第6話 宿敵オーガ


 イザナ視点


 私達は、ミロクさんから別れて集落に戻ってきていた。


「親父、戻ったぞ」


 カグツチが村長を呼んだ。


「うるさいわい。

 大声で呼ばんでも分かるわバカ息子」


 白色の髪の目を閉じたイケおじの鬼が、返事をしながら家から出てきた。


「戻りましたケイン村長」


 私達は、村長に頭を下げて戻ってきた事を伝えた。


「あぁ、とりあえず中に入れや。

 なんかあったんやろ?」


 村長の察しの良さにいつも通り驚きつつ、村長の家に入る。


「で、何があった?」


 村長の問に、ミロクさんとのことを話した。


「ふむ…森の中に竜か」


 村長は、顎に手を置いて考えているようだった。


「カグツチの提案通り、共存を選ぼうかの。

 ワシらが勝てる存在でもないしの」


 村長はそう言って、村人達に移住の準備をさせ、数時間後、準備を済ませた事を確認すると、カグツチの案内でミロクさんの元に向かうことになった。













 少し歩き、森の中心に近づいてきた頃。


 異様な気配を感じた私達は、足を止め警戒する。


「ごぁぁぁぁぁっ!!」


 警戒する私達の前に、真っ黒なオーラを纏う禍々しい鬼が現れた。


「オーガか!?」


 カグツチは、目の前の鬼の正体に気づいたからか、腰に刺さっていた刀を鞘から抜き、オーガに近づいて斬り掛かる。


 オーガとは、鬼とは違い自我もなければ、親等も居ない孤独の魔物。

 私達鬼からすると、私達がなっていたかもしれない存在であり、オーガも私達鬼を見つけるとどんな絶品の食事も無視して、鬼を襲う程、私達には鮮明な理由のない不可解な因縁がある。


 オーガは、カグツチの刀を腕で弾き、逆に無防備になったカグツチのお腹を殴り、私達の居る場所まで吹き飛ばした。


「がはっ!?」

「カグツチ!!」


 村長達は戦闘態勢に入り、オーガを囲んでそれぞれの攻撃を放つ。


「がぁぁぁぁっ!!」


 オーガは、雄叫びを上げその雄叫びは嵐となって私達鬼を吹き飛ばす。


「うぐっ…」


 私達は衝撃によって薄れそうになる意識を、何とか保ちながらオーガを睨む。


「どうして…オーガがこんなに強いの?」


 私は、何とか起き上がりながら、他の鬼達のスキルを無効化して、逆にオーガによって鬼達が倒される光景を見ながら、そんな言葉を漏らす。


「こんなの…誰も勝てない」


 誰かが呟いたそんな言葉に私達の戦意は無くなり、その場に膝から崩れ落ちる。



 そんな私達を見たオーガは、ゆっくりと私達の目の前に迫り、振り上げた右腕が私達に向けて振り下ろされる光景を見ながら、私達は絶望する事しか出来なかった。


 そんな中、振り下ろされた腕は斬り落とされ、私達の前に黒髪の女の子のようにも見える男の子が現れた。


「大丈夫?」


 そんな言葉を呟きながら。

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