第17話 3人の獣人娘


 俺達は、レオン達が帰った後それぞれの仕事を再開して、翌日になっていた。


「…黄泉、そんな四六時中俺にくっつかなくて良いんだよ?」


 俺は、寝る時も座って飯を食う時も散歩する時も、腕を組みくっつく黄泉を見ながらそんな言葉を零す。


「ん?大丈夫、だよ?私の仕事をしているだけだから、ミロク様も私もイザナに怒られない!」


 黄泉は、どこか満足気でドヤ顔のような表情で、俺に抱きついていない手で、グッドサインをした。


《マスター!?貴方はどうしていつもいつもいつも女を誑かすんだぁ!!

 私という女が居ながらどぉしてぇ!!》

(いや、イズは女の子だとしても、身体が無いしそこまで気にしなくてもいいだろ!?

 ある意味1番役得だろ!俺と一心同体なんだから)


 俺はイズにそう返してから黄泉の対応に切り替わる。


「あのな、黄泉。

 四六時中くっつくのも、寝てる男の布団に潜り込むのも、恋人や夫婦のような好きな相手にしかしないんだ。

 だから、俺にするんじゃなくて、黄泉が好きになった相手にしてあげるんだ」


 俺がそう言うと、黄泉は首を傾げた。


「ん?私はミロク様が好き」


 黄泉は俺の目を見つめて真剣な様子で言う。


《…この馬鹿鬼泥棒猫の馬鹿女が。

 マスター身体を貸してください》

(…えっと身体を貸したら何をするのかな?)


 俺がイズにそう聞き返すと、殺気を何処からか感じ始めた。


《なに、死ぬまで誰がマスターの女か分からせるだけですよ。

 アッハッハッハッハッ、大丈夫です。

 鬼はそう簡単に死にませんから》

(…俺、こいつと相棒を解消したくなってきたかも)


 俺は、イカれた精霊にそう思いながら、現実では黄泉に、精神世界では馬鹿精霊に困り果て頭が痛くなってきた。


「…誰か助けて」

「?私が助ける」

「うん…お前が言うな?」


 俺はつい黄泉の言葉にそんな返事をしてしまった。


「……ミロク様、なにをしているのですか?」


 イザナが、ジッと俺を見つめていた。

 黄泉が子作りしてと言い追いかけてきたあの日の、笑っているのに目が笑っていない表情と、全く同じ表情のイザナが目の前に居た。


「助けて…バカ精霊の事もどうにかして…」

「だから、ミロク様は私が助ける」

《お前が離れればマスターは助かるんですよぉぉ!!》


(…お前ら全員1回黙れ)


 そう思いながらも、イザナの返事を待つ。


「…なるほど。

 ミロク様、1度イズさんと入れ替わって頂けますか?」

「…分かった。

 一応忠告しておくが、イズ、絶対に暴れるなよ。

 暴れたら本当に契約解消だ」

《わ、分かりました》


 イズの返事を聞いた俺は、イズと入れ替わった。


 髪が白色になり腰まで伸びたその髪を、何処からか現れた黒色のリボンが結びポニーテールにして、目を赤から金に変え、性別を男から女へと変え、俺の身体に宿ったイズはイザナを見る。


「なんの用ですか、泥棒猫」

「あっ…ミロク様を独占する悪女」


 黄泉の呟きにイズが睨みつけようとする。


《おい?》

「はいっ、すみません」


 俺の言葉で、イズは一言謝りイザナを見つめ直した。


「……ミロク様は、1度耳を塞いでください」


 俺はイザナの言葉に疑問を感じながら、耳を抑えて聞こえないようにする。


「マスターは耳を塞ぎました」

「では、お話しましょう」


 そんな2人の言葉が聞こえると、そこからは一切何を話しているのか聞こえてこなかった。


 そして、俺が身体に戻り見た目が戻るのを合図に会話が終わったと理解した俺は、様子を見る為に黙る。


「ふぅ…頑張って良かった」

「ミロク様と…ふふっ」

《マスター、これからも女を増やしても良いですよ》


 3人の様子を見た俺は、全くもって理解出来なかったが、仲は良くなったようなので安心するのだった。


「っ!ミロク様!3人の獣人が村に近づいているとの事です」


 イザナの突然の報告に驚きながらも、カグツチとスクナを呼んで、5人で村の入口に向かい、3人の獣人を警戒しながら待つ。


「はぁはぁはぁ…ミロクさん!獣人が、レオンが暴走して獣人全員でこの村に侵攻を始めました!!」


 村に入ってきた3人の獣人を代表して、真ん中の獣人がそんな事を叫んだ。

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