第7話 元彼氏

いつもの朝。


いつもの通勤。いつもの駅で先に翔が降りる。

いつもより少し混んでいて、僕の真後ろに立っている人が妙に少しくっついて来ている気がしていた。


そして最後の駅になる前に、後ろを振り向くと…


「お前、大丈夫か?」と声をかけられた。


僕はそのまま揺れに任せて体を寄せた。


「…お前今日仕事か?」

「うん。」

「休め。」


こいつは昔もそうだった。

僕が高校入ってすぐに出来た彼氏だ。

一年くらい付き合って別れた。

理由はコレ。


でも今の僕は冷静ではなくなっていた。



駅を降りて、コイツに手を引かれるまま駅前のホテルへ。


「凌太、電話入れとけよ。」

「うん。」


…言いなりだ。



「……。」

電話を終えると、抱き寄せられて頭を撫でられた。

こいつはズルい。昔から僕の弱みにつけ込む。


…いや。本当は、手に取るように変化に気づく。



「凌太。泣いていいんだぞ。我慢すんなよ、今くらい。」


僕は元彼氏の腕の中で大声で泣いて、泣いて、泣いて、泣いた。


そして…僕からキスすると、時間をかけて甘さと苦さで満たしてくれた。



―――――――――――――――――――――。



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