第16話 獣人の訪れ


 鬼達に役割を与えてから一日が経った。


「こんな所に村があるとは」


 俺達の村に獣人達が訪れた。


「初めまして、俺はここの村長をしている竜族のミロクと言う者です」


 俺が挨拶をすると、代表のような男が前に出る。


「私は、この獣人達を率いるレオンと申します」


 俺とレオンは握手を交わした。


「それにしても、なぜこんな森の中に村を作ったのですか?」


 レオンの言葉に、黄泉達を見て答える。


「本当は1人でひっそりと住むつもりだったんだけど、鬼達がやってきて、色々あって共に住むことになって、それってつまり鬼達と俺が家族になったことだと思うんだ。

だから、俺と鬼達が過ごしやすいように、村を作ろうと思って…かな」


 俺がそう言うと、レオンが黄泉達を睨んだような気がした。


「…そうですか、それでは我々はここで失礼」


 レオンがそう言うと、獣人達に「行くぞ」と言って、森に向けて歩いていった。


「ミロク様」

「どうした?」


 俺は、獣人達が見えなくなると、話しかけてきたカグツチに、返事をして要件を聞く。


「レオンという男…不気味な奴でした」

「あぁ、あの時のオーガのような不気味さがあったな」


 俺はカグツチと話すと、1度みんなの方を向き、みんなに聞こえるように話し始める。


「みんな、今度またレオンが来た際は警戒して対応に当たれ。

 他の獣人達も一応警戒するように。

 以上だ、とりあえず今日は解散」


 俺がそう言うと、カグツチ達は頷くと、それぞれの家や持ち場に戻って行った。










 ???視点


 何処かにある建物の中、真っ暗なそこに黒いフードを被った人物がやってきた。


「お待ちしておりました」


 俺が、そのお方に膝をつき声をかけると、そのお方は、この部屋の奥にある玉座に座った。


「それで、何用で我を呼び出した?」


 そのお方…主と呼称するが、主の言葉に俺は微かに震えながら話し始める。


「調査するように仰せつかった"森羅の森"に行ってまいったのですが、先客が居りました」


 俺の言葉に、主は玉座から勢いよく立ち上がる。


 その姿は焦っているような、恐れているような、そんな感情があると思えた。


「…先客とは、何者だ?」

「竜を主とする鬼の集団でした」


 主の問いに答えると、主は顎に手を置き考え始める。


「鬼…か。別世界から迷い込んできた"刀"という武器らしき物を、数万年も隠し通す不可思議な種族。

 それが絶滅したと思われていた竜と共に居るのか」


 俺は、主が話しかけてくるまで、主の呟きを静かに聞いていた。


「…何故あの場所に竜が存在するのか。

 お前、その竜達は危険と思うか?」


 話しかけられた俺は先程出会った竜と鬼を思い出して、その時に感じた事をそのまま答える。


「危険と判断します。

 竜からは絶望させられるような、威圧感と言うより覇気に近しいなにかがありました。

 鬼に関しても、主への絶対の忠誠なのか、俺のことを殺気の混じった視線で見て来ました。

 あれらを排除しない限り、あの森は手に入らないかと…」


 俺の言葉を聞いた主は、少し考えると、懐から3センチ程の球を俺に手渡した。


「その球には禁忌能力カプスキルが封印されている。

 この封印は、一定の温度…人間の体内温度である37度程の液体に触れれば溶けるように我が作った物だ。

 それをお前が飲めば封印が溶け、封印されていたスキルを手に入れる事が出来る。

 詳細な使い方も頭に浮かぶだろう」


 主の言葉を聞き終わると同時に、俺はその玉を飲み込んだ。


 すると、胸の辺りが熱くなり、俺は胸を抑えて蹲る。


 数分の間、自身の身体が内側から作り替えられるような痛みに耐えると、痛みが引き頭にスキルについてのことが入ってきた。


 俺の手に入れた禁忌能力カプスキルは、色欲アスモデウスというもので、自我は残ってしまうが、身体は思いのままに操れる洗脳系のスキルだった。


「習得したようだな。

 それではこれも渡しておこう」


 主は、立ち上がった俺に4つの鍵を渡す。


「これは?」


 俺が鍵を見ながら主に聞くと、主は1つずつ指を指して説明を始めた。


「それらは、我が手を加えた魔物を何匹も保管している建物の鍵だ。

 その鍵を持つ者を主として認識するようにしているから安心して連れて行け。

 先程渡したスキルと、この鍵で解放した魔物達を使って、お前達獣人は森に勝手に住んだ愚かな竜達を蹂躙しろ」


 主がそう言うと、俺は跪き返事を返した。

 それを見た主は、玉座から立ち上がり姿を消した。


「獣人達を連れてこい」


 俺は背後に現れた暗殺者のような見た目の"人間"にそう伝えると、そいつらは姿を消した。


「俺の野望に使えそうなスキルを得れて嬉しいねぇ」


 俺は下卑た笑顔でそう呟く。





 数分経ち集まった獣人達に、聞こえるように話し始める。


「お前ら、これより我らが"領地"であるあの森に、勝手に侵入し、我が物顔で村を起こした愚かな竜共を殲滅する!!」


 俺の言葉に「あの森は誰のものでもないだろう!」という反発の言葉を聞いた俺は、早速スキルを使う。


色欲アスモデウス……俺の言葉に忠実に従え」


 俺がそう言うと全ての獣人が跪いた。


 …俺がスキルを使う前に走り去った3人の獣人以外だがな。


「これより、我らは愚かな竜を葬る為に進軍する!」


 俺はそう言い、渡された4つの鍵を使い、その中に居た魔物達も集め、約4万の魔物と50人程の獣人達で、ミロクという竜の住む村へと進軍を開始した。

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