第33話 終わらない悪夢

「さてと、ブゥドォーも消滅したし…… もう、おしまいかしら」

3人が過去の秋葉に到着してから、そろそろ5時間に達しようとしている。

黄色い公園には相変わらず気絶しているホウクウド(推定)さんと升田剣。


「でも、升田剣とか得素得裸衣とか結局、何だったのかしら?……」

「肝心の黄金の玉が消滅した今、永遠の謎でごわすな」

チャーナちゃん、升田剣の切っ先でホウクウド(推定)さんの股間を狙って、

「今、ブッ刺してみますね」


すると突然! 

3人を強襲するミサイルの雨あられ。 

”ドドドドドドドドドドドド……”

不意を付かれて全弾命中!  

「きゃぁああーー!」  

「ぐぬぬ!」  

「ハラホロヒレ」


ボロボロになりながらミサイルの発射先を見ると……

地面が盛り上がり、その中から現れる幼児体形……

「いやだなぁ…… 僕、まだここにいるよ(ハート)」


流石に本気で驚く3人。 

「何でここにいるの?…… モザイクに食われちゃったんじゃないの?」

ちょっと恥ずかしそうにはにかみながらブゥドォーが呟く。

「うん、あのね…… 

実はお姉ちゃんが魔装化した時、怖くて怖くてここに逃げてきたの……

もう少しでチビリそうだったんだから」


終わらない悪夢。

失望のずんどこに落とされた3人を見ながら満面の笑みを湛えてブゥドォーが呟く。

「でもね、ほんとはね。僕、お姉ちゃんと喧嘩するのいやなんだ……

だって、お姉ちゃん、強すぐるから」


チャーナちゃん、鋭く反応。 

「おぅ、坊主。 今、何と…… 言った?」

「うん。お姉ちゃん強すぐるから、敵わないよ。…… 秋葉最強だね」

満面の笑みを湛えてチャーナちゃんが呟く。

「お坊ちゃん、善いこと言うねぇ。

飲みねぇ、飲みねぇ、おでん缶を食いねぇ、江戸っ子だってねぇ」

「外神田の生まれだけどね」


おでん缶を勧めるチャーナちゃん。もはやドヤ顔。

「するってぇっと何かい? そのチャーナってのはそんなに強いって訳かい?」

おでん缶をつまみながら、 

「強いなんてもんじゃないよ…… 地球最強だよ」

「うれしいねぇ。

さ、さ、飲みねぇ、飲みねぇ、おでん缶を食いねぇ、江戸っ子だってねぇ」

「外神田の生まれだけどね」


意気投合したチャーナちゃんとブゥドォーはおでん缶を前に置き、一緒に声をあわせて、萌えドギューンコールの練習を始めた。 

「美味しくなーれ! 萌え萌えドギューン(ハート)」

あきれるレノちゃんとジロゥ。

「あの馬鹿ふたり…… 一体、何してんの?」  

「すっかり仲良しでごわすな」


それはさておき。

もうそろそろ2010年に還る時間。

急に元気が無くなるブゥドォー。 「お姉ちゃんたち…… もう、還っちゃうの?」

名残惜しいチャーナちゃん。 「あぁ、出会いあれば別れありっていう奴さ」

涙目のブゥドォー。 

「お姉ちゃん、僕…… 欲しいものがあるんだケド……」

「何だい? 何でも、言ってみな」


「僕………… お姉ちゃんの ”記憶” が欲しい!!」


"ズバ~ン!ズリュリュリュリュリュリュリュ~……”


すると突然!

レノちゃん、ジロゥ、チャーナちゃんの足元の地面から無数のUSBケーブルが

飛び出すと、3人をがんじがらめに捕縛した。

「ブゥドォー!…… これは、何のつもり?」

小悪魔スマイルのブゥドォー。 

「今、言ったとおり…… お姉ちゃんの ”記憶” を貰っちゃうよ」


チャーナちゃんの全身いたるところをUSBケーブルが這い回る。

"ズリュリュリュリュリュリュリュ~” 

「ちょ、ちょっと…… そこは…… イヤ~ん……」

「お姉ちゃん、見たところロボットだからどこかにUSB端子があるはずだケド……

あっ、ここだ! 見つけた」

”ズボッ!”  

「はぅ!…… ふんが~ぁああ!!」


チャーナちゃんのUSB端子は二つある鼻の穴だった。

ブゥドォーの灰色の目玉がクルクルと回転する。

「ゲフゲフ…… じゃぁ、お姉ちゃんの……な・か・み……を見ちゃうからね♪」

全身をくねらせて悶え苦しむチャーナちゃん……

「ちょ…… いや…… や・め・て…… ふんが~ぁああ!!」


下卑た笑みを湛えたブゥドォーが執拗にチャーナちゃんの中身を調査する。

「ゲフゲフ…… どれ、どれ…… ふぅ~ん…… なるほど、こうなってるのね」

USBケーブルを通して中身を触診され、羞恥の涙を流すチャーナちゃん。

身動きできないレノちゃんとジロゥはその妖しい光景をジッと見つめる。


「お姉ちゃんの…… システムCoreは…… あ、VAI…… あれ?」

「やめてぇー!…… そこを見られたら、あたし…… 生きていけない!」

絶叫するチャーナちゃん。

しかし、幼い好奇心は小動物を解剖するかの如く秘密のベールを無惨にも

一枚一枚剥ぎ取っていく。

今!…… チャーナちゃん最大の秘密が白日のもとに晒されようとしている。


「ん?…… お姉ちゃん…… VAIBOじゃ……無いじゃん!」

ギクッ……

「えっ、なにっ?」

「これです…… 中華製VAYBO 」

「……パチモンじゃん!」

「チャイナドレスのチャーナちゃんじゃ無かったんでごわすか?」

”ブボボ モワッ ウワァァァァァァン”  

最大の秘密を暴露されたチャーナちゃんは、大泣きに泣いた。

ナクナヨ  ヨシヨシ


それはともかく。

ブゥドォーの好奇心はそれだけでは収まらない。更に核心に触れる。

「えーと、MyDocumentsの下は……

”ホウクウドさんの痴態”

”サブロゥのモデル”

”兄貴怒涛の半生”

”ハ○ドリ25歳OL”

”ドラム缶煮込みレシピ”

うーん…… あまり、面白くなさそうだなぁ…… あれ、これは?… 

”レノちゃん乙女の秘密”」


レノちゃん 「ギクッ……」


チャーナちゃん、すかさず

「それはお勧めです。 

例えば、レノちゃんが

”ウサギなのにニンジンが食べられない”

”オパーイが小っこいので毎朝、牛乳1ℓ 飲んでる”

”最近、兄貴の影響でBLに興味がある”

”艶々ボディを維持する為に生卵で磨いている”

”年齢詐称して冥土喫茶で働いている”

っていうような内容です」


レノちゃん激怒 

「チャーナちゃん! 自分の秘密がバラされたからって……!!!」


それもともかく。ブゥドォーの触手は一番重要なものに触れた。

「あれ?…… 物凄く大きなサイズのファイルがあるね…… 

”谷間さん 愛の記憶” ……」

「そ…… それは」

それはチャーナちゃんが命よりも大事にしている谷間さんとの思い出を集めたファイルである。顔を赤らめ絶叫するチャーナちゃん。 

「それだけは!絶~対に渡せない!!!(キリッ)」

核心を得てほくそ笑むブゥドォー。

「ゲフゲフ…… どうやら、これがお姉ちゃんの強さの秘密みたいだね。頂戴!」


すると突然!USBケーブルを通して、強力なカット&ペーストが発動!

”谷間さん 愛の記憶” が…… 切り取られて逝く。


キャンセル発動! 全力でこれを阻止するチャーナちゃん! 

「さ、させるかぁーー!!」

チャーナちゃんの両目が猛スピードで回転する。

力と力の駆け引き。ふたりのシステムCOREのPCパワーが全開。

「チャーナちゃん! がんばって……」 

「USBケーブルを通したファイルの綱引きでごわすな……」


しかし駄々をこねた幼子が餓鬼と呼ばれるように、その欲求の強さは半端では無い。

さしずめ、今のチャーナちゃんはスーパーでお菓子を抱え込んで座り込む幼子を

宥めすかせる若いママさんの如く。

「ほらブゥドォー。 

替わりに ”レノちゃん乙女の秘密” をあげるから、これは放しなさいって」


レノちゃん大激怒


するとブゥドォー、思いっきり首を横に振って、

「ヤダヤダヤダ~イ…… 僕、これがいいの。 思い出を増やして強くなるんだー」


”思い出を増やして強くなる” ……って、何?

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