第18話 3人の力合わせて
黒崎さん、ヒナちゃん、そして私はアイスダンジョンの最奥にてボスであるアイスタイタンと交戦を始めた。私が後衛として2人の前衛をサポートする。
相手の攻撃を凌ぎ、2人の攻撃で魔力を削る。しかし、そこからアイスタイタンの行動が変わる。
「グオオオオッ!」
アイスタイタンが両手を振ると、その指が射出された。
「おっと!」
「ひぃ〜!」
「わあっ!」
前衛2人はステップで躱し、私は距離があったのもあって余裕を持って避けられた。
しかし私達の図体程ある氷塊が勢いよく降り注ぐのだ。当たればかなりダメージを受けるだろう。そして指に冷気が集まり再生した。
「また来るぞ!」
黒崎さんの声の直後、また指が放たれる。何とか躱したが、指は再生する。
もしかして無限にやってくる!?
「次撃たれた後にあたしらが懐に飛び込む!ゆいちゃん援護よろしく!」
「は、はい!」
三度指という氷塊を発射するアイスタイタン。それを躱し、黒崎さんとヒナちゃんは駆ける。私も何とか回避し、杖を構えた。
「『猟犬の魔弾』!」
3体の猟犬を放つと、2人を追い越してアイスタイタンに喰らいつく。爆発により指の再生が止まる。
「『マナバレット』&『ブロッサムスラッシュ』!」
マナバレットを角度を付けて周囲にばら撒き、薔薇の舞う一撃と共に放たれ巨人を大きく削る。
スキルの同時発動……!1個当てるのにも集中力が必要なのに……やっぱりヒナちゃんはすごい!
そこに黒崎さんも続く。
「っ!」
しかし、刃は氷によって阻まれ、激しい音を立てて止まった。それに驚愕しつつも、巨人の振り払おうとした拳を回避し後退した。
それを私のマナバレットで援護するが、収束したそれも装甲に弾かれてしまった。
「氷を更に纏ったか……!」
「ホントだね……これは厄介!」
アイスタイタンはトゲトゲした氷の装甲を追加したのだ。
「グオオオオ!」
更に指には鋭い爪が生える。大きく振りかぶり私達に襲いかかる。リーチが伸びた事で大きく回避を強いられる。その為、接近戦の2人は反撃しようとしてもその隙が無い。
〈これキツイな〉
〈がんばれー!〉
〈ゆいちゃんならできる!〉
そう、2人が攻めにくいなら私ががんばる時!
「『マナバレット』!」
私は少し前に出てマナバレットを収束して放つ。だがその弾速は遅い。射程も弾速も削った威力特化。そして。
「『猟犬の魔弾』!」
続けて猟犬が放たれる。猟犬は先に撃ったマナバレットに追いつき、2つの弾丸は同時にアイスタイタンの胸を撃った。
〈ヒナちゃんと同じ同時発動!?〉
〈マジか!〉
〈やるやん〉
「装甲が破れたよ!」
「今だ!」
好機と見て2人が一斉に襲いかかる。しかし……。
「オオオオッ!」
残っていた四肢の装甲が爆ぜ、榴弾のように全方位に破片を放つ。2人はバリアを貼ったが破られダメージを受けた。
「ぐぅ!」
「いっつぅ……!」
2人の脇腹や肩口が削られ、青い魔力が漏れ出す。
どうしよう!?リキャストタイムが……!
援護しようにも2つの弾丸は再使用不可時間中である。
「ブオオオオッ!」
口から突風のような冷気を放ち2人を襲うアイスタイタン。2人は何とかバリアで身を守る。しかし、巨人は直ぐに爪を放った。
「『バリア』!」
「っ!」
私のバリア2枚が黒崎さんのバリアと重なり爪を塞いだ。バリアは一定距離なら使用者から離れた場所にも出せる。
マナバレットの威力を高める為接近した事でバリアの範囲にも入ったのだ。
〈上手い!〉
〈おおー!〉
〈ゆいちゃんすご!〉
アイスタイタンは爪の再生に入る。再び好機が訪れる。生憎、私はまだ全てのリキャストタイムが終わっていない。
「ありがとなゆい。お陰でこいつを出せる」
黒崎さんは黒い大刀……『黒獄』を抜刀し、顔の横で構えた。その刃に黒い魔力が集まっていく。それが黒い閃光となった時、刃は振り下ろされた。
「『
放たれた黒き斬撃は、驚く事にアイスタイタンの左半身を消し飛ばしてしまった。
〈出たぁ!〉
〈威力半端ない!〉
〈勝ったなガハハ!〉
倒れ伏すアイスタイタン。
「やった!」
そう思った直後、アイスタイタンの口に冷気が集まり、鋭いつららになり放たれた。苦し紛れの最後っ屁だ。黒崎さんは刃を完全に振り下ろした状態で反応が遅れる。
間に合え……!
「『マナバレット』!」
私の杖から魔力の弾丸が放たれ、つららとぶつかり何とか相殺できた。
「これで終わり!『ブロッサムスラッシュ』!」
そして、アイスタイタンに飛び込んだヒナちゃんがその口を頭ごと切り裂いた。
「グオ、オオオ……!」
それが本当にトドメとなった。アイスタイタンは倒れ付し、その身は完全に停止、魔力の粒子となって消えていった。
〈おおおおお!〉
〈ナイスー!〉
〈倒したー!〉
「や、やったー!」
流れるコメントと共に喜びの声を上げる。
「やったね!ゆいちゃん!黒崎さん!」
「ああ、2人共お疲れ様」
ヒナちゃんと黒崎さんも集まり、互いを労い合う。
〈¥50000 アイスタイタン撃破おめでとう!〉
〈¥10000 勝つって信じてたよ!〉
〈¥7000 連携上手すぎ!最高のパーティだ!〉
「あっ!2人共見てみて〜!お祝いストチャいっぱいだよ!ありがと〜!」
「みんなも応援ありがと……!勝ったよ!」
「おう、ありがとな」
沢山の色とりどりのお祝いに目を輝かせる。
みんなで喜びを分かち合えるのってやっぱり最高だ……!
「おっと!ドロップアイテム取らなきゃね!」
「じゃあ最後撃破したヒナに頼むか」
「そうですね」
「いいの?じゃあ後で分けようね!」
そう言ってヒナちゃんはアイテムボックスを起動し、アイテムを回収する。水晶の数だけ見ても20個はくだらない。
中身も気になる!レアなのあるかな?
「そんじゃ、帰ろっか!」
「はい!」
「おう!」
期待を膨らませながら帰りの転送陣に入り、ダンジョンの入口へと帰還するのだった。
「おっと、『癒しの光』っと」
ヒナちゃんがそう呟くと、青く輝く傷口が少し再生していく。
「配信してるし、ちょっと見た目は整えたいからね。2人も後でしてあげる!」
「ありがとな」
「ありがとうございます。プロ意識すごい……!」
「そう?ありがと♪でもボロボロなのも頑張ったって分かるし捨てがたいよね〜」
確かに……傷は勲章でもあるかもしれない。魔力体なら比較的絵面も優しいし。
「まあ腕曲がってたりするとちょっと怖いかもな」
「それはそう!」
「ですね……」
断面は魔力の光で隠せても折れてたりするのは仕方が無い。
まあ無事に終わってなによりだ。
そして最後のイベント。アイテム鑑定だ。
一通りアイテムを見てもらった結果、お金が3人で分けてそれぞれ15万円分。そしてスキルストーンが3つ手に入った。
「『マナブラスト』は『マナバレット』の上位互換だね。てことでゆいちゃんにあげる!」
「いいんですか?ヒナちゃんも『マナバレット』使うし役立つと思うけど……」
「いいのいいの!あたしはこの合成アイテム貰おっかな?」
『氷晶の欠片』と呼ばれる氷の破片だ。
「実はこれが目当てだったの。作りたいスキルストーンに必要でさ〜」
「そうだったのか」
「後の2つ……『覚醒』のスキルストーンも2人にあげる!」
『覚醒』……ダメージを受ける、与えるごとにその魔力の一部を蓄積し、限界まで溜まると使用可能になるスキルのようだ。
「これもきっと2人を助けてくれるよ!」
「ありがとうヒナちゃん」
「面白そうなスキルだな」
そう言えば黒崎さんは今日初めてスキル使っていた。
「どうでした?スキルの使い心地は」
「それあたしも聞きたい!『
「そうだな。『魔刃衝』は強いけど使った時のこっちの反動にも慣れなきゃって思ったな。『バリア』は使いやすいし、ゆいみたいにちょっと離れた人の援護も出来て良さそうだ」
初めてだったのに十分使いこなしてたの凄かったな……。私なんて初めてのマナバレットは変な方向に飛んでったし。
「2人共色々教えてくれてありがとな」
「お役に立てて良かったです……」
「どういたしまして♪そんじゃ締めますか!」
そうだ、配信してたんだった。コラボだとついこっちで話しすぎちゃう。まだまだ配信者としては未熟だ……。
そう考えるとやっぱりヒナちゃんは戦闘も配信も凄い。いつか、数字だけじゃなくて私自身の技術も追いつきたい。そう思うのであった。
「それじゃ最後はおつヒナゆい黒で行くよー!」
「えっ!?は、はい!」
「おう!」
黒崎さん飲み込みはや!でもシンプルでいい挨拶!
「せーのっ!」
「「「おつヒナゆい黒〜!」」」
〈おつヒナゆい黒〜!〉
〈おつヒナゆいクロ!〉
〈おつヒナゆい黒!楽しかったよ〜!〉
こうして10万人の視聴者に見られながらの配信は無事終わり、DXなどでも大反響なのであった。
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