第23話 獣人三人娘の戦い


 ニア視点


「殺さないようにだね!」


 リルがそう言うので、私達も頷く。


「一応しておくわ!」


 クシナは、自身のスキルの神楽を発動させて、舞いを踊りながら鈴を鳴らすことで、私とリルに強化をかけていく。


「じゃあ次はワタシだね!適応能力シオンスキル 秩序メタトロンを実行するよ!

 私達3人を除く獣人の皆は、その場から一切動かないで!」


 リルは、スキルで私達以外の獣人に動けないという制限をかけた。


 それを見た私はスキルである剣翼を使って、背中に現れた剣達を獣人達に放ち、手や足に刺し、地面や壁に固定する。


「ごめんね」


 私は少し傷を与えてしまったことに謝罪する。


「…はぁ、やはりお前達か」


 今までの光景を見ていたレオンが、そんな事を言いながら私達の前に現れた。


「こんなことは辞めなさい!」


 クシナがそんな風にレオンに言う。


「ハハッ、そもそもこうなったのはお前達のせいだろうに」


 レオンの言葉に私達は目を見開く。


「お前達は何度も俺からの婚約の話を断っただけに留まらず、あの竜に惚れかけた…いや惚れたな?

 俺ではなくあいつを選んだお前達を分からせる為に力を得たら、次は逃げ出しやがった。

 だから、お前達の逃げたこの村を襲ったんだよ!

 全部お前達のせいなんだよ!!」


 私達はそんなレオンの言葉に反応することすら出来ないほど動揺していた。


 言いがかりなのは当たり前だ。

 私達は好きでもない人と婚約がしたくなくて断っただけだし、ミロクさんに惚れたとしてもレオンには関係の無い事だ。

 なのに、私達が原因と言われれば混乱もする。

 でも、確かに私達がここに来なければ、ミロクさん達を巻き込まなかったかもしれない。


 そんな考えがずっと頭を埋め尽くす。


「…今か、色欲アスモデウス

 お前達3人は俺の事が好きで好きでたまらない俺の婚約者だ!」


 そんなレオンの言葉と、どうしてか惹き付けられる紫に光る眼を見ると、私は自分の身体が動かせなくなった。

 他の2人も同じようで、体が勝手にレオンの近くに歩いていく。


(いやだ、なにこれ)


 私はそう思いながらも、私達の身体はレオンの前にまで来ていた。


「あははははっ!やっと手に入れたぞ、こいつらは俺の女だ!!」


 レオンはそう言うと、私達を見る。


「…そうだな、お前ら脱げ」


 レオンがそう言うと、私達の身体は勝手に服を脱いでいく。


(嫌だ、嫌だよ…なんで、勝手に動くの?誰か、助けてよ)


 残りの服が下着だけになった時、私達の居る場所に突然大きな影が現れ、私達の後ろに漆黒の狼のような竜が現れた。


 高さが2メートルあって、横の長さが3メートルある黒に少し赤色の鱗もある狼のような竜が私達を見つめる。


 見つめ合う間1分程、私達の身体に服が出来始めていた。


 確信はないけど、目の前の竜が作ってくれた服だと気づいた私達はいつの間にか動かせるようになった身体で、頭を下げた。


「離れてて」


 そんな言葉を聞いた私達は、少し離れた場所に行き、竜を見る。


 その竜は怒っているのか、覇気とも言える威圧感を放っていた。

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