不思議な短編

ひらはる

『あめ』の日

「あめ、降ってるねー。」

 友だちと二人、そろって下駄箱から外をながめる。

 今日は大あめのようだ。傘で耐えきれるだろうか。

「…あめって苦手。たくさん降ると痛いし、傘も折れかけるし。」

「えー、私は好きだけどなぁ。香りとかめっちゃええやん?」

 友だちが傘をさし、先に一歩外に出る。

(そんなものかな。)

 友だちの言葉に唸りつつ私も傘をさし外に出る。

「あとはさ、」

 そう言って友だちが傘から滑り落ちてくるあめを掴み、口に放り込む。

「こーやってタダで『あめ』舐めながら帰られるって、けっこう幸せじゃない?」

 友だちは更に『飴(あめ)』を掴んで口に放り込む。それから私の方を振り向いた。

「ほへはいお?」

 飴を口に入れすぎて何を言っているか聞き取れない。

 私は呆れつつ飴を一つ掴み、口に放り込んだ。

「おいひい?」

 友だちが首を傾げながら聞いてくる。

 私は友だちを見て少し笑った。

「うん。…そうだね。」

 コロコロと舌の上で『飴』を転がしながらそっと呟いた。

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不思議な短編 ひらはる @zzharu7

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