『ほし』柿

 家に帰ると、母がリビングから顔をだした。片手に『ほし』柿をもっている。

「おかえりぃ、〈あめ〉すごかったでしょ。大丈夫だった?」

「うん、大丈夫だったよ。それよりその『ほし』柿どうしたの?」

 母に言いながらリビングへ行く。母はなぜかニヤニヤとしている。

 そんな母を怪しみつつ、リビングを見た——。

 

「…本当にこれ、どうしたの?」

 

 リビングの机の上には『ほし』柿や『ほし』葡萄や『ほし』林檎をたくさん盛り付けた皿が置いてあった。

 

 昨日まで、いや今朝、学校に行く前まではなかったはずだ。

 母は私を見て、ふふ、とついに満面の笑みを浮かべて言う。

「お母さん——おばぁちゃんからね。今年は良いのができたからって、ちょっと分けてもらったのよ。あとついでに売れないやつももらってね。帰ってきたら一緒に食べようと思ってたのよ。早く食べましょ。」

 母はせっせとお皿を机に並べる。

 私は母に急かされるように、荷物をおいて手を洗い、リビングにもどった。

 

「姉さんは『ほし』柿でいい?」

 

 妹がそう言って私のお皿に『ほし』柿をうつす。

「ちょっと。苦手だからって私のとこ置かないでよ。」

「いいでしょ。姉さん『ほし』柿、好きじゃん。」

「そうだけどさぁ。」

 妹と言い合いながら席につく。

 

「こら喧嘩しないの。せっかくの『ほし』果物なんだから。」

 

 母が、ついでに、とケーキを用意しながら言った。

 

「『星』果物はなかなか良い形の『星』型は滅多に成らないし、良い『星』型になった『星』果物は他の『星』果物より美味しいから、すごく高級なの。それでも少しわけてくれたおばぁちゃんたちに感謝しなさいね。」

 

「「はーい。」」

 母の言葉に二人で返事をしてから手を合わせる。

 

(おばぁちゃんたちありがとう、これからも元気でいますように。それから、受験合格しますように。あと——)

 

 『星』果物は食べる前に願いごとをすると願いが叶うと言われている。

 私は『星』果物一個につきひとつのお願いごとを心のなかで祈った。

「姉さん長ぁい。強欲じゃん。」

「いいでしょ別にぃ。」

 お互いを少し睨みつつ、改めて『星』果物をみて妹と二人で言う。

 

「「いただきます!」」

 

 祈りがどうか届きますように。


 またまた妹と言い合いながら『星』柿を食べた。

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不思議な短編 ひらはる @zzharu7

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