2マス目:ふりだしに戻る

 僕の家とほぼ同じ構造だが、少し違和感を感じた。インターホンがどこにもないのだ。


 しかも景色に違和感を感じた。とても大阪とは思えない程の木の量。しかもすごく寒い。日本とは思えないほど寒い。


 「一体ここはどこなんだ……」


僕はスマホを確認しようとしたが、スマホは圏外だった。おかしいなと思った。大阪の京橋なら圏外にならないはず。とにかく、現在地を知りたかった。



 誰かいないかと思って、家の中を覗いた。誰かが洗濯物を干している。後ろ姿なので誰かは分からなかった。僕は警察から逃げているのでとりあえず中に入りたい。


「すみませーん!」

そう声をかけると、洗濯物を干していた人物は振り返った。僕が知らないおばあさんだった。おばあさんは驚いた顔をして家の中へ入っていった。そこから数分後、水色の髪をした少年が出てきた。


「ど、どなたでしょうか?」


「七見航太と申します」


「えっと、どこから来たのですか?」


「どこからって?大阪ですけど?あそこの路地から…」


指を差した場所にはもう狭い路地はなく、一面雑木林だった。


「オオサカ?どこだろう、ここはダイス王国のピースだけど、近くにそんな国合ったっけな…」


「ええ!?どこって?もう一回言って!」


「ダイス王国のピースです。知らないですか?」


僕は頭が真っ白になった。どうやら、異世界に転生してしまったようだ。






 僕が目を覚ますと、木の天井が現れた。見慣れた実家の風景。ここは本当に異世界なのだろうか……


「あ、起きたんですね!良かった!急に倒れたからびっくりしましたよ。これよければ食べて、元気になってください。」

 さっきの水色の髪をした少年が見たことのない果実を差し出してきた。僕は倒れてしまったらしい。


「えっと、これは?」


「シ・アムースという果実です。甘くてジューシーでとても元気になれます」


僕の問いに対して水色の髪の少年は笑顔で答えた。


「エル厶!冷蔵庫はちゃんと締めなさいって何度も言ったでしょ!」


「あ、ごめんなさい!うっかりしてた……」


 どうやら、水色の髪の少年は「エルム」という名前らしい。エルムはうっかり者なのかもしれない。



 「あ、紹介するわ。私はネール。この子はエルム。よろしくね」


「よろしくお願いします」


僕はとても違和感を感じた。出会ったばかりの人を家に入れて、こんなに優しくしてくれるなんて。



 「あなたの名前は?」


「えっと、七見航太です」


「シチミコータ?じゃあ……長いから、コータって呼ぶわね」


「は、はい」


 僕はあたりを見回した。本当に実家の風景そのままだ。柱に付けた成長記録の傷や、小さい頃に書いた壁の落書きさえも同じだ。


 「どこから来たの?」


「大阪です」


「オーサカ?聞いたことないけど……どこかしら?」


ネールは世界地図を広げて僕に見せた。


「……!?」

 僕は地図を見て異世界だと確信した。この世界には大きな島が1つと、小さな島が3つしかない。


「ここは、シアンタウンです」


エルムが大きな島の右端の辺りを指差した。


 僕はどうすれば良いのか分からなくなった。指山を刑務所に置いて、僕は異世界に転移するなんて。異世界転移なんて漫画でしか見たことないな。


 とりあえず元の世界に戻る方法を探そうと思う。


 そんな事を考えていると、今日の夕飯が運ばれてきた。肉をキャベツのような葉野菜で巻いたような料理だった。僕の世界ならサムギョプサルというのだろう。


 こんな優しい家に拾われて良かった。厳しいところだったら中に入れてもらえなかったかもしれない。


 「コータさん。手を洗いに行きましょう」

 僕はエルムに従い、洗面所へ向かった。実家に帰ってきたような、新しいような、不思議な気持ちになった。




「え、ええええええええええええ!?」


 僕は鏡の前で自分の姿を見て、驚きのあまり、発狂した。


 幼き子どもの頃の姿に戻っていたのだ。

 

 どうやら僕は異世界転移して、過去に戻ったようだ。

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