第32話 秘境祭2日目
秘境祭が2日目となり今日は音楽がメインとなっている。
役10組が歌ったり踊ったりするので、街の中心の塔の前にステージが出来ており、そこで披露することになった。
1組目はカグツチが率いる焔鬼軍だ。
ステージにカグツチ達が上がると、俺が異世界仕様に作り替えたマイクを手に持つ。
「あ…あぁ……聞こえますか?
…大丈夫そうですね」
カグツチは観客の様子を確認して、話し始める。
「この秘境祭の2日目の最初という栄光と共に、主への我々の忠義を表した合唱と言うものを聞いて頂きたい。
それでは聞いてくれ、焔鬼軍による"神竜歌"」
カグツチの言葉で始まった合唱曲の神竜歌。
バラード調の曲に、俺への想いを綴った歌詞の曲だった。
俺としては少しの恥じらいがあるものの、あいつらからの想いは素直に嬉しいので、目を閉じて集中して聞く。
「……聞いて頂き感謝する。
この曲で我らの主の素晴らしさが伝わっていると嬉しく思う。
俺達はこれで以上だ」
カグツチがそう言うと、次の組へと変わった。
2組目3組目が終わり、4組目がステージに上がる。
「私は、黄泉。
主であるミロク様の秘書であり嫁でもある」
「嫁は違うけどね!?」
俺は黄泉の言葉に思わず叫んでしまう。
「…嫁じゃなかった」
少ししょぼりする黄泉に観客は笑い声を上げる。
「…私がこれから歌うのは愛するミロク様に捧げるラブソングというもの。
上手いかは知らないけど、聞いて欲しい。
特にミロク様に」
俺は黄泉の言葉に頷くと、黄泉は僅かに笑みを浮かべた。
「それじゃあ聞いて。"私が好きなのは主様"」
黄泉の歌う曲は、普段とはギャップを感じる感情溢れるラブソングだった。
歌詞に…歌に込められた黄泉からの想いを、目を瞑りながら集中して受け入れていく。
曲が進む度に黄泉の想いを知る事ができ、いつの間にか曲が終わっていた。
「聞いてくれてありがとう。
まだまだ居るから聞いていって」
そう言って黄泉はステージから降りた。
それから5組目と6組目も終わり7組目がステージに上がった。
「あら、初めまして。
これからアタシ達がするのはバンドという物よ。
楽器という物を鳴らしながら歌わせてもらうわ」
7組目はスクナ達護衛小隊だった。
「それじゃあ聞いていって頂戴。
護衛小隊による"脳に刻め竜の名を!!"
アァァァァァ!!」
スクナは、前世で言うデスボイスと呼ばれる声で曲を始めた。
普段の優しそうなスクナとは違い、ロック調の曲を荒々しく歌う姿は普段のスクナとは違くとも、スクナらしいと思えた。
「はぁ、はぁ…聞いてくれてありがとう。
ラスト3人だけど聞いて言ってね」
そう言って、スクナがステージから降りると、ニアがステージに上がってきた。
「初めまして。
私は、ニアと申します!
今回は、歌と言うものを歌わせて頂きます。
ですので、よろしければ聞いてくださると嬉しいです!
聞いてください"未来"」
ステージに上がったニアが歌う曲は、少し落ち着いたゆっくりなテンポの曲調に、獣人達の悩みやそれを乗り越えて進む未来を綴った歌詞が書かれていた。
「…ありがとうございました」
ニアはそう言ってお辞儀をすると、9組目と入れ替わった。
9組目が終わると、最後のトリを務めるリルがステージに上がった。
「今日は色んな曲を聞いてくれてありがとう!
最後を締めくくるのはワタシの曲だよ!
ワタシの憧れた者の曲になってるから聞いて欲しいな!
"竜の王子様"!!」
リルがステージに上がり歌い始める。
その曲はアイドルのようで、リルも踊りながら歌っていた。
何処か目を奪われるカリスマとも呼べるものを最大限使ってか分からないが、観客達は今日一の盛り上がりを見せた。
「…聞いてくれてありがとう!
秘境祭は、明日で終わっちゃうけど、明日はシンラ様とイリス様の神話を元にした演劇があるから、是非とも見て帰って欲しいな!」
リルは明日の事を言ってからステージから降りる。
それを合図に観客もそれぞれの宿へと帰り、俺も明日に備える事にした。
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