第15話 配下達の力
イザナにみっちり絞られた俺は、鬼達を集めていた。
「今日はみんなの力を知ろうと思ってさ。
俺と1対1で模擬戦をしてお互いの実力を知っておこうと思うんだ」
俺のそんな言葉で始まった俺と鬼達の模擬戦。
始まってから数時間が経った現在は、残りの鬼はイザナと黄泉とカグツチとスクナの4人だけとなった。
「じゃあスクナおいで」
俺がスクナを呼ぶとスクナは、俺の前に来て構える。
静寂の中、スクナは手の前に黒い空間を作り、そこから真っ黒な刀を取り出した。
その刀で斬りかかってきたので、俺は腰に刺さっている剣で剣戟を流していく。
「くっ、やっぱりミロク様は強いわね!」
スクナはそう言いつつ、俺の上に真っ黒の空間を開けて、そこから俺目掛けて無数の真っ黒の武器が凄まじい速度で落ちてきた。
俺はそれを弾きながら、弾いた刀がスクナに当たるように弾く場所を見極めて狙う。
狙いの箇所に剣を当てると、その弾かれた刀は、スクナ目掛けて飛んでいき、スクナを囲むように身体スレスレの位置に突き刺さる。
「あらら、降参よ」
スクナは両手を上げて肩を落とす。
「良い動きだったよ。
スキルも強力だし、スクナが居てくれると頼もしいよ」
俺がそう言うと嬉しそうな顔をして休憩している鬼の集まる場所に歩いていった。
「じゃあ次は黄泉ね」
「ん」
俺に呼ばれた黄泉は、30センチ程の短刀を右手に持ち、60センチの小太刀を左手に持って俺の前に歩いてきた。
「…行くよ」
黄泉がそう呟くと、一瞬で俺に近づき右手の短刀で斬り掛かる。
俺がその短刀を避けると、真上から左手の小太刀が迫ってきているのに気づく。
「あぶねっ!?」
スレスレの位置で躱した俺の視界に、斬られたのであろう数本の髪が見えた。
「むっ…いけたと思ったのに」
黄泉はそう言いながら自身の武器を見つめる。
「ミロク様になら使っても大丈夫かも」
黄泉はそう言うと目を瞑った。
「
黄泉は目を開くと同時にスキル名らしき言葉を口にする。
それを合図に、俺と黄泉の周囲10キロの世界に異変が起きる。
青く染まっていた空は真っ白に、草木の緑に溢れていた地面は真っ黒に染まる不自然な世界に変わっていた。
「…ミロク様、死なないで」
黄泉のそんな言葉が聞こえると同時に俺の目の前に、突如身体の半分が黒でもう半分が白色の人のような何かが、灰色の鎌を構えて俺を見つめていた。
「その子の持つ鎌に当たったら死んじゃうから…当たらないで」
黄泉の言葉を聞いたと同時に、人のような何か…死神とでも呼ぶことにする。
死神が鎌を構えて俺に襲いかかる。
その鎌を剣で弾こうとすると、剣が鎌に触れた瞬間、触れた箇所から灰に変わっていった。
それを見た俺は、即座に後ろに飛んで鎌を躱す。
「…嘘でしょ?」
俺はその鎌の危険性を改めて認識して、武器を持たず死神に向けて走る。
俺の身体能力の高さを最大限活用した、異次元のような身体の動きで、死神の攻撃を避け、空を舞うように空中で動き、死神の背後に回ると
「ふぅ…危なかった」
「…やっぱり凄い」
元の世界に戻っていく中、黄泉のそんな呟きが聞こえた。
黄泉がスクナと同じ休憩所に向かうのを見た俺は、次を呼ぶことにした。
「次は、カグツチ」
俺がカグツチを呼ぶと赤黒い刀を持ったカグツチが俺の前に歩いてくる。
「行きますよ、ミロク様!」
カグツチは、俺にそれだけを言い、走ってくる。
「
カグツチが、刀に赤色の焔を纏わせて地面に突き刺すと、その位置を中心に赤色のマグマが波のように流れてくる。
「
俺は、迫り来るマグマを海に変えてそれを浴びる。
「弐之焔 蒼焔」
カグツチは、蒼色の焔を纏わせた刀を俺目掛け振り下ろす。
すると、その刀から刃のような形の蒼色の焔が俺に迫ってくる。
「
俺は再び
「くっ!」
腕を前に出すことで防いだカグツチの背後に一瞬で近づき、首筋に剣を置く。
「まいり、ました」
カグツチは、刀を鞘に戻して俺を見てからお辞儀をする。
「むちゃ強かったよ。
頼もしい限りだね」
俺は、カグツチの頭を撫でて讃える。
カグツチは、俺に撫でられた頭を触ると、感涙なのか目に涙を溜め、大きく「はい!」と言うと、黄泉達の元に走っていった。
「じゃあ最後だけどイザナ…来なよ」
俺がそう言うと、イザナは転移するかのように一瞬で俺の背後に現れた。
「驚いた…なんなのかな、それは」
「
俺の問いに短く答えると、手に持った30センチの短刀で斬り掛かる。
俺は、バックステップでその短刀を避けて、
「炎雷」
イザナは、身体に赤色の炎と金色の雷を纏いその場から消えると、同時に俺の真横に現れて閃光のような速さで短刀を横に振るう。
俺は、その短刀を自分の剣で防ぎ、イザナと距離を取る。
「みんなにばかり力を披露させるのはダメだよね。
……俺の力も見せてあげる。
イズ、頼んだよ」
俺は、精神世界に居る相棒を呼び目を閉じる。
すると、俺とイズが入れ替わるように俺が精神世界にイズが俺の身体に移動して、それを合図に、俺の黒い髪が白くなり腰まで伸びる。
そして、伸びた後ろ髪を何処から現れたのか分からない黒色のリボンが綺麗に結びポニーテールになる。
赤色の目は金色に変わり、身体は男から女に変わって、身長も低くなった。
「その姿は…」
イザナは勿論カグツチ達、他の鬼達も驚いたように俺を見つめていた。
「かかって来なさい泥棒猫。
マスターは私の物です」
「なんだか分かりませんけど、貴方には負けません!」
どうしてか、イズとイザナが睨み合う。
「マスターを守るという正義を行います!
私の正義に答えなさい!
イズがそう言放つと、イズの身体が白銀の光に包まれた。
そんなイズに斬り掛かるイザナは、目の前の光景に目を見開いた。
その光景は、イザナの短刀がイズの首筋に当たっているにも関わらず、身体に纏わる白銀の光に阻まれて一切動かないというものだった。
「終わりです」
イズが、右手に持った剣をイザナの首筋に置いたことで、決着が着き、俺の精神世界に帰ったことで、俺が身体に戻り、元の姿に戻った。
「うぅ…負けてしまいました」
俺は、落ち込んでいるイザナの頭を撫でて声をかける。
「よくやったよ。
イザナに守られるなら安心だね。
でも、俺もイザナ達を守れないと恥ずかしいから、一緒に強くなろう」
俺がそう言うと、力強く頷き黄泉達の元に走っていった。
「さてと、以上で模擬戦は終わり。
これから、役割を与えていくよ」
俺は、そう言ってそれぞれに役割を与えた。
模擬戦で戦闘が苦手だと感じた者達は、後日戦闘以外をして貰い、向いてる役職をして貰うことにして、戦闘に向いていると感じた者はそれぞれの特徴を加味して、カグツチ達4人のいずれかの配下とした。
非戦闘員は40名の鬼達。
カグツチには、1番人数の多い騎士団的な組織"
焔鬼軍を構成するのは30人の鬼とカグツチの31名。
スクナには、非戦闘員を守る警護団のような組織"護衛小隊"の隊長に任命した。
護衛小隊を構成するのは、5名の鬼とスクナの6名。
黄泉には、俺の秘書兼護衛を任せ、親衛隊のような組織"竜鬼近衛団"の団長に任命した。
竜鬼近衛団を構成するのは、10名の鬼と黄泉の11名。
イザナには、村全体を守り村への危険を一足先に見つける宮廷魔術師のような組織"天蓋魔鬼"の長に任命した。
天蓋魔鬼を構成するのは、魔法に適正のある15名の鬼とイザナの16名。
これで、共に住むことになった104名の鬼達に役割を与える事が出来た。
「それじゃあ、改めてみんなよろしくね」
俺の言葉に、みんなは跪き返事を返した。
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