第21話 ファンミーティング当日
遂に本番当日……。今日まで色んな事を頑張ってきた。
先ずはファンミの告知。
「なんと!ヒナちゃん監修!100万人記念ファンミーティング開催決定!」
「しかもミニライブもあるよ〜!現地は抽選だけど、配信チケットもあるから楽しんじゃおう!」
「ゲストにヒナちゃんと黒崎さんも出演するので、気になった方は是非、チケット買ってください!」
「グッズもあるよ〜!あたしがデザインしたイラストがあしらわれたペンライト、Tシャツ、タオル!ゆいちゃんのファーストファンミーティングを3種の神器を手に盛り上がろう!」
ヒナちゃんと私のチャンネルでコラボする事で30万人の前で大々的に発表、宣伝した。
そしてレッスン。半年間、週4で励んできた。もちろんダンジョン配信も週4日欠かさず、最初と最後には宣伝を忘れず行った。
その合間でグッズの発注や監修、管理などを行った。これはヒナちゃんが主立ってやってくれたからだいぶ楽を出来た……感謝しかない。
そうした日々を送り、遂に本番当日!
「き、緊張する……」
既にファンの入場が始まっており、当日物販も賑わっている。その様子をカメラ越しに見てる私。まさか満員になるとは思わなかった……。
配信の方も有料にも関わらず既に10万人待機している。ゲストのヒナちゃんや黒崎さんがいるとはいえホントに有料配信だよ?しかも切り抜き動画鑑賞ぐらいしかダンジョン要素無いのに。
まだ信じられない……。
そんな中、楽屋の扉がノックされた。返事をすると今日のゲストのヒナちゃんと黒崎さんが入ってきた。
「ゆいちゃん!緊張してる〜?」
「そ、そりゃ緊張するよぉ〜!」
「ハハッ!まあそうだろうな」
2人は緊張って言葉の意味を知らないの!?平静過ぎない!?
相変わらず元気なヒナちゃんと落ち着いた黒崎さん。
いやまあ今日は私が主役ですけどね?ゲストとはいえそこまで落ち着いてるのはびっくりだ。ヒナちゃんはライブ、黒崎さんは演武でくぐった修羅場が私とは違うんだろうなぁ〜。
「リハも滞りなかったし、大丈夫だろ」
「そ、そうですけど……」
「みんなチケットやグッズ買ったり、ゆいちゃんに会いに来てくれたんだよ?なら、笑顔作らなきゃ!ほーら!」
そう言ってヒナちゃんは私の頬を両手の人差し指で上に上げる。
「こ、こう?」
「うん、バッチリ!」
ヒナちゃんが指を離しても口角はそのままだ。素敵なおまじないだ。そうしていると時間になり、舞台袖に向かう。
「俺らは後からだから、先ずはゆいの番だ。応援してるぜ」
「頑張ってねゆいちゃん!」
「うん!頑張る!」
こうして2人に背中を押されて歩き出す。オープニングムービーが流れ、それに合わせてみんなが手を叩く。
落ち着け私。今この瞬間は私が主役。だから……ヒナちゃんみたいに可愛くてカッコイイ姿に……私もなるんだ!
やがてカウントダウンが始まる。10から始まり、それに合わせてみんなも数字を叫ぶ。そして……私が舞台袖から現れる。
「み、みんな〜!こんゆいゆい〜!」
「「こんゆいゆい〜!」」
〈こんゆいゆいー!〉
観客も、配信のコメントも一体となって私との挨拶を交わす。高速で流れるコメント欄、目の前で黄色と青色に光輝くペンライト、それらが私の目に飛び込んで来て……心がどうしようもなく昂った。
「今日はこの私、ダンジョン配信者『ゆい』の登録者100万人記念ファンミーティングに来てくれてありがとう!今日は切り抜き同時視聴に、豪華商品をかけたゲーム、そしてミニライブもあるから、みんなで盛り上がって行こうね!」
「「いえええええい!」」
〈盛り上がってこう!〉
〈いええええい!〉
〈ゆいちゃん最高ー!〉
掴みは上々!いつもより声も高いけど、このままテンションで行こう!
「いやぁ……本当に来てくれたんだね!奥の方まで見えてるよー!」
私の声に会場のみんなが歓声を上げる。しかもその中には特注の法被や『ゆいちゃんLove』と書かれた2対のうちわまで持ってる人がいる。
「グッズとか、オリジナルの法被とかうちわも凄い!嬉しい……!えと、先ずはちょっとしたコール&レスポンスしたい!付き合ってくれる?」
歓声とペンライトが振られる。反応が分かりやすく帰ってくるのいいなぁ……。
「じゃあ行くよ?ゆいの事好きー!?」
「「好きいいいいぃ!」」
〈好きだああああ!〉
〈ゆいちゃん大好きー!〉
〈当たり前だああああ!〉
「ほんと!?ありがとー!」
たくさんの好きが伝えられて私の胸はどうしようもなく高鳴る。自然と笑顔が溢れる。ここに来てくれた時点で分かってたけど、改めて言葉にされるとグッと来る……!
「えと、次はウェーブしたい!みんなから見て右から左に走るから、私が通る時に手上げて、通り過ぎたら下げていってね!分かった?」
またみんなが声で了承する。
「配信のみんなはスクショとか目に焼き付けてね!行くよー?」
ステージの上を駆け抜けていく。それに合わせてみんなが手を上げ、そして下げる。そうする事で見事なまでの波を表現してみせた。
「みんな上手!ありがとう!それじゃ、みんなが投稿してくれて、私が厳選した私の切り抜き動画同時視聴!やってくよー!」
こうして最初のプログラムの切り抜き同時視聴が始まった。
「いやぁ〜緊張するなぁ〜。でも、みんなで見れるの嬉しいよ。先ずは知ってる人が多いこれ!『お手柄!?黒衣の剣士が刀1本でボスから少女を救う!』」
これは初めて私がバズった動画だ。最早懐かしいまである。でも、これが全ての始まりだったんだ。
絶対絶命のところで抱えられた時の温もり、不敵に笑う顔、神業で攻撃を避け、トロールを真っ二つにした姿……それらを何度でも思い返せる。
『黒崎勇悟さん……か。ちょっと……か、カッコよかったかも……』
そんでもって、私の配信切り忘れた事も。
「「フゥ〜〜〜!」」
一斉にみんなから声があがる。
「ああああ!恥ずかしい!これ何度見ても恥ずかしいよぉ!」
私が身悶えする様子でみんなは笑う。恥ずかしいけど、みんなが楽しいならこれも立派な思い出だ。
そんなこんなでこの半年間の様々な切り抜きを見て盛り上がるのであった。
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