く。しかし、それも一瞬の事。男は影の犬と共にクロノアに畳み掛ける。それは、傷を塞がれてしまうなら、再生が追いつかないほどの手数で攻めるという単純な思考の末の行動だったが、同時に効果的でもあった。……


相手がクロノアでなければ……


「お遊びは終わりだ。」


影に囲まれ、クロノアの姿が見え隠れした瞬間。クロノアは全身からエネルギーを放出する。

溜め無しノータイムで繰り出した攻撃に、当然のように影は消えていく。

まるで、強すぎる光に消し去られてしまうかのように。



              



終わった。実にあっけない終幕だったとクロノアは思う。

ノータイムで出された攻撃に男は反応さえもできずに死んだ。それはそうだ。本来、位階ランクが一つ違えば話しにならない。それでも彼はかなりの手練れだった。正直、相手によってはS級でも殺せただろうし、実際にその経験もあるのだろう。敗因は相手が俺だったことと、能力が分かりやすすぎたことだろう。


「戻るか。」


ぼんやりとした思考の中で、クロノアはポツリと呟く。

瞬間、クロノアの姿がふっと消える。まるで何もなかったかのように、当然、跡形もなく消えたのだ。


草原の草がゆうゆうと揺れている。風と草がなびく音だけの残った静かな草原は、あまりにものどかで優しい空気に満ちていた。地面に空いたいくつものクレーターだけがここで何があったのかを物語っていた。




スペー✕解◯

スペース名 ?????

能力者名 クロ△◆・ノ✕◯ア

能力(推定) 身体能力の向上? エネルギー操作? 負傷の再生? 瞬間移動?

位階ランク S級

代償 不明

特徴 不明

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