双六転生〜ふりだしに戻ると異世界でした〜
めーあ
1マス目:ニートになる
「逃げて!!」
目の前で僕の最愛の彼女が叫んだ。
「えっ!?でも…」
僕は何もしていない彼女を置いていけない。あたふたしていると、花屋さんの店員と目があった。
「私のことはいいから!逃げて!!」
僕はスマホとカバンを持ってとっさに走り出した。路地を曲がり、走っていく。頭よりも先に体が動いた。
店員は僕を追いかけてくる。僕は曲がり道をうまく使って店員を巻いた。
僕は身を潜める事のできる場所を探し、狭い路地を歩いた。
息が整わないまま、路地を抜ける。
たどり着いた場所は僕の家だった。こんな所にあるはずもない家。
「いらっしゃいませ」
僕は花屋に入った。この花屋は地元に昔からある花屋さんで、母の日などの前には大勢の客で賑わう。
今日は店内に客がいなかった。
店員の目を盗み、僕は1輪の赤いバラを手に取った。そしてそのまま、ブレザーの内側にバラを隠し、店を出た。
ドクンドクンと心臓が鳴り響く。僕はゲームが好きで、それ故に金欠だった。こんな事をするのには理由があった。
「今日も花、持ってきてくれた?」
指山花音が首を傾げた。指山花音は僕の彼女だ。会うたびに1本の花をあげる約束をしている。僕は震える手を抑えて彼女に赤いバラを手渡した。
「やったぁ!嬉しい」
彼女は盗んだ物とは気づかずに顔の前にバラを持ってきて笑顔を見せた。僕は複雑な気持ちになった。
「おい!花を返せ!」
後ろからの大きな叫び声に驚き、僕は振り返った。花屋の店員がこっちへ走ってくる。
「盗ったんだろう!?返せよ」
彼女から赤いバラを取った。彼女は肩をビクッとあげた。
「店まで来てもらおうか」
「はい」
指山は素直に頷いた。盗ったのは僕だ……指山は何も悪くない。
「いや、指山は何も……」
僕の小さいミミズのような声は届かなかった。沈黙が流れた。しばらくしてから突然、指山が叫んだ。
「逃げて!」
指山は自分一人で罪をかばおうとしている。何もしていないのに。
どこまで優しいんだろう。いつも助けてもらってばっかりだ。
「……」
僕は何もしていない指山を置いていけない。黙っていると、花屋さんの店員と目があった。
「私のことはいいから!逃げて!!」
僕はとっさに走り出した。狭い路地を曲がり、走っていく。頭よりも先に体が動いた。
店員は僕を追いかけてくる。僕は曲がり道をうまく使って店員を巻いたようだ。
僕は身を潜める事のできる場所を探し、狭い路地を歩いた。
息が整わないまま、路地を抜ける。
たどり着いた場所は僕の家だった。こんな所にあるはずもない家。
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