マッドハウスで【シャクナ】

「おい!あんた!!」


あちゃぁ……

あの魔族の子、幻覚の爆弾マジック・ボム落としてっちゃった。


「身を隠すための道具だし、一応届けるかぁ……」


シュンッ


聞き慣れた音、どこかヒンヤリする空気。

木の根元から入るなんてって思っていたが、今じゃ慣れたもの――


『周囲を閉鎖します。マッドハウスを建設中――、終了。』


は?

たった今、誰かが殺された……?

地響と共に周囲の地形が変形していく。

木の枝から果実がなるように、木の幹からマッドハウスという閉鎖された小規模ダンジョンが生まれる。


『マッドハウスが発生しました。至急に集まってください。

ステータス画面から地図を確認できます。』


地図を開くとすぐに分かった。いつものダンジョンマップがない。

それは、ここが別の場所として閉鎖、隔離されており、条件をクリアするまでここから出られないことを悟るには十分すぎた。

「アトリオ」と呼ばれた広原のダンジョン。そこから繋がる8つのとても小さい

ダンジョン。


やかた……」


ダンジョンとしては違和感を覚えた。

普通なら、一つのダンジョンからいくつものダンジョンへとは繋がることはない。

階層フロアが上がるに連れ危険度が増していて、階層で世界が決まっている。1階は土のフロア、2階は水辺のフロア、というように。

しかし、地図に『鉱』『不』『重』『洞』などと振られた小さいダンジョンは世界が決まっているようには見えず、個室のようになっている。


「お、来たな」


だから余計に館に閉じ込められたように思えた。


「シャクナじゃないか!?」

「お!ラーク!!」

「先程の番人さんですわね!!」


広原にいたのは6人の冒険者プレイヤー、のうち3人はさっきの仲間パーティーだった。他は、2人で固まっている1組とソロ冒険者と俺。計7人。


「良かったよ〜、知り合いがいて!俺、番人やってるけど初めてだ……」

「僕も初だよ――」

『全員が集まりました、これより説明を開始します。――』


長ったらしい説明をきいた。

どうやら報酬があるらしい。

冒険者殺しプレイヤーキラーが勝てば、キラーは他冒険者の所持アイテムからランダムで6割、所持金の8割をそれぞれからもらえる。負ければ冒険者に自分の所持アイテム、所持金、装備を全て分配する。勝った側はボーナスとして、残り制限時間(分)×10,000のコインと経験値が手に入る。


『――皆さんにはそれぞれ部屋ダンジョンが用意されています。魔物はおりませんので安心を。『重』の部屋には死体がございます、キラー特定にお使いください。制限時間は5日です。それでは始めます。』


カチッ、カチッ、カチッ……


マップの右上に制限時間が出てきた。

後5日……


「ほんとに閉鎖されてんの!?!?マジ無理なんだけど!」

「フウセン、静かにしとこ……?」

「カズラは静かにできるの??アタシは殺されたくないよ。」


あの2人組は姉妹だろうか。


「あ、あのぉ。とりあえず自己紹介して、部屋を決めませんか?その後に死体を見に行って……」


声をかけたのは意外にもロス。


「ああ、俺も賛成だ。俺はルドベキア。好きなように呼んでくれ。見た通り、ライオンの獣人で、職業は盗賊。よろしくな。」


ソロ冒険者か。キラーという風貌には見えないが、人にバレないように物を隠せる。たとえ隠したものが凶器でも。


「え、じゃあ次はアタシ??

アタシの名前はフウセン。職業は――」

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