第22話 次のプログラム
「もう1時間経った?早いね〜。時間の問題で選べなかった切り抜き動画も沢山あるから、みんなも見てくれると嬉しいな。それじゃ次!現地のみんな限定!ジャンケン大会するよー!」
お次は現地勢限定の豪華商品をかけたジャンケン大会だ。
「ルールを説明するね!私とみんなでジャンケンして、最後の1人になるまでジャンケンするの!最後まで残った人には、帰る時に豪華商品が貰えるよ!それはこちら!」
空中投影モニターにそれは大きく表示される。
「なんと!私の直筆サイン入りグッズ3点セット!」
「「おおおおおお!」」
良かった!喜んでくれてる……!
歓声をあげるみんなに内心ホッと胸を撫で下ろす。だって私のサインだよ?貰っても嬉しいかな?……とかずっと疑問に思ってた。それでも盛り上がってくれてるのは嬉しい。
こんなに喜んでくれるなら数増やせば良かったかも……なんならDXのリポストキャンペーンとかなら現地来れない人もチャンスあるしね。
反省はそこそこにし、みんなに向き直る。
「それじゃみんな立って!良く見えるように手上げてね!あいこと負けの人は座っていってね〜!配信のみんなも、商品は貰えないけどジャンケン楽しんでいってくれると嬉しいな。それじゃあ始めるよ!最初はグー!ジャンケン!」
掛け声と共に手を出した。最初の手はパーだ。
「パー!パーだよ!チョキの人だけ残って座っていってね!」
みんなは続々と座っていく。それでもまだ3分の2は残っている。割と手強い……!
「いっぱい残ってる!まだまだいくよ!最初はグー!ジャンケン!チョキ!」
次の手はさっき負けたチョキだ。
「チョキだよ〜!あいこや負けた人は残念だけど座っていってね!」
まだあんまり減ってない!みんなジャンケン強い……!
同じようにジャンケンを続け、6回目でやっと10人程に絞られる。
「そろそろかな?じゃあここからは本格的に心理戦!次パー出すよ!」
「「ええええぇ!?」」
〈まさかの!?〉
〈ぶっ込んできたァ!〉
これにはみんなも驚愕している。フフン♪私だってたまにはみんなを振り回すもん♪
「ホントにパー出すかな〜?どうかな〜?それじゃ行くよ!最初はグー!ジャンケン!」
繰り出した手は……!
「グー!どうだ!?」
これにより一気に4人まで減った。
「おお〜!みんな混乱した?もう次で決まっちゃうんじゃないかな?じゃあ8回目!次は今度こそパー出すから!行くよー!」
予告から出した手は……。
「パー!約束通り出したよ!」
流石に2回も騙すのは……という良心が働き、正々堂々?パーを出した。これにより遂に決着する。
「残ってるのは……あっ!法被着た人だー!すごーい!サイン入りグッズ見事ゲットだね!おめでとう!みんな拍手〜!」
最後まで立っていた法被の人を祝して盛大な拍手が送られる。法被の人も照れながらも周りに頭を下げる。
法被作る程私を推してくれてるし、物腰も丁寧でいい人だ。勿論、他のみんなもとっても素敵な人達。
ああ、ファンって最高だ……!
面と向かって会う事でその実感がより胸に刻まれる。
「以上!ジャンケン大会でした!次はゲストが登場するよ!どうぞ!」
私がそう振ると、舞台袖から黒崎さんが現れる。それと同時に歓声が上がる。
私がバズったきっかけの人だ。私のファンで嫌いな人なんていないだろう。
「どうも、黒崎勇悟です。ゆい100万人おめでとう。そして今日はゲストに呼んでくれてありがとな」
「いえいえ!むしろ、私の方がお願いしましたし……でも快く応じてくれてありがとうございます!」
もう何度目かの感謝を伝える。その後ろでスタッフさんが巻藁を準備してくれており、それが終わった事がイヤモニから伝えられる。
「それじゃ、続いてはゲストの黒崎さんによる演武です!」
「簡単に言えば、みんなに天刃流の剣を間近で見て貰うぜ。勿論、生でだ」
そう言って黒崎さんは指輪を外し魔力体から生身になる。
「「おおおおお!」」
〈生披露!?〉
〈いいなー!〉
〈生の剣術!〉
現地もコメントも盛り上がってる!熱い!
「そう!生身で生配信!黒崎さんの剣がしっかり見れるよ!お願いします!」
「任せろ!」
そうして私は端に下がり黒崎さんを見守る体勢になる。
「さて、じゃあ軽く天刃流について教えるな。古流剣術である天刃流は戦国から代々続く一門に伝えられる剣術だ」
〈おおー〉
〈歴史ある剣いいね〉
〈ずっと気になってたから助かる!〉
「その真髄は想いを心に込める……想心の剣という事。言ってしまえば、太刀筋に付いてる天に関する情景を思い浮かべながら剣を振るうんだ。そうする事で、その大いなる自然のような力強い剣になる……って教えだな」
黒崎さんが研鑽してきた剣。それが詳しく知れて嬉しい。それはみんなも同じで、興味深げに頷いたりしている。
「言うは易し。それじゃあ実践して見せよう。先ずは居合『
黒崎さんはそう言って集中する。文字通り真剣だ。少し間を起き、柄に指かけ……今、神速の刃が振り抜かれる。
それは瞬く間に巻藁を斜めに真っ二つにし、続く縦の二の太刀で宙に浮いた方も、床に立つ方もまとめて切り裂いてしまった。
4つに裂かれた巻藁が地面に落ちる。一息置いて大きな歓声が上がる。
「み、見えたみんな!?生身でこれだよ!?」
〈かっけぇえええ!〉
〈早すぎんだろ……!〉
〈魔力体でもないのにこれはヤバイ!〉
配信のコメントの方も大絶賛だ。リハーサルで何回か見たけど、やっぱり黒崎さんの剣は速すぎる……!
「いやぁ照れるな。まだまだ行くぜ」
そうして次の巻藁へ向かう。今度は抜いたまま。中段に構えた。
「次は『叢雨』。袈裟斬りだ」
右上から右下にかけての斬撃。それは激しく振る雨の如く鋭い一撃だ。
そこから3つ程剣を振るった後、最後は少し趣向を変える。スタッフが2人係で持ってきたのは、目の前に立つと人が余裕で隠れてしまう太さの巻藁だった。
「五畳巻藁、今までのを5枚分巻いたものだ。だいたい人の胴体に相当する。それを2つ。切り裂いて見せよう」
「「おおー!?」」
〈ほほう?〉
〈ふっと!〉
〈生身でいけるんか?〉
これには流石にみんなも疑問に思っている。だが、私には彼がそれをやってのけるという信頼があった。
「行くぜ」
皆が見守る中、刀を構える黒崎さん。
「天刃流『断雲』」
左上から右下にかけて振り下ろされる左袈裟斬り。それは見事、2つの五畳巻藁を真っ二つにしてしまった。勿論神速も健在。瞬きしよう物なら見逃していたであろう。
「「うおおおおお!」」
〈やったああああ!?〉
〈生身でも最強か!?〉
〈さす黒!〉
「凄い……!流石黒崎さんです!」
「ありがとな。これで俺の演武は終わりだ!みんなも見てくれてありがとう!まだまだゆいのファンミーティング盛り上がっていけよ!」
黒崎さんの言葉にまた激しく声を轟かせるみんな。黒崎さん盛り上げ上手すぎる……!
「素晴らしいパフォーマンスをありがとうございました!次はいよいよ最後のプログラム!ミニライブだよ!みんな、最後まで着いてきてね!」
さあ、また私が盛り上げる番だ!
声を張り上げ、己にも気合いを入れ直すのであった。
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