第20話 記念ファンミーティングの準備
ゲストに悩んでいた私。だって今までソロで活動してきたし、その前も一般人だったからコネクションもない。そう、交友関係が広い訳ではないのだ。
でも、あの人なら絶対引き受けてくれる。
「黒崎さんなら……ゲスト、引き受けてくれると思います!」
「おお!確かに話題性抜群!……って、黒崎さんって歌とか得意なの?」
「……聞いてみます」
〈黒崎さん、歌って得意ですか?ダンスとかも〉
〈悪い、やった事ないな〉
「初心者らしいです……」
「ありゃ〜」
流石に黒崎さんでも経験ない事は難しいよね……。
〈何かあるのか?内容によるけど、他の事なら力になれるかもしれないし教えて欲しい〉
黒崎さん……優しいなぁ。言うだけ言ってみよう。
〈実は、配信チャンネルの登録者100万人を祝してイベントをするんです。それで、ちょっとしたライブで歌ったりするのでゲストを探してたんです。今色々も相談してるヒナちゃんも来てくれます〉
〈なるほど。それってライブするだけなのか?〉
〈あ、いえ……そうではなくて、その前にジャンケン大会とか1時間ほど配信の切り抜き動画をみんなと見たりもします〉
〈なるほど……切り抜き動画ってどういうのだ?〉
あ、切り抜き動画もあんまり知らないかな?
〈ダンジョン配信って長時間になりがちじゃないですか。だから名場面とか、面白かった所を視聴者が切り抜いて見やすい動画を作るんです。それが話題になると私自身の所にもいっぱい人が来てくれたりしますから〉
〈なるほど。どういう所が見られてるんだ?〉
どういう所か……話題になってるのは私の配信切り忘れ……いや、これはめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……!
流石に黒崎さん本人へカッコよかったって呟いてる所とは言えず、他の切り抜きを例に出す。
〈私と視聴者のコントみたいなやり取りとか、黒崎さんがカッコよく敵を倒したシーンとかですかね〉
〈ふむふむ。つまり、視聴者が見て面白い場面がいいんだな?〉
〈そうですね〉
ん?でも切り抜き動画とゲストってどう結びつくんだろう?まさか動画編集できたり……?
その疑問は直ぐに答えが分かる事になった。
〈ゲストで出るなら、演武ならやれるぞ〉
〈演武、ですか?〉
〈剣術のパフォーマンスだよ。剣の型を見せたり、巻藁や畳表を使って試し斬りしたりするんだ。これなら切り抜き楽しんでる人も楽しめると思うぞ〉
これは……確かにいい!
「ヒナちゃん見てみて!」
「なになに?おおー!黒崎さんの剣術を見せるんだね!戦闘中は激しくてよく見えなかったりするし、ハンターじゃない人も生で見れるのは嬉しいと思うよ!」
ヒナちゃんも絶賛だ!黒崎さんのアイデアすごい!
〈ヒナちゃんもいい考えって言ってます!お願いしていいですか?〉
〈ああ、詳しい日程とか分かったら教えてくれ〉
〈了解です!〉
こうしてゲスト2人が決まった。どちらも話題性抜群!
「そうと決まればスケジュールだね。切り抜き同時視聴1時間、ジャンケン大会15分、その後の演武どれくらいかかるか分からないけど30分にしとこう。そして最後はミニライブ30分って感じかな?」
「うん、それで私は大丈夫!ヒナちゃんが言うなら間違いないと思うよ」
「めっちゃ信頼してくれてるじゃ〜ん♪ま、経験者として手は抜かないから、ヒナちゃんに任せなさい!」
本当に頼りになるなぁ……。
日時や場所、当日の大まかな流れを黒崎さんにも共有しておいた。これで一旦できる事はしたかな?
「それじゃある程度固まったね。じゃあ次に行こっか」
「まだどこか行くの?」
「うん!着いてきて?」
私は疑問を浮かべながらもヒナちゃんについて行くのだった。
次にやってきたのは都内のレンタルスタジオ。初めて来た私は緊張で心臓が高鳴るのを感じる。
「普段あたしがレッスンに使ってるとこだよ♪料金もお得だし、アイドルちゃんも来たりするよ〜」
「そうなんだね……うぅ、緊張する……」
「あはは!可愛いなぁ〜♪でも今日は2人っきりだから大丈夫!早速着替えてレッスンしよっか?」
私はヒナちゃんが持ってきたジャージに着替える。ヒナちゃんもTシャツとハーフパンツの動きやすいスタイルになっていた。
いいなぁ……私もお揃いの買おっと。
「じゃあまず実力が知りたいな〜。先ずは歌ね!とりあえずスピーカーにスマホ繋げて、なんでもいいから好きな曲のインスト流して歌ってみて!」
「はい!」
とりあえず今流行ってる好きな曲を歌ってみた。人前で……しかもヒナちゃんの前で歌うのは緊張したけど、何とか最後まで歌いきったぞ……!
「ど、どうかな?」
「うんうん。所々音外してたけど、難しい曲だから十分上手いよ!」
「あ、ありがとう!」
歌は中々好感触!普段から休みにカラオケ行ってて良かった!
「じゃあ次はダンスね!とりあえずあたしが1回お手本見せるから真似してみて?」
「はい!」
ヒナちゃんが8までカウントしながらステップを踏んでいく。
「はい!真似して?行くよ〜?1、2、3、4」
「5、6、7、8!」
何とか真似できた!
「いいねいいね!次、真似してね〜」
このように、同じ流れで幾つかステップを踏み、段々増える身振り手振りも真似していった。
「OK!うん、ダンスも中々だね」
「やった♪」
ガッツポーズをする私。しかしレッスンは始まったばかりだ。
「じゃあ、歌とダンス一緒にやってくよ〜」
「え?」
「曲は私のオリ曲だよ!」
「あっ!これって『プリンセス☆ナイト☆フィーバー』!?」
「そう!ファンだから知ってるよね?」
知ってるも何も、私がヒナちゃんのオリ曲で1番大好きな曲!
「ダンスも簡単な組み合わせが多いし、これを歌って踊れるようになったら十分合格あげられるよ!良ければ本番でも歌ってね!」
「いいの!?が、がんばる……!」
俄然やる気出てきたー!やるぞー!
「じゃあ『はい!』って言ったら真似してね!」
「はい!」
大好きな人の大好きな曲へと挑む私。
しかし、やる気とは裏腹に……その結果は宜しくなかった。
ここまで荒はありつつも順調にやっていた私だったが、歌とダンスが一緒になるとこんなにも難しいなんて……!結果としてボロボロになってしまった。
「うぅ……失敗しちゃった……」
「あはは、難しいよね?簡単に見えても特殊技能だから出来なくても仕方ないよ〜」
特殊技能というのも納得の難易度だ……。分かってたと思ってた。けどヒナちゃんは想像以上に大変な事をしてたんだなぁ……。
「でもまだ半年あるよ!後で練習用のミラーのダンス動画送るね。1人でも練習できるように。私が空いた時はしっかり見るし、何時でも相談に乗るから安心して!」
「うん、ありがとう!絶対覚えて見せる!」
「その意気やよし!じゃあ今日は時間いっぱい練習あるのみ!」
こうして私はレッスンに励むのであった。
その日の夜、1回行った事があるヒナちゃんのファンミのグッズを眺め、その時の事を思い返していた。
ヒナちゃんは歌って踊れる姫騎士なのでライブをしたり、みんなでできるちょっとしたゲームをしたり、空中投影スクリーンに切り抜きを流して一緒に笑いあったりしていた。
そしてライブも圧巻。有名な曲のカバーにサプライズでオリ曲を歌ったりして……最高だった。
「やっぱりヒナちゃんは凄い……!私もヒナちゃんを見習って頑張ろう!そして絶対に成功させよう!」
そう強く想い、家でも練習に励む私であった。
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