第9話 家と畑作り



 俺達は、話した通り家造りから始める事にした。


「ども、ウチは集落でも建築を生業にしおったハシラというもんです」


 ハシラという名の鬼が俺に近づき、お辞儀をして簡単な挨拶をした。


「そうなんだな。

 じゃあ俺達が材料を集めるから作るのは任せる」


 俺がそう言うとハシラは頷き、それを見た俺達は周囲の木を切り、材料を集める。


 竜の姿になり、爪や尻尾で木々を折り1箇所に纏める。


 ある程度集めたと感じた俺は、周りを確認する事で全体の個数を確認する。


 周りを見て材料はこれで十分だと思った俺達は、集まった材料をハシラに渡す事にした。


「それでは、他の鬼には及びませんが、ご覧あれ。固有能力ユニークスキル 神築しんちく


 ハシラが木材等の材料に手を向けると、材料は光り輝き、適切なサイズに斬られた後、空に浮き、様々な場所で積み重なり家の形を作っていく。

 そして、ハシラは1分もしない間に100もの家を作り終えた。


「すげぇな、ありがとう」

「…うっす!」


 俺がそう言うと、ハシラは嬉しそうに笑った。


 そして、家を建てた区域から少し離れると、着いてきた鬼達に聞こえるように話し始める。


「よしそれじゃあ、食材を効率的に手に入れるための畑とかを作るか」


 俺はそう言って、強欲マモンくわを幾つか作り、共に作業をする鬼に手渡した。


 1時間程耕すと、1人の鬼が前に出た。


「ミロク様、俺は集落で畑管理をしてたホウジです。

 あとの種蒔は俺に任せてくだせぇ。

 高位能力エクストラスキル自動畑」


 そう言うと、ホウジはスキルを畑に使い、畑が一瞬光ると、畑には緑が溢れていた。


「これで食材を回収しても自動的に食材が新しく生えてくるんでさぁ」

「マジか、すげぇな。

 ホウジ、お前のおかげで今後の食事には困らなさそうだ」

「へい、こちらこそミロク様の配下となれて光栄でさぁ」


 ホウジの言葉に驚きつつも感謝を伝える。


「さてと、そんじゃあそれぞれ何処で住むか決めるか」


 俺がそう言うと、みんなはそれぞれどこに住むのかを決めるのだった。


 …俺は大きな平屋の屋敷のような家に住むことになってしまった。


「いやいや…デカすぎじゃね?」


 俺は、目の前に見える大きな平屋の屋敷を見てそんな言葉を零す。


「…ってか、いつ間に生やしたんだこんなの」


 屋敷の周りには竹や綺麗に整えられた木や草が生えており、まるで前世の日本にあった戦国時代の屋敷のような和風の家になっていた。


「てか、竹なんてこの世界にあったんだな」

《そうですね、料理や娯楽、種族や文化以外はマスターが前世でいた世界と変わりません》

「そうなのか」


 俺は、イズの言葉に頷き屋敷に入る。


「綺麗だな」


 俺はそう言って家の間取りを見て回り、それぞれの部屋を何に使うのかを決めた。


 中央にある1番広い部屋は、リビングにして、右の2部屋は客間と応接室に、左の3部屋は寝室と倉庫と修練室に、リビングの上にはトイレと風呂と手洗い場とキッチンの水周りの部屋が作られていた。


 ちなみに玄関はリビングの下にある。


「よし、一部屋ずつ家具とかを置いてみるか」


 畳が引かれたリビングには、高さの低く長いテーブルを置き、座布団を10個程置く。

 そして、1段高くなった高座と言われる場所に、膝掛けと小さな1人用の机と座布団が元々敷かれていた。


「…なにこれ?俺がここに座るわけ?

 え?なに?これ作った奴は俺を辱めたいの?」


 俺は額に手を置きながら混乱する。


《仕方ないですね、受け入れましょう》

「他人事だと思って…まぁせっかく作って貰ったし作り直せと言うのもな。

 仕方ないか」


 俺はそんなことを呟き、右手側にある襖を開けて、廊下に出ると、客間へと入る。


「ここは、客間にするからな…豪華にするか」


 客間は床がフローリングの為、天蓋の付いたベッドと、真っ白の大理石で出来た机と、屋敷の材料にもなった木を使った椅子を置き、その下に白色のカーペットを引いた。


「信じられるか?この家具は全て俺のスキルで作られてるんだぜ?

 材料無しで……狂ってるだろ」


 俺は、自分のスキルにそんな苦言を言うと客間を出て、応接室に入る。


 応接室もフローリングの床になっており、窓が大きく日当たりの良い部屋だった。


「応接室はシンプルに学校の校長室をモチーフにするか」


 俺はそんなことを呟きながらスキルの強欲マモンで、黒色のソファーを2つ作り、茶色の机を作ると、真ん中に置いた。


「こんなもんでいいか」


 俺は、それ以上手を加えず、応接室から出て寝室へと向かった。


「…広。

 どうやって寝ろと?」


 リビングが90畳程だったのだが、俺の寝室は70畳程だった。


「前世の常識が通用しねぇ」


 前世では8畳ほどの部屋が寝室だった俺からすると広すぎると感じる部屋だった。


「まぁやるか」


 俺は、冷静になり、再び部屋を見る。


 床が畳の為、部屋の奥に少し柔らかめの台座を置き、その上に布団を引く。


 そして、左側の壁には本棚を置き、右側には俺が使う武器を置いた。


 布団を置いた隣にスペースがあるので、そこに座布団と机を置いてぐるりと部屋を眺める。


 他に置きたいものも思い付かない俺は、寝室から出て、物置に入る。


 物置には幾つかの箱を置き、次の部屋に向かう。


 修練場に入ると、そこは前世で言う所の柔道や空手などの畳で出来た道場のような場所だった。


 広さは50畳程だった。


 修練場には、魔法や遠距離武器の為の的や、木で作られた近接の武器等を置き、最後の場所に向かう。


 風呂場に入ると、床は黒色の大理石で、浴槽は木で作られていた。


「なんか、和と洋が混ざってるみたいで少し慣れないな」


 俺はそう言いながら、脱衣場にタオルや服をしまい、浴場にはシャンプー等の石鹸を置いてリビングに戻る。


「改めて思ったけど、詳細な材料さえ覚えていれば前世にあった物も作れるとか、ヤバすぎだよな」


 俺は、前世でよく使っていたシャンプーやコンディショナーやボディソープ、美容液…などなどのこの世界には存在しない物を作り出した強欲マモンに驚愕すると同時に、有難く思うのだった。


「とりあえず、シャンプーとコンディショナーとボディソープは勿論、乳液や洗顔料等の美容の奴を沢山作って黄泉達に渡そ。

 美容関連は女子だけで良いか…あっ、スクナは欲しがるかもだしあげとこ」


 俺はそんな事を考えながら、何個も作り、今日の所は寝室で眠り、起きて早々、鬼達に作ったシャンプー等を渡しに行くのだった。

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