第16話 氷の迷宮

 憧れの配信者ヒナちゃんと急遽コラボする事になり、ヒナちゃんと黒崎さん……そして私の3人はパーティとなりダンジョンへ挑むのであった。


 今回はアイスダンジョン。氷で出来た迷宮であり、冷気が満ちている。また、床が滑りやすい為より一層足元に注意が必要だ。


 それにしても……。


「いや〜寒いね〜!」

「そうだな。ゆいは大丈夫か?」

「だ、大丈夫です!」

「そっか。ヒナも何時でも休憩するからその時は言ってくれ」

「はーい!気遣いありがとう!」


 推し同士が会話してる!良すぎる……!


 ダンジョンに来るより前から憧れてた姫騎士ヒナちゃん。ダンジョンに来てから助けて貰って一目惚れしちゃった黒崎さん。


 私の中での二大推しとも言える2人が目の前で会話してるんだよ?最高すぎでしょ!後ろから壁のように見守れて……後衛で良かった!


〈ゆいちゃん楽しそうだね〉

〈口元ニヤけてて草〉


「べ、別にニヤけてないんですけど……!?」

「ゆいちゃん可愛い〜♪いつもこんな感じなの?」

「今日はいつもより浮き足立ってるかな?ヒナがいるからかも」

「そっか!あたしもゆいちゃんとコラボ出来て嬉しいよ!」

「あ、ありがとうございます……!私もすっごく嬉しいです!」


 そんなやり取りをしながら先を行く私達。しかしここはダンジョン。何時だって侵入者を狙う者が居るものだ。


 やがて通路が終わり扉が現れる。私達はそのドアを開けると雪がカーペットのように積もった広間に出た。

 

「っ!見てあれ!」

「え?ゆ、雪だるま!?」

「ホントだな……しかも沢山」


 ヒナちゃんが指差した場所には雪だるまが幾つも佇んで居た。


「可愛い〜!右端の子ちっちゃい!」

「ニッコリ顔の子も居ます……!可愛い……!」


〈なんだこの空間!?〉

〈雪もいっぱいだね〉

〈左端のデカすぎんだろ……〉


 ヒナちゃんに私、そして視聴者は表情豊かで大きさもそれぞれの雪だるまに目を奪われる。


「雪もいっぱい!踏む感触好きなんだよね〜♪」

「分かります……でも、なんで雪だるまがこんなに?」

「モンスターが作ったとかか?」

「そうだとしたらちょっと微笑ましいかも……」


 頭の中でデフォルメしたモンスター達が雪だるまを作る様を想像する。そんな事を言って居ると……。


「っ!雪が……吸い込まれてる!?」


 地面に敷かれた雪が雪だるまの元に集まって行く。そしてそれぞれの雪だるまは……マッチョになった。


「ええええっ!?」

「なにあれ〜!?可愛く……いや、可愛い……やっぱ可愛くなーい!」

「あれ自体がモンスターかよ!」


 驚愕するヒナちゃんと私は黒崎さんの言葉にハッとする。マッチョ雪だるまを注視すると、魔力体のライブラリーアイがその詳細を見抜く。


 スノウゴーレムLv18

 スノウゴーレムLv12

 スノウゴーレムLv10

 スノウゴーレムLv15

 スノウゴーレムLv19


「やるぞ!ゆい!ヒナ!」

「りょ!」

「はい!」


 黒崎さんは刀を抜き、同じようにヒナちゃんは剣を抜き、私は下がって杖を構える。ダンジョンで初めての戦闘が始まる。


「俺はニッコリ顔を攻撃する!ゆいは他を怯ませてくれ!」

「あたしは人参鼻ね!」

「分かりました!」


 駆け出していく2人の後ろで私は指示通りに狙いを付ける。魔力を杖に集め、3つに分割、それぞれの目標に放つ。


「『マナバレット』!」


 スノウゴーレム達に全弾着弾、怯ませる。その隙に前衛2人はそれぞれの目標へと接近した。


「はあっ!」


 黒崎さんの高速の斬撃がスノウゴーレムを縦に切り裂く。


「ヒナちゃんのブライダルソードを喰らえ!」


 白い花で鍔を彩った美しい剣を華麗に振るい、スノウゴーレムを三等分にしてしまう。


 やっぱり2人はすごい……!私も負けてられない!


「『猟犬の魔弾』!」


 魔力が杖に集まる。それは私と同じくらい大きい、青く輝く猟犬の形を成す。そして目標のスノウゴーレムに駆けていく。


 スノウゴーレムはそれを迎撃しようと拳を振り下ろすが、猟犬はステップを踏んで回避する。スノウゴーレムは回避行動をするが、それに追従して猟犬は噛み付いた。直後、青い魔力爆発を起こす。


 スノウゴーレムの上半身が吹き飛んでしまい、そのまま青い魔力の粒子となって消えていく。その間に2人は残り2体を倒していた。


〈ナイスー!〉

〈余裕だね!〉

〈連携うっま!〉


「ナイスゆい!」

「ゆいちゃんすごい!」

「あ、ありがとうございます……!お2人もお見事です!」


 コメントや2人に褒められて照れくさくなる。でも推しに褒められたの嬉しい♪


「猟犬の魔弾可愛いけどえげつないね〜……」

「攻撃避けてたし追尾してくるし、撃たれる側は嫌だろうな」

「特殊個体の居る部屋で手に入れたスキルストーンだから強いですね。マナバレットより威力高いですし、分割もできるみたいです」


 マナバレット同様に猟犬も幾つかに分割し、別々の敵に攻撃する事も可能なようだ。かなり強いかもしれない。


「そうだ、ヒナちゃんの使うその剣も、何か固有のスキルがあったりするの?」

「うん!ブライダルソードの固有スキル『ソードカップル』は、近くに剣を使う異性が居ると切れ味が鋭くなったり軽くなったりするんだよ!」

「そうなのか。俺は刀だけどどうなんだ?」

「ちゃんと発動してたよ〜」


〈カップル!?〉

〈2人は夫婦……って事!?〉

〈カプ厨ソードか〉


「アッハハ☆カプ厨ソードは面白すぎるでしょ〜!」

「あはは……」


 黒崎さんはカプ厨がよく分かってないようで首を傾げて居る。でも美男美女カップルだしお似合いすぎる……!


 白いドレスのようにも見える衣装のヒナちゃん、黒崎さんの黒衣と相まって結婚式の夫婦みたいで画になる。


 2人が式を上げる姿を想像してニヤけてしまう。


〈またニヤけてるw〉

〈草〉

〈カプ厨ゆいちゃん?〉


「そ、そんなんじゃない!もう!みんな静かに……いや、しなくていい!」


〈……〉

〈……〉

〈……〉


「しなくていいって言ったのに!」


〈草〉

〈いつもの〉

〈最早様式美〉


「あっ!これ好き!生で見れて嬉しい〜!」

「ははは!俺もこのやり取り好きだぜ」

「ヒナちゃんに黒崎さんも笑いすぎです!もぉ〜!」


 そんな平和なやり取りをしてアイスダンジョンの初戦闘を終えるのであった。

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